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社労士が解説!HRニュース2021年9月振り返りと10月のポイント(最低賃金のチェック、社会保険料の定時決定結果の反映など)

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目次

いつの間にか秋も深まってきました。すっかり日も短くなりましたね。

10月からは年末に向けて人事・労務担当者も徐々に繁忙期モードに入っていくと思いますので、本ニュースレターが、少しでも業務を効率的に進めるための参考になれば幸いです。

2021年9月のトピックの振り返り

(1)最低賃金のチェック

今年は、全都道府県で最低賃金が28円~30円と大幅な引き上げとなりました。

10月1日(一部の都道府県は10月2日~8日)から、いよいよ新最低賃金が適用開始となりますので、新最低賃金に対する抵触者のチェックや、抵触者に対する昇給の実施が漏れなく行われているか、今一度確認をしてください。

なお、最低賃金は時給ベースで定められておりますが、月給者に対しても適用となりますので、月給者に関しても、月給を月平均所定労働時間で割って、最低賃金を下回っていなかチェックしてください。

また、最低賃金に抵触しないよう昇給を行った従業員については、給与計算ソフトのマスターの設定変更も忘れないようにしたいものです。

そして、時給であれ月給であれ、昇給を行った場合には、昇給後3ヶ月で標準報酬に2等級以上の変動があれば社会保険の随時改定に該当します。通常、最低賃金対応の昇給だけで2等級以上の変動にはならないと思いますが、他の手当の昇給が重なったり、残業代が増えたりした場合には随時改定に該当する可能性がありますので、念のため、3ヶ月後に随時改定に該当していないかの確認をしていただければと思います。

(2)雇用調整助成金の特例措置の延長

当初は9月末で終了するとされていた雇用調整助成金のコロナ特例措置ですが、噂をされていたとおり、12月末まで延長されることが正式に決定されました。

アルバイト等の雇用保険非加入者版の雇用調整助成金である「緊急雇用安定助成金」や、会社から休業手当の支払いを受けられなかった労働者が個人申請する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」についても、同様の12月末まで延長となります。

(3)小学校等休業対応助成金の復活

「新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金(以下「小学校休業等対応助成金」という)が再開されることが9月7日に厚生労働省から発表されました。

この小学校等休業対応等助成金ですが、令和2年度実施時は、新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等により仕事を休まざるをえなくなった従業員に対し、年次有給休暇とは別枠で、特別有給休暇を付与した場合、当該特別有給休暇に対して支払った賃金を、15,000円を上限として国から事業主に支給するという内容の助成金でした。

小学校等休業対応等助成は、令和3年3月31日までの特別有給休暇取得分(令和3年6月30日までの受理分)で受付終了となり、令和3年4月1日からは、形を変えて「両立支援助成金 育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例)」として運営されていましたが、申請書類や申請条件の複雑化、助成額の縮小等により、申請のハードルが大幅に上がっていました。

このような中、令和3年8月1日から令和3年12月31日までに取得した特別有給休暇に対しては、小学校等休業対応等助成金が復活することになりましたので、事業主としても、子どもをもつ従業員に対して、特別有給休暇を付与しやすい環境が復活したのではないかと思います。

(4)過労死ラインの改定

厚生労働省は、9月14日付で脳・心臓疾患の労災認定基準(いわゆる「過労死ライン」)を改正しました。

労働者に脳・心臓疾患が発生した場合、発症前1ヶ月間の残業がおおむね100時間あった場合、または発症前2~6ヶ月間の残業の月平均がおおむね80時間を超えた場合等に、労災の可能性が高まるという過労死ラインの数字自体は、今回の改正で変更はありません。

今回の改正では、以下のように過労死等の労災の認定基準がより明確化されました。

  1. 長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化
  2. 長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し
  3. 短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化
  4. 対象疾病に「重篤な心不全」を追加

より具体的に言えば、過重労働による労災の認定にあたり、労働時間自体は過労死ライン以下であっても、「業務上で強い叱責を受けたなどの労働時間以外の負荷の有無」「勤務間インターバルが短いこと」「身体的負荷を伴う業務に従事していたこと」などを総合勘案して過労死等の労災認定を実施することが明確化されたということです。

