ほとんどの場合「接待」は残業時間にならない・・・なぜ?
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深夜、寿司の折り詰めを持った父親が酔っ払って帰ってきて、
父「うぃ〜、ただいまぁっと」
母「まあ、あなた! こんなに酔っ払って!」
父「お仕事ですよ、お仕事。得意先の接待ですよぉ〜っと」
といったやりとりが昭和時代の家庭にはよくありました。子供心に、「なるほど、接待なるものは仕事で美味しいご飯を食べたり、お酒が飲める素敵なモノらしい!」と思ったものです。
ところが自分自身、大人になり就職し、実際に得意先の接待をするようになるとどうでしょう。確かに仕事で美味しいご飯を食べたり、お酒を飲めることには間違いないのですが、常に気を遣い、顔には笑顔が張り付き、とてもじゃないですが、食事やお酒を楽しむといったもんじゃありません。なぜ父親はあんなにも楽しそうに帰ってきていたのか……。
とりわけ、昭和の時代と違い昨今では、仕事とプライベートをきちんと切り分けたいと考える人が多いですので、「接待とは仕事の一環に他ならない」という感覚の人も多いのではないでしょうか。
今回は「接待時間は残業扱いとなるのかどうか」を考えたいと思います。
接待は労働時間に含まれず残業に当たらない
まず、一般的に「接待」は労働時間に含まれず、残業にもあたりません。
労働時間と認められるのは、「事業運営上緊急なものと認められ、かつ事業主の積極的特命がある」場合です。
つまり、費用が会社持ちで、接待の際、仕事の話をすることがあるからといって、それだけでは労働時間とはならないのです。
接待が「労働時間」に当たるケースとは?
一方、接待への参加が労働時間であると認められるケースもあります。
例えば、社命で宴会の準備や進行、接待に関する雑務を命じられていた場合や、出席者の送迎などを命ぜられていた場合は、労働時間と見なされ、残業代の請求が可能です。
また、上記のようなケース以外でも、接待への参加が強制であり、上司からの特別な命令があり、業務上重要な打ち合わせを接待の席で行う、といった場合は労働時間とみなされる場合もあります。
ケースバイケースであるからこそ、管理職の方もマネジメントするうえで、正しい労務知識を身につけておきたいところです。
管理職の方がしっておきたい労務知識を以下の資料にまとめてありますので、ぜひご覧ください。
過度な接待は社員の心身を蝕み、中には過労死に繋がったケースも
しかしながら実際は、「接待」を労働時間と認めさせるのは、なかなかハードルが高いといっていいでしょう。
とはいえ、やはり連日深夜までの接待が続くと社員の体調も心配ですし、限度があります。
例えば、ある男性(当時56)が接待中にくも膜下出血で死亡し、妻が労災認定を求めた訴訟で、地裁が過労死と認めた判決があります。
判決理由で裁判長は、会社での会議後に行われた取引先の接待について、男性は酒が飲めないのに週5回ほど出ていたことや、費用が会社負担だったことを指摘。「技術的な議論が交わされており、業務の延長だった」と「接待も業務」と認定されました。
このように、限度を超えた接待は社員の心身を蝕む危険性がありますし、残業代の支払い義務が生じる可能性もありますので、会社としても十分に注意を払う必要があります。
どうせ業務と認められないならいっそ気楽に楽しもう
結論としまして、常識的な範囲の「接待」は、労働時間とみなされない場合がほとんどです。
しかし、どうせ業務と認められないなら、いっそのこと、もう少し気を楽にして、相手との会話や食事、お酒を楽しんでみてはいかがでしょう。
たとえそれが接待であっても、やはりお酒や食事は楽しくいただきたいですものね(なるほど、あの頃の父親は、ここまで達観して接待を楽しんでいたのか!?)。