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産業医の専任はいつから? 業務内容や上手な活用の仕方、メリットも解説

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経営者や人事担当者は一度は耳にする、産業医という存在。会社にとってどのような役割があるのか、理解されていますか? 本記事では、そもそも産業医とはどのような業務内容なのか、どの会社も選任する必要があるのか、選任のタイミングやメリットは何か? など詳しく解説していきます。

産業医とは?

大前提として、産業医には医師免許が必要です。しかし、医師免許を持っているだけでは産業医になることはできません。

医師免許に加えて、産業医になるための研修や実地経験を積む、もしくは産業医科大学など特定の大学を卒業することで、産業医になることができます。

研修は、医師会や産業医科大学など厚労省から決められた機関にて実施されています。

なお、海外ではフランスやドイツに産業医(労働医)制度というものがあり、企業によっては産業医選任義務があります。アメリカにも産業医は存在しますが、企業に選任義務はなく、国ごとに異なっています。

産業医はどの会社も必要?

法律(労働安全衛生法および労働安全衛生法施行令)により、従業員数に応じて産業医の選任が会社へ義務付けられています。50名以上の事業所では選任の義務がありますが、従業員数が50名未満の事業所は努力義務となり必須ではありません。下記2つの例を見てみましょう。

ケース1

X会社:従業員数はA支店に50名、B支店に30名

→A支店にのみ産業医選任義務が発生。B支店は努力義務。

ケース2

Y会社:従業員数はA支店に30名、B支店に20名

→産業医選任義務なし(A支店・B支店ともに努力義務)。

ケース2の場合は、1つの会社で全従業員数が50名を超えていますよね。

しかし、各支店ごとの従業員は50名超えていないため、産業医の選任義務は発生しません。つまり、産業医の発生義務は企業単位ではなく事業場単位ということなのです。

産業医の業務内容5つ

では、実際に産業医はどのような業務内容を行ってくれるのでしょうか?ここでは大きく分けて5つ説明していきます。

(1)健康診断の実施、結果の確認及び就労判定

従業員に勤務を継続させて問題ないかを確認するために行います。必要に応じて、会社を通して病院への受診勧奨や就業制限を行うこともあります。

(2)ストレスチェックの実施や対象者への面談

産業医は、ストレスチェックの実施者になることができます。ストレスチェックを外部機関へ委託して実施する会社も多いですが、外部機関にいる産業医や、自社の産業医が実施者になっていることもあります。

また、産業医は必要に応じて従業員と面談を行います。面談の種類は、ストレスチェックで高ストレス者と判定された従業員と行う高ストレス者面談・長時間労働となった従業員に対して行う長時間労働面談・健診後に行う健康相談・休職者が復職時に行う復職判定面談などがあります。

(3)健康教育や健康管理など

従業員の健康の維持・向上に繋げるために、健康教育(セミナーなど)や健康管理を行います。

(4)職場巡視の実施、作業管理や作業内容の管理

従業員が働いている環境や作業内容などを確認し、健康障害が起きうる場合は会社に対して提言します。特に工場や有害物質を扱う職場では、適切な環境や体制を整え”続けて”いないと、生命に関わる病気や事故などの労働災害が起こる可能性があります。

そのため、業務フローは適切か・フローは遵守されているか・社内の教育はきちんとされているかなどを定期的に確認することで、労働災害の予防に繋げることができます。

業務自体の危険度は高くない職場でも、VDT症候群(※)予防の視点や災害時の視点から、環境を常日頃整備する必要があります。デスクや椅子の高さ・位置は適切か・高いところに重いものを載せていないか・避難通路が物置となっていないかなどです。

※VDT症候群とは?

パソコンなどのディスプレイを長時間使用することで目や心身に影響が起こる様々な症状のこと。代表的なものはドライアイ、肩こり・腰痛など

産業医にとっては、職場巡視を通して従業員と交流を持つことで、相談しやすい関係性作りが構築できたり、面談をした従業員の職場環境や人間関係の把握をすることもできます。このように、業務に危険が伴う工場以外でも、職場巡視は意義のある職務です。

(5)(安全)衛生委員会のメンバーになる

実際に衛生委員会に出席し、医師の視点から提言をします。

参考:中小企業事業者の為に産業医ができること(厚生労働省)

産業医の活用メリットとは

「法律で義務付けられているから」と義務として導入している企業も多いかもしれません。しかし、産業医を選任することには従業員・企業側両方にとってメリットがあります。

選任義務がない従業員数50名未満の企業・法人にとっても、産業医がいることで享受できるメリットは多数ありますので、ぜひ参考にして頂けると幸いです。

(1)リスク管理の一助になる

企業には「安全配慮義務」が課せられています。「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をする」という会社の義務です。※労働契約法5条より

