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フリーランスの「安全配慮義務」適用でセクハラ訴訟に?!業務委託時の注意点を弁護士が解説

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こんにちは、弁護士法人ALG&Associate大阪法律事務所の長田弘樹です。

フリーライターの女性がセクハラを受けたとして、契約相手である美容エステティックサロンと経営者を訴えた裁判で、東京地裁は会社に安全配慮義務違反があったと認定しました。

副業を行う労働者の増加に伴い、フリーランスのトラブルも増加が予想されます。今回は、本判決から見える、企業がフリーランスの業務委託時の注意点について解説いたします。

雇用契約がなくてもセクハラが安全配慮義務に当たる?

本件は、被告であるエステティックサロンとの間で、美容に関する記事を執筆する業務内容で業務委託契約を締結していた原告の女性が、被告代表者からセクハラ行為を受けたとして慰謝料請求を行った事案です。

問題となったのは、原告と被告との間の契約が「雇用契約でない場合も、被告が安全配慮義務を負うのか」という点でした。

安全配慮義務とは

労働契約法第5条を根拠に、これが使用者の負う安全配慮義務の根拠であるとされています。

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。​

安全配慮義務に関する使用者と労働者の関係 - 厚生労働省

(出典)労働災害の発生と企業の責任について – 厚生労働省

また、労働安全衛生法第3条1項にも、使用者の労働災害防止義務や、労働者の安全ないし健康を確保する義務が規定されています。

このように、雇用契約にもとづく場合には、使用者には明文による安全配慮義務が課されています。これにより、労働者は使用者からハラスメント行為を受けた場合には、損害賠償を請求できることになります。

フリーランスに安全配慮義務は適用される?

フリーランスが締結する業務委託契約は、あくまで雇用契約とは別の契約であり、契約類型としては委任や請負に分類されます。したがって、雇用の場合であれば、労働者は労働基準法などの労働法規により保護されます。しかし、業務委託契約にもとづく受託者の場合は、労働者ではないため、その保護の対象とはなりません

しかし、フリーランスとして委託者のために業務を行う場合と、労働者が雇用契約にもとづいて労務を行う場合は、委託者が指示を出し、それを受けて受託者が業務を行う点が、雇用契約における指揮命令関係と類似しています。

そのような関係からは、指示を出す委託者が、業務を行う受託者との関係で優位に立つことが多く、それによりハラスメント行為が起きうるという構図は、雇用契約の場合とほとんど同じ関係性になります。

そのような場合に、「業務委託という契約形態」だけで安全配慮義務による保護を受けられないとするのは、不公平であるように感じられます。

判決からみる安全配慮義務への対応

安全配慮義務について判断された有名な事案として、陸上自衛隊八戸車両整備工場事件(最判小判昭和50・2・25民集29巻2号143頁)があります。この判決は、使用者が信義則にもとづき、労働者に対して安全配慮義務を負う必要があるとはじめて認めた事案です。

安全配慮義務の内容として、「ある法律関係にもとづいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において信義則上負う義務」とし、雇用契約に限定しませんでした。

(出典)労働契約法のあらまし – 厚生労働省(p.30)

その後も、三菱重工業神戸造船所事件(最一小判平成3・4・11労判590号14頁)や、アテスト(ニコン熊谷製作所)事件(東京高判平成21・7・28労判990号50頁)などにおいて、直接の契約関係がなく、事実上の指揮監督関係があるに過ぎない「元請企業と下請企業労働者」などの関係でも、特別な社会的接触の関係における信義則にもとづいて「使用者(元請企業、派遣先企業)は安全配慮義務を負う」と判断されるようになりました。

今回の裁判も、その流れに沿って判断がなされたものと考えられます。

雇用契約の有無によらず損害賠償を追及できる

以上のとおり、雇用契約によらない場合であっても、特別な社会的接触の関係に入った当事者間においては、安全配慮義務を負う場合があり、損害賠償責任を追及できる場合があります

安全配慮義務は、身体的な安全だけでなく、精神的な健康まで対象としています。フリーランスへの委託時には、この点も考慮して社内レギュレーションの整備を進めましょう。

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