今回の認定基準の改正を踏まえ、会社としても、ハードワーク気味の従業員に脳・心臓疾患が発生した場合には、単に「残業時間数が過労死ライン以下だから労災ではない」と決めつけるのではなく、業務内容等も踏まえ、労災に該当する可能性がないかをより積極的に確認していただきたいと思います。

2021年10月のトピック

(1)社会保険料の定時決定結果の反映

社会保険料の定時決定のため7月に算定基礎届を提出し、年金事務所からの決定通知書もすでに手元に届いていると思います。

定時決定による新年度の社会保険料は9月分から適用となりますが、社会保険料は1ヶ月遅れで給与から控除するのが法定のルールですので、10月支払分の給与から社会保険料が変更となります。

社会保険料の変更のタイミングに間違いがないようご注意ください。

なお、誤って9月分の社会保険料の控除額からすでに変更してしまったという場合であっても、10月分の社会保険料の控除額で過不足額を精算すれば、トータルでプラスマイナスは無くなりますし、年末調整にも間に合いますので、実務上の問題はないと考えていただいて大丈夫ですのでご安心ください。

また、昨今はダブルワークをするかたも増え、2社以上の会社で社会保険に加入しているケースも珍しくありません。このようなかたに関しては、通常の定時決定の通知書には名前が載らず、別途、二以上の加入者専用の書式で決定通知書が郵送されてきているはずですので、そちらの決定通知書にもとづいて社会保険料の控除計算を実施してください。

(2)年末調整

年末調整に関しては、事前準備が本格化するタイミングになりました。

10月になると、年末調整機能を提供する多くのHRテクノロジーベンダーで2021年版の年末調整機能がオープンになっていますので、昨年度からの変化点や、最新版の操作性などを確認しておくとよいでしょう。クラウド上で年末調整をスムーズに完結させるためには、やはり、まずは人事・労務担当者がソフトの操作に習熟していることが肝要です。

また、税理士や社会保険労務士等の専門家に年末調整をアウトソースしている会社は、アウトソース先とスケジュールや役割分担などの段取りを早めに整合しておくとよいでしょう。

そして、10月中旬ころからは、保険会社から保険料控除証明書が届き始めます。従業員には年末調整時に必要になること、および、会社に原本を提出する必要があることをアナウンスし、紛失等のないようにしたいものです(ただし、電子データで控除証明書を提出する場合は、原本の提出は不要)。

(3)全国労働衛生週間

10月1日から7日まで、厚生労働省は令和3年度「全国労働衛生週間」を実施します。

全国労働衛生週間は、労働者の健康管理や職場環境の改善など、労働衛生に関する国民の意識を高め、職場での自主的な活動を促して労働者の健康を確保することなどを目的に昭和25年から毎年実施されています。

各企業が、全国労働安全衛生週間において、なにか具体的に取り組まなければならない法的義務があるわけではありません。

しかし、コロナ禍が継続する中、テレワークが長期間におよび心身の不調を抱える従業員がいないかや、オフィス勤務の場合は感染対策が緩んでいないか等、この機に、各会社の状況に合わせ、職場環境のチェックをすることが望ましいのではないかと思います。

人事・労務ホットな小話

私事で大変恐縮ですが、10月に第2子が誕生予定です(長女もまだ1歳半なので年子です)。

私は社会保険労務士法人の役員という立場なので、労基法等が適用されるわけではないですが、実態として、テレワークや時差勤務などを活用しながら、仕事と家事・育児を両立させています。

私の事務所では、顧問先との情報共有や、自社の内部管理システムの大部分をクラウド化しており、やはり、このことが柔軟な働き方を可能にしていると、自分自身が大いに実感しました。

コストダウンや効率化だけでなく、従業員満足度の向上や、育児・介護等による離職の防止のためにも、社内の仕組みをクラウド化させていくことは不可欠です。

SmartHRなどのHRテクノロジーを含め、自社でクラウドソフトを導入するかどうか迷っている会社さまがもしありましたら、目に見える費用対効果だけなく、働き方の多様化による従業員満足度の向上や、優秀な人材の離職防止という観点にも、ぜひ思いを馳せてみてください。

まとめ

寒暖の差が激しく、体調を崩しやすい時期ですが、人事・労務担当者の皆さまも、ぜひとも体調に気を付けながら、年末調整をはじめ、年末年始の繁忙期に向けての準備を進めていっていただきたいと思います。

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