給与カット、罰金・・・「遅刻した従業員」へのペナルティは許されるのか?
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こんにちは、特定社会保険労務士の小高 東です。
間もなく6月。4月から入社した新入社員の方も約2ヶ月が過ぎ、会社の雰囲気や流れにだんだんと慣れてきた頃かと思います。
しかし、そんな「慣れ」からくる気の緩みに気をつけたい時期でもあります。特に「遅刻」が嵩むと、ダレた空気感が社内に蔓延してしまいますので、組織の規律を保つ上で注意したいポイントのひとつです。
そこで今回は、「遅刻とペナルティ」を法的な観点から解説していきます。
就業規則に規定があれば「遅刻による罰金」は可能
就業規則に「懲戒処分」として、遅刻した場合に罰金を科す根拠となる規定がなければ、ペナルティとして罰金を科すことはできません。
逆に言えば、就業規則に根拠となる規定があれば、遅刻したことに対して、懲戒処分として罰金を科すことは可能です。
また、罰金も実質は制裁としての減給であり、労働基準法91条により、1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が一賃金支払額の10分の1までという上限額の制限を受けます。
労働基準法91条の限度額を超えた罰金は違法となります。
ノーワーク・ノーペイの原則により「遅刻した時間分の給与カット」は可能
それでは、どのような対処が現実的なのでしょうか?
例えば、「遅刻した時間分の給与をカット」するというケース。
この場合「遅刻した時間=労働の提供のなかった時間」であり、月給制の正社員に対して遅刻した時間分の賃金を控除することや、アルバイト・パートタイマーに対して、「遅刻した時間分の賃金」を支払わないことは、「ノーワーク・ノーペイの原則」により当然として可能であり、減給の制裁には当たりません。
給与カットを超える減給制裁には「就業規則」において明確な規定が必要
一方、遅刻した時間分の給与カットを超える罰金は「減給制裁」となりますので、労使トラブルを未然に防止するためにも、就業規則において以下2つのことを明確に規定する必要があります。
(1)遅刻による罰金は「懲戒処分としての減給制裁」であること
(2)労働基準法91条により「罰金額にも上限がある」こと
もちろん「減給制裁」以前に、遅刻が減るための仕組みづくりや、何が遅刻の原因となっているのかの従業員へのヒアリングなどが重要になってくることは言うまでもありませんね。