今後も増える外国籍雇用の展望とおさえておきたいリスク対応
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こんにちは、SmartHRのジャファーです。
企業の外国籍雇用が近年増加傾向にあります。一方で、外国籍雇用の方の管理が不十分であることに起因した不法就労摘発のニュースも多く見られ、企業は雇用主としての厳重な管理体制が問われています。
そこで、外国籍雇用の展望とリスクへの対応について、本記事で解説していきます。
今後外国籍人材は増える。減ることはない
冬の到来を知らせてくれる、日本国民に愛される牡蠣。日本一の牡蠣の生産量を誇る広島県の20代~30代漁師の2人に1人は外国籍なのを知っていますか?
牡蠣の生産だけではなく、広島県の漁業従事者全体の1/5、雇用者の約半分は外国籍人材の方が支えています。普段の生活ではなかなか気づきませんが、陰で支えてくれている外国籍労働者は既に我々の生活に欠かせない存在です。
(2018年時点での漁業従事者の全体数は15万人で、ピーク1988年の39万人から30年間で60%も減少しています。さらに水産庁の発表によると2028年には10万にまで落ち込み、50年後まで緩やかに減少しています)
外国籍人材が活躍しているのは先ほど例に挙げた漁業に限りません。日本国内全ての産業で外国籍は増加傾向にあります。下記の図のとおり、様々な業種で外国籍人材活躍しています。
また、下図のとおり2010年と2020年を比較すると外国籍人材が減少している産業はなく、医療福祉は6倍、建設業に至っては8倍もの外国籍人材が増えています。
このように、外国籍人材が増加する背景としては、既に始まっている労働人口不足が起因しています。労働人口不足は本当に深刻で、昨今では人手不足倒産が過去最多を記録し、パーソル総合研究所によると2030年には644万人の人手不足になると言われています。
このように、全ての産業で増え続けている外国籍人材に対して、雇用主である企業は受け入れ体制をきちんと整える必要があります。
外国籍人材の雇用主は、日本人を雇用する際に守るべき一般的な労働関係法令(労働基準法・雇用対策法・最低賃金法等)に加え、入管法(出入国管理及び難民認定法)も守ることが求められます。
外国籍雇用における難題
外国籍雇用の難しい問題は、特有の法制度の理解にあります。入管法は外国籍の方を雇用したことがない企業にとっては、初めて聞く法令で馴染みもないかもしれません。
しかし、この入管法は懲役刑・罰金刑があるほど厳しい法律です。最近は不法就労関連の摘発が相次いでいます。
- 在留期間超過した外国籍人材を働かせたケース
- 資格外活動許可書で許可されている労働時間を上回る労働をさせたケース及び外国人雇用状況届け未提出のケース
- 外国籍人材に在留資格外の活動をさせたケース
上記が「知ってて行ったこと」か「知らずに行ったこと」かは不明ですが、一つだけ言えるのは外国籍雇用に関して「知らなかった」という言い訳は一切通じないということです。
このようにニュースに取り上げられば、企業のコンプライアンス体制を疑われ、長年培ってきたブランドイメージに傷がつきます。さらに、出入国在留管理庁(入管)から外国籍雇用者の管理体制を疑われるようになります。そうなると、今後外国籍の方を雇用する際の審査が厳しくなったり、許可が出ても短い年数しか認められなくなったりする可能性もあります。
労働人口が減少し、人材の奪い合いで日本人の正社員を希望どおり採用することが難しい今日において、自社の管理不足によって外国籍人材の雇用のドアを狭めてしまうのは、非常にもったいないですね。
理解しておきたい「在留資格」について
在留資格とは「外国籍の人が日本に在留するために一般的に必要となる法的地位」です。
もう少し噛み砕いて説明すると「あなた(外国籍人材)は、この期間、このような活動をするためであれば、日本に在留してもいいですよ」という、役所(法務大臣)が与える「許認可」の一つです。
本来は、ビザと在留資格は異なる概念ですが、社会的には、これらを区別せずに、在留資格のことをビザという言葉で話すことがよくあります。
在留資格が許可された外国籍の人でなければ、原則として日本に滞在できません。在留資格の許可・不許可・取消しなどの行政行為は、出入国在留管理庁がその事務として取り扱っています。さらに在留資格はその活動内容によって29種類に大別されます。
在留資格の申請が難しい
例外を除いて、基本的に在留資格は本人申請が原則です。しかし、申請書類は日本語と英語の記載しかなく、外国籍の方からすると難解です。さらに、就労系の在留資格の場合は、就労予定の企業が手配する書類などもあります。
そのため、就労系の在留資格は、外国籍人材と企業との一種のコラボレーション作業であり、お互いに協力しなければなりません。
しかし、企業側が「在留資格の更新などは外国籍人材本人の問題」と認識していたり、手続きに関する知識がなく、それにより、申請書類に不備があり不許可になることも多いです。
不許可になると、本人のみならず企業側にも2つの大きなデメリットがあります。
- 不許可の申請を覆す為には労力がかかる
- 不許可になった情報が出入国在留管理局に記録される
まず、不許可理由は電話または出入国在留管理局に直接行かないと教えてもらえません。また、ここで対応を誤ると、企業への心証が悪くなるだけではなく、外国籍人材の管理体制が疑われ、今後の他の審査が厳しくなるおそれもあります。
2に関しては、不許可となった申請書類が出入国在留管理局に保管されるため、将来の申請などで過去の書類と見比べられ、矛盾点などの説明責任が発生します。これもまた企業の管理体制が疑われる原因になります。
企業がすべきことは、在留資格に関する手続きを自分ごととして理解し、外国籍の方に十分なサポートをすることです。そうすれば、問題なく手続きできるだけではなく、審査期間が短縮するなどのメリットなども受けられるようになり得ます。
まとめ
企業側が在留資格に関する正しい知識を身につけることで、外国籍人材・企業の双方にとって良い雇用関係が生まれます。人事労務の担当者の方は、ぜひ知識の習得を前向きに検討していただきたいなと考えています。
監修:志水晋介
行政書士 志水法務事務所代表。2015年行政書士登録。行政書士以外に、特定行政書士、宅地建物取引士などの資格を持つ。東京都行政書士会特定行政書士特別委員会委員、桐蔭横浜大学非常勤講師などを務める。著書に「うかる!行政書士総合テキスト(日本経済新聞出版社)」「勉強法の王道(日本経済新聞出版社)」など。