違法長時間労働で運送会社が事業許可取消に――。「トラック運転者の長時間労働対策」を弁護士が解説!
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こんにちは、弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。
度重なる違法な長時間労働で、千葉県野田市の運送会社が事業許可を取り消されたというニュースがありました(*1)。
運送会社の場合、その業務の性質上、トラックドライバーに長時間労働による過度な負担がかかりやすいため、特に注意が必要となります。
そこで今回は、厚生労働省の告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」のうち、トラック運転者の労働時間について、この告示の示す基準のポイントをご紹介します。
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」とは?
自動車運転者を雇用する会社にとって、労働者の長時間労働の犠牲を前提として売上、利益をあげている、という会社も、残念ながら少なくありません。
しかし、自動車を運転する業務の場合、深夜労働が多かったり、荷待ち時間が多く現場を離れることができなかったりと、拘束時間が長くなりがちです。
そのため、雇用される自動車運転者を、長時間労働の危険から守ろうと作られたのが、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」という告示です。
トラック運転者の「労働時間等の改善基準」
「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」は、その業種、運転する車両の種類ごとに、「トラック運転者」、「バス運転者」、「タクシー運転者」に対するものが定められています。
今回は、冒頭で触れたニュースにあわせ、「トラック運転者」を対象とした労働時間等の改善基準について、わかりやすく解説します。
改善基準告示の「拘束時間」とは?
改善基準告示にいう「拘束時間」とは、始業時刻から終業時刻までの時間で、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計時間をいうものとされています。
この「拘束時間」の中には、運転・整備・荷受け・荷下ろしなどの実作業を行う時間以外に、「荷待ち時間」も含まれます。
トラック運転者の労働時間等の改善基準では、1ヶ月の拘束時間は原則293時間を限度としています。
なお、労使協定を定めた場合に、1年のうち6ヶ月までは、1年間の拘束時間が3,516時間を超えない範囲において、1ヶ月の拘束時間を320時間まで延長できるものとされています。
また、1日の拘束時間については13時間以内を原則とし、延長する場合も16時間を限度とすることとされています。
改善基準告示の「休息時間」とは?
改善基準告示にいう「休息時間」とは、勤務と次の勤務の間の時間で、睡眠時間を含む労働者の生活時間として、労働者にとって全く自由な時間をいうものとされています。
トラック運転者の労働時間等の改善基準の目的は、拘束時間を減らし、労働者の休息時間を確保することです。
1日の休息時間は、継続8時間以上必要とされています。「継続8時間以上」とは、細切れに休息時間を与えるのではなく、まとまった休みが必要だということです。
その他のポイント
トラック運転者の労働時間等の改善基準では、以上の拘束時間、休憩時間についての基準に加えて、1週間における1日の拘束時間延長の回数について、15時間を超える回数は1週間につき2回を限度とすることを定めています。
また、運転時間の限度について、次のように定めています。
- 1日の運転時間は2日平均で9時間が限度
- 1週間の運転時間は2週間ごとの平均で44時間が限度
- 連続運転時間は4時間が限度
これは、遠距離への運転など、連続する運転時間が長くなればなるほど、深夜の運転などをともなう、非常にストレスの高い業務であると考えられるからです。
おわりに
今回は、労働者の中でも、特に労働時間が長くなりがちなトラック運転者について、厚生労働省の発表している「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」の特に重要なポイントを解説しました。
運送会社などにおいて、この基準を順守するための労働時間の計算方法はとても複雑です。また、基準を順守する前提として、会社が正しく労働時間を把握しなければなりません。
長時間労働対策、残業対策などにご不安な会社の方は、ぜひ一度、企業の労働問題に詳しい弁護士に、法律相談ください。
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