労務担当者が知るべき「高度プロフェッショナル制度」実務上の注意点
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こんにちは。特定社会保険労務士の小高 東です。
すでに各種メディアでも話題になったとおり、働き方改革関連法の一環として「高度プロフェッショナル制度」(以下「高プロ」)が生まれます。
今回は、各企業における「高プロ」導入検討にあたっての、実務上の注意点を解説します。
「高プロ」の概要
「高プロ」は、時間ではなく成果で評価される働き方を希望する労働者のニーズに応え、その意欲や能力を十分に発揮できるようにするための制度です。
一定の年収要件(1,075万円)を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者を対象としています。
長時間労働を防止するための措置を講じつつ、時間外・休日労働協定(36協定)の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の適用を除外した、新たな労働時間制度の選択肢として設けた特定高度専門業務・成果型労働制が、「高プロ」です。
「高プロ」の対象5業務
「高度の専門的知識等」を要し、「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」といった対象業務とするに適切な性質をみたすものとし、以下の5業務が省令で規定されています。
- 金融商品の開発業務(新たな金融商品の開発)
- 金融商品のディーリング業務(ファンドマネージャー、トレーダー、ディーラー)
- アナリストの業務(企業・市場等の高度な分析業務)
- コンサルタントの業務(事業・業務の再編、人事等経営戦略に直結する高度なアドバイス)
- 研究開発業務(新たな技術開発等)
対象5業務に該当したとしても、その中で高度な専門知識を用いた業務のみが対象となり、単純作業や補助作業は対象外となっていますので、留意が必要です。
「高プロ」で労務担当者が実務上注意すべき4つのポイント
労務担当者は、高プロ導入に際し、以下のポイントに注意する必要があります。
【1】労使委員会での決議と労基署への届出
制度導入に際し、労使委員会で、
- 対象業務
- 対象労働者
- 健康管理時間(事業場内・外の労働時間の合計)の把握措置
- 健康確保措置
などを5分の4以上の多数で決議し、労基署に届け出る必要があります。
【2】書面での本人同意
書面による、本人の同意が必要です。(同意撤回も可能)
【3】健康確保措置
健康確保措置として、次の(1)~(3)の全てが義務づけられています。
(1)1年間を通じ104日以上、かつ、4週間を通じ4日以上の休日確保
(2)次のいずれかの措置を義務化
- インターバル規制(終業時刻~始業時刻間に11時間以上の休憩時間の確保)+深夜労働(22時~翌5時)の回数制限(1ヶ月4回まで)
- 健康管理時間の上限措置(1ヶ月で100時間または3ヶ月で240時間)
- 2週間連続(本人希望の場合は1週間連続×2回)の休暇(1年)
- 臨時の健康診断(月80時間以上の時間外労働または本人の申出)
(3)健康管理時間の状況に応じ特別休暇、医師による面接指導等を行うこと
【4】労基署への実施状況報告
6ヶ月以内ごとに、健康確保措置等の実施状況を労基署に報告する必要があります。
おわりに
このように高プロの導入は、現段階ではかなり複雑であり、企業にとってハードルが高いといえます。
また、労基署への定期的な報告も義務付けられており、高プロ要件を充たしていないようであれば、是正勧告や通常の労働者として残業代の支払いを命じられる可能性もあります。
高プロを導入する際には、今回紹介した実務上の注意点を踏まえ、慎重に進めていく必要があります。