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人事労務の基礎知識 ~アルバイトの保険加入編~【飲食・小売業、人事カイカク #04】

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こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。

17年間の飲食業現場経験から、【飲食・小売業、人事カイカク】というテーマの中で、「飲食業・小売業」の人事労務を改革し、バックオフィスから経営を強めていくためのヒントを探り、提供する当連載。

働き方改革を進めるための土台をしっかりと築くために必要な「人事労務の基礎知識」を5回にわけてお送りしていきます。2回目となる今回は、入社時の保険加入、とりわけ飲食・小売業の「アルバイトの各種保険の加入」におけるよくある質問をQ&A形式解説します。

正社員など、常時雇用される、期間の定めない労働条件で働く場合、雇用した日から雇用保険、社会保険は加入となります。今回はパート・アルバイトなど判断が難しい従業員の方々の各種保険加入について取り上げています。

【Q.1】パート・アルバイトは保険加入させるべき?

Q. パート・アルバイトの従業員を保険加入させる必要がありますか? また、加入させるか否かの線引はありますか?

【A.1】パート・アルバイトの方でも、以下の要件に該当する場合は加入することになります。

■雇用保険

  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。
  • 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること

■社会保険

  • 日々雇入れられるもの、または臨時に短期間使用されるものは対象外。
    2ヶ月以内の期間を定めて雇用される人は、定めた期間を超えて引き続き雇用されることになった時から加入。
  • 一般的に週の所定労働時間が30時間以上であること

社会保険の加入の目安は、パート・アルバイトの方の労働時間および勤務日数が、自社の正社員(一般的な労働者)の週の所定労働時間の4分の3以上となる場合です。

これを「4分の3基準」といいます。

正社員の週所定労働時間が40時間の場合「30時間以上」となり、35時間の場合「おおむね26時間以上」となります。

【Q.2】社会保険の加入対象拡大は中小企業も該当する?

Q. 平成28年10月から「社会保険の加入対象」が拡大されたと聞きました。この対象の拡大は、中小企業も該当しますか?

【A.2】平成29年4月からは、従業員が500人以下の会社で働く方も、労使で合意すれば、短時間労働者も加入となります。

平成28年10月からは、厚生年金保険の被保険者が常時501人以上の会社について、「週20時間以上働く方」などにも対象が広がり、以下の1~4の要件を全て満たす短時間労働者の方が社会保険に加入できるようになりました。

■短時間労働者の4要件

  1. 週の所定労働時間が 20 時間以上であること(残業時間等は含めません。)
  2. 1ヶ月の所定内賃金が月額 88,000 円以上であること(賞与、残業代、通勤手当等は含めません。)
  3. 雇用期間が1年以上見込まれること
  4. 学生(夜間、通信、定時制の方は除きます。)でないこと

さらに、平成29年4月からは、従業員が500人以下の会社で働く方も、労使で合意すれば、上記の1~4の「短時間労働者の4要件」を全て満たす短時間労働者の方も社会保険に加入できるようになりました。

加入は、会社単位であり、上記の「短時間労働者の4要件」に該当する短時間労働者は加入となります。

従業員500人以下の会社が、労使の合意により社会保険の加入を行う場合、従業員の2分の1以上の方の同意を得た上で、事業主から年金事務所へ申出を行う必要があります。

※ 日本年金機構「労使合意に基づく適用拡大 Q&A集」[PDF]

【Q.3】「103万円の壁」「130万円の壁」とはどういうこと?

Q. いわゆる“103万円の壁”、“130万円の壁”などを気にしてパート収入を抑えるため、「11月、12月の年末近くになると休みたい」というパート従業員がいるのですが、これはどういうことですか?

【A.3】パート収入を一定額までに抑えると税制面・社会保険の面で優遇が受けられます。

一般的な例でお話すると、サラリーマン・公務員の妻が、自分の収入をある一定額までに抑えることによって、税制、社会保険で優遇が受けられます。

■税制面の優遇

一つは税制面。妻は自分の所得に対して非課税になり、夫が税制面で控除が受けられます。

平成30年からは、妻の収入が150万円までは夫が38万円の配偶者特別控除が受けられるようになったことで、「103万円の壁」は実質なくなり、税制面では「150万円の壁」となりました。

つまり、「103万円の壁」を超えると、自分自身の税金は発生しますが、夫の税制面の控除については150万円までは気にする必要がなくなったということです。

※夫の会社にて、扶養手当、家族手当等が支給されている場合、その支給対象となる配偶者の要件は確認してください。

■社会保険の面

もう一つは社会保険の面。

妻は年間収入130万円未満の場合、「社会保険の被扶養者」となれます(妻は自分で社会保険料を負担しません)。

社会保険において、妻が社会保険の被扶養者のままでいることを希望するときは「130万円の壁」を、妻が501人以上の会社に勤めている場合は「106万円の壁」を考慮する必要があります。
※「106万円の壁」は月の賃金が8.8万円×12ヶ月のこと、【Q.2】を参照してください。

この税制・社会保険における優遇を考えると、現在は「130万円の壁」「106万円の壁」が一番のハードルとなっています。

自社のパート従業員の方にもこの情報をお伝えして、働き方を見直すきっかけにしていただくとよいのではないでしょうか。

【Q.4】所定労働時間では加入要件を満たさないが、実状として恒常的に要件を満たしている場合は?

Q. 雇用契約書等で定めた所定労働時間では加入要件を満たさないものの、実際の労働時間においては、業務上の都合により恒常的に加入要件を満たしている場合はどうすればよいのでしょうか?

【A.4】実態を優先されることがあるので、労働条件を見直しましょう

各種保険の加入については、雇用契約書(労働条件通知書)にて判断されますが、このご質問の場合などは実態を優先することがあります。

実際には、労働基準監督署、年金事務所などの調査により指摘を受けた場合、実態を優先して遡って加入することがあります。

恒常的に当初の所定労働時間を超えて働いている場合は、労働条件通知書を変更し、本人に交付することをお勧めします。

見直した条件によって所定労働時間が加入要件を満たした場合は、各種保険に加入できるなど、従業員にメリットがあります。

また、見直しした労働条件を提示することで従業員に納得感が生まれることでしょう。

【Q.5】1週間ごとの「シフト制」の場合の加入要件は?

Q. パート・アルバイトは1週間ごとに希望スケジュールを提出してもらう「シフト制」なので、週の所定労働時間が固定されていないのですが、その際は加入要件をどのように判断したらよいですか?

【A.5】ひと月の所定労働時間で判断します。

雇用保険は、おおむね月87時間以上かつ月の労働日数が11日以上の場合となります。加入したとしても、ひと月の労働日数が10日以下の場合、雇用保険の給付(失業給付など)を受けることができません。

社会保険は「4分の3基準」で、正社員が月160時間ならば120時間以上働く場合、加入となります。

まとめ

各種保険の加入については、正社員だけが対象ではありません。

パート・アルバイトなどの短時間労働者も対象になることから、加入要件については理解しておくことが大切です。

なお、ケースバイケースで判断されることもありますので、必要に応じてハローワークや年金事務所、専門家に確認するとよいでしょう。

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