「労基法を遵守したら倒産する」・・・そんな企業が真っ先に改善すべきこと
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こんにちは。特定社会保険労務士の山本 純次です。
昨今、働き方改革が叫ばれ、「ブラック企業大賞」なるものができたり「ブラック企業リスト」なるものがバズったりと、企業の労働法に関するコンプライアンス体制の構築が、非常に強く求められる時代となってきています。
そんな中、会社の経営者の方から、「労基法を守っていたら倒産してしまう」ということを聞くことがあります。
経営者としては、従業員が文句なくたくさん働いて成果を出し、利益がたくさん出ることが望ましいことではあるかもしれませんが、法律を遵守することは当然重要なことです。
過去にブラックだったことと向き合い改善に努める
そもそも、労基法を遵守したら会社が倒産するというようなビジネスは、従業員を犠牲にしてやっと成り立っているケースが多いため、そもそも公共社会におけるビジネスモデルではないと言えます。
ただし、労基法のために直ちに会社が傾くというのは、雇用を守るという観点でいえば、ブラックな環境を肯定するわけではなくとも、意図せぬ結果を招きかねません。
また、昨今ではブラック企業ならぬ、ブラック社員も増えてきていることなどもあり、企業として存続していくための対策は、どの企業も一様ではなく課題に応じて変わってくるということに留意すべきです。
それらを考えると、過去にブラックな環境だったことと真摯に向き合い、自社の課題の分析のもと最適な方法で今後の改善に努めるということが求められるでしょう。雇用の観点からも、社会にとって必要なことと言えるかもしれません。
次に、その中でまず何をしていくべきなのか、ということを考えていきます。
多くの会社が抱える「残業代」という問題点
まず、多くの会社が抱える問題点の大きなものとして、残業代に関する問題があります。
業務の見直しをしないまま、単に残業を減らせという指示を出すことは、ほとんどがサービス残業発生の要因となります。
では、どうしたら良いでしょうか?
例えば、先日とあるホテル会社社長のインタビュー記事で働き方を根本的に変えたというものが拡散されていました。
今までは業務ごとに担当を分けていたのを、受付や清掃、事務作業など業務を区別せずに、全ての従業員が全ての業務を兼ね、完全交代制でシフトを組むことにより、残業時間が大きく減ったというものでした。
業務課題を洗い出し「無駄なリソース」がないか分析を
先述の話は一例でありますが、要はどの会社でも大前提として行うべきは、今の業務の内容や量、担当者が抱える業務の範囲を洗い出し、無駄な時間を使っている人や場所が無いかを分析することです。そのうえで、ビジネスモデルに沿った働き方を構築していくことが重要です。
例えば、自社の業務において、毎日朝9時に全員が揃う必要が本当にあるでしょうか?
そういった常識なところから考えていき、業務が午後に集中する人が多い場合には、フレックスタイム制度や変形労働時間制度を設けたうえで、いかに1日の仕事を効率的に終わらせることができる仕組みにしていくか、などを考えていくべきです。
「休日出勤」や「有給消化」で工夫できることもある
また、法的に対応できる範囲で、例えばイベントなどで休日出勤が発生する会社では、休日出勤後代休をとらせるよりも、出勤前に休暇を振り替えて指定すれば休日出勤手当を支給する必要がありません。
また、年次有給休暇を一斉休暇として夏休みにとってもらい、有給消化を促進したりもできます。
労基法の中にも、しっかりと仕組みを盛り込めば、様々なコスト削減になる手法もあるのです。
また、上記のような効率化や残業削減に取り組んだ従業員に、賞与などの評価に反映することで、推進のサイクルをつくるのも一案です。
「長く働くこと」より「出した成果」で評価する
日本では仕事が無くても、他の人が忙しくしていると帰りづらく、なんとなく遅くまで残るという人が多かったり、残業代を稼ぎたいがために遅くまで働く「隠れブラック社員」もいると言われていますが、早く帰ることに対するインセンティブを設けられれば、そういった雰囲気も取り払える可能性があります。
長く働くことが重要ではなく、出した成果で評価する。
難しいことではありますが、そこをどこまで経営者が見られるかということがポイントとなってきます。
上記のような対応は、普段の運用や考えなどを浸透させるなど、一朝一夕に解決できる問題ばかりではないと思いますが、従業員の労働時間の管理方法を会社ごとの特性に応じて、しっかり分析し対応していく必要があるでしょう。
会社だけでなく、働く側もより効率的に仕事をしていく心構えを持って、無駄な業務時間を無くし会社の発展とより良いワークライフバランスが築けることが理想かと思います。