人事労務担当者が知るべき「マイナポータル」の基礎知識と動向
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こんにちは、特定社会保険労務士の山本 純次です。
行政手続のワンストップ化の潮流のなかで、マイナポータルにまつわるニュースを耳にする機会が増えてきました。
一方で、マイナポータルが何であり、どのような影響をもたらすのか、また、今後の人事労務担当者にどこまで影響があるのか、今のうちに知っておきたいマイナポータルの概要を説明していきます。
マイナポータルの概要
マイナポータルは、マイナンバー(社会保障・税番号制度)導入に伴い、政府が運営するオンラインサービスです。
子育てや介護をはじめとする行政手続がワンストップでできたり、行政機関からのお知らせを確認できたりします。
また、今後そもそもの制度の主体である社会保険、税関係のサービスの一体化が推進される中で、オンライン上でワンストップで申請できるサービスが提供される予定です。
マイナポータルの動向
マイナポータルは2017年1月にサービスが開始され、徐々に提供できるサービスが広がってきています。
マイナポータルでは公的な個人情報を扱うため、電子認証を付与されたマイナンバーカードが必須になります。現状、PCでログインする際には、ICカード等の読み取り機やスマホアプリなどでマイナンバーカードを読み取る必要があります。
このマイナンバーカードの交付枚数は、2019年11月1日時点で約1,823万枚(※)。
人口に対する交付枚数率は約14.3%にとどまっていますが、今後マイナンバーに商品券やポイントを付与するなどの施策により、取得を促進しており、それに伴うマイナポータルのサービス提供は広がっていくでしょう。
(※)マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和元年11月1日現在) – 総務省
マイナポータルで今できる主なこと
現状、以下のことが主にサービスとして提供されています。今後もサービスは追加されていく予定です。
・自己情報表示(あなたの情報)
行政機関等が保有する本人の個人情報を確認できます。
・お知らせ
行政機関等から配信されるお知らせを受信できます。利用する自治体を登録しておくと便利です。
・サービス検索・電子申請機能(ぴったりサービス)
行政サービスで利用できるサービスを検索できます。オンライン申請できる手続きも徐々に増えています。
・民間送達サービスとの連携
行政機関や民間企業等からのお知らせなどを民間の送達サービスを活用して受け取ることができます。
よく利用されている手続き
上記の中でよく利用されている具体的な手続きは以下になっています。
1位 児童手当等の現況届(児童手当)
2位 スポーツのイベント・講座への参加申込(スポーツのイベント・講座)
3位 健康診断・検診の受診申込(健康診断・検診)
マイナポータルで将来的にできること
マイナポータルのサービスは今後大きく広がっていく予定です。
そのうえで、人事労務担当者として大きく影響してきそうなのが、「マイナンバーカードによる健康保険証の利用」や「各種情報の連携」だと考えられます。また、2019年12月に新たな報道として、年末調整申告書の作成、生命保険料控除などの証明書の受け取りをマイナポータル上で行えるようになるという情報も出ています。
以下、今後広がるサービスの概要を記載します。
(1)マイナンバーカードによる健康保険証の利用
2021年(令和3年)3月までの開始を予定し、顔写真入りの身分証明書であるマイナンバーカードを健康保険証として利用することにより、診療時における確実な本人確認と保険資格確認が可能になります。
また、マイナンバーカードの公的個人認証機能により、オンラインで保険資格を確認できることで、転職などにより加入する保険者が変わっても、医療機関・薬局で受診できるようになります。
今後の入社者の手続きをマイナポータルで実施していくという方向性も考えられます。
(2)医療情報のマイナポータルへの連携
2021年3月より、マイナポータルにおいて特定健診の情報の閲覧を開始し、同年10月からは、薬剤情報、医療費情報の閲覧を開始する予定です。
本人の同意の下、マイナンバーカードの活用により、服薬履歴や特定健診情報を医療機関等で閲覧可能とし、診療質の向上につながるかたちとなります。
健康診断の情報など、企業が確認が必要な情報も簡単に取得できるようになってくる可能性もあります。
(3)年末調整申告書の作成、提出、情報収集の連携
年末調整では生命保険料控除などの証明書が「紙」で必要になりますが、これがマイナポータルを使ってWeb上で受け取れ、更にその申告をWeb上で作成のうえ会社に提出することができるようになるようです。
医療費控除などで確定申告される際も、マイナポータル上で情報を収集のうえ、電子申請ができるようになる方向性で、ますます便利になってきます。
マイナポータルの今後
ニュースにも出ていますが、マイナポータルの現状の利用について、サービスが始まった17年7月~19年5月の利用は11万件余にとどまり、政府の利用予定想定の0.02%だったという結果も報告されています。
その中で、政府は「デジタルファースト法案」にもみられるように、行政サービスのオンライン化を義務化していく方針です。
現状、窓口や紙での申請がまだまだ主流の中、各申請がWeb化されてくるとマイナポータルが行政手続きにおけるメインポータルになってくる可能性が高いと考えられます。
今後も新しいサービスがどこまでできるようになるか、注意深く確認していく必要があるでしょう。