意外とやりがちな「ブラック上司」の言動6つ
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こんにちは。しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。
2018年1月12日に10年ぶりに広辞苑の全面改訂が行われ、新たに「ブラック企業」が収録されました(*1)。
過重労働の是正、そして働き方改革の流れがある一方で、部下に対して理不尽な命令を行ったり長時間労働を強いる「ブラック上司」は、今なお話題になることがあります。自分では普通のことだと考えていることが、部下や周りの人からすれば「あの人はブラック上司だ」と思われる原因となっている場合も少なくありません。
今回は、自分では気づかぬうちに「ブラック上司」になっているかもしれない、やりがちな6つの言動について紹介します。
(1)業務時間外に資料やマニュアルを読んでおくように指示する
会議の資料や業務マニュアルを家で読んでおくように指示することは業務命令にあたるため、残業(持ち帰り残業)として取り扱わなければなりません。
また、業務時間外に読むことを指示していなくても、業務時間内に終わらせることが客観的に見て不可能と言える場合には、実質的に業務命令があったものと判断される場合があります。
(2)業務時間外や休日に業務に関するメールを送信する
業務時間外や休日にメールチェックを強要するのはもちろんのこと、部下がパソコンや携帯電話などでいつでもメールチェックすることが出来る状況である場合には、業務時間外や休日に業務メールを送信するのも差し控えたほうがよいでしょう。
(3)「仕事が遅いこと」を理由に残業と認めない
部下の仕事が遅く、他の社員より残業をしている場合であっても、残業時間と認めなければなりません。
残業命令を出していなくても、終業時間後に仕事をしていることを黙認すれば「黙示の指示」があったものとして取り扱われます。
(4)定時退社よりも残業している部下を評価する
「遅くまで残業している=仕事を頑張っている」と評価するのは、慢性的な長時間労働を引き起こす大きな要因となり、効率的に仕事を終わらせることが出来る部下にとっては、不当な評価を受けているものとして捉えられます。
「ブラック上司」から従業員を守るためには、従業員の声の収集が欠かせません。以下の資料で、離職率を抑える従業員の本音を集めるヒントをまとめましたので、ぜひご活用ください。
(5)「取得理由の如何」によって有給休暇を認めない
「有給休暇の申請書に取得理由を記載しなかった」、「申請書の取得理由が“私用のため”等の抽象的な理由だった」などを理由に、有給休暇の取得を認めないのは許されません。
この際、しつこく取得理由を聞くことも、有給休暇を取得する権利を阻害していると判断される可能性があります。
なお、労働基準法で認められている「時季変更権」は、有給休暇の取得を拒否する権利ではなく、事業の正常な運営を阻害する場合に有給休暇取得日を他の日に変更する権利であり、変更後の取得日を必ず指定しなければなりません。
「事業の正常な運営を妨げる場合」は、業務繁忙程度の理由では認められません。時季変更権を行使しうる場合は実務上ほとんどないことに注意してください。
(6)人前で部下を叱責する
業務上必要な指導として部下を叱ることは否定されません。
しかし、叱る理由に正当性があったとしても、見せしめのようなやり方になれば適正な指導の範囲を超えているとしてパワハラと認定される場合があります。
まとめ
国が推進する働き方改革の流れを受け、これまで社会一般で常識だとされていた方法や考え方が、今では非常識だとされることも少なくありません。
また、人材力が企業競争力の源泉であると注目される現在、マネージャーや経営者にとって従業員との関係性は非常に重要になっています。これは在職時だけでなく、「アルムナイ」などの外へ出ていく方々との関係性を良好に保つことで、その後の引き合いや採用に好影響を与えるというケースもあります。従業員との良好な関係性は、企業競争力に還元されると言っても過言ではありません。
そんな中、働き方改革において上司(管理職)が果たすべき役割は非常に大きいと言えます。
自身が「ブラック上司」となってしまっていないか、客観的な視点から今一度チェックしてみてください。
【参照】
*1:広辞苑、戦後の世相映す 10年ぶり改訂「ブラック企業」など1万語追加 – 毎日新聞