簡単に言い換えると、企業は「従業員が心身ともに健康に働ける環境を作る必要がある」ということです。

例えば、長時間労働が慢性的に行われているにも関わらず、企業側で対応を行わず、長時間労働が原因で従業員が亡くなった場合、企業は安全配慮義務違反で訴えられる可能性があります。一方で、長時間労働以外にも安全配慮違反になりうる要素はあります。従業心身の健康に障害が起きそうな状況の場合、産業医は医学的な視点から「この環境や体制のままだとこういった健康障害リスクがあるから改善した方が良い」といった形でアドバイスをしてくれるのです。

このように従業員の健康障害リスクを減らすことは、安全配慮義務違反リスクを減らすことにつながります。もちろん企業はビジネスとして利益を出す必要があるため、いつでも従業員の健康を最優先することは難しいかもしれません。

しかし、見方を変えれば企業側の訴訟リスクを減らすという視点でも考えることができます。産業医は医学的視点から労働環境を考えアドバイスできるため、弁護士とともに、リスク管理を行う上でのアドバイザーとしての存在意義は大きいといえます。

(2)パートナー(コンサルタント)としての存在

特に中小企業の人事担当者は1,2人しかいない職場も少なくなく、従業員のメンタル不調や衛生管理体制に関して相談できる相手が少ないことが多いですよね。

ハラスメントやメンタルヘルス対策など、人事に求められる業務は多岐に渡りますが、専門的な知識は少ないという人事担当者も多いかと思います。

そんな時に、産業医は人事担当者のコンサルタントとして相談相手になることもできます。従業員の健康管理の方法・健康教育のための研修企画・対応に困る社員への対応方法など、気軽に相談できるパートナーとして産業医を活用する方法もあるのです。

(3)従業員に対する安心材料になる

「社内で医師に相談できる仕組みがある」ということは従業員にとっては心強いです。心身の不調で誰かに相談したくても、病院へ行くべきなのか分からず後回しにしている従業員は少なくありません。会社に産業医がいていつでも相談できると分かれば、安心につながります。

ただし、従業員が気軽に相談できる存在になるためには、会社内で「産業医がどんな人なのか」を周知するとともに「産業医への相談と評価は直結しないこと」「個人情報やプライバシーは適切に保護されること」などを繰り返し伝えていく必要もあります。手間がかかると思われるかもしれませんが、従業員が安心して産業医に相談し、健康課題を解決できることは、企業にとっても良いことなのです。

どんな産業医を選べば良い?

産業医といってもやはり人ですので、相性はあるかと思います。どの産業医が一番良い、というものはありません。労務に強い弁護士・離婚に強い弁護士……と弁護士の中でも得意・不得意があるように、医師の中でも得意・不得意な領域があります。

昨今のメンタルヘルスケアの重要性から、精神科の医師を好む企業も多いようですが、精神科の医師=メンタル不調の従業員対応に強いということではありません。確かに医師として精神科の病気を診ることは得意かもしれません。しかし、産業分野ではいかに“従業員と会社の間に入って物事を見ることができるか”が重要になるのです。

そのため、専門の科がどこかというよりは、企業および従業員と一緒に課題を解決してくれるような産業医を探すことをおすすめします。

会社にとって“良い”産業医の探し方は?

まずは会社にとって何が優先なのか、優先順位をつけると良いでしょう。費用・解決力・人柄・産業医サービス提供会社の対応力。産業医の対応スピード・衛生管理体制の整備力・健康経営に関する知識の量..など決める要素は様々あります。

全ての会社にとって”良い”産業医というのはいないため、会社にとって何を優先したいのかを決めておくと、判断軸を持てるためおすすめです。

費用面ですが、対応力が高い産業医はやはり需要があるため、平均よりも安価ということは少ないです。家賃と同じで、求めれば求めるほど金額は高くなります。そのため、費用も対応力も解決力も..と求めるのではなく、会社としての優先順位をしっかり決めて探すことが、貴社にとって最善の産業医を見つける近道になると思います。

より従業員が気軽に相談できる場所を設けるには?

通常の産業医訪問は、多くても月1〜2回程度となります。従業員が面談したいと思った時には、人事を通してスケジューリングした上で相談する流れとなります。そのため、タイムリーな相談は難しかったり、周りの人に相談することを知られたくないという気持ちからなかなか産業医には相談できないという意見も多いです。

定期的な産業医に加えて専門家への相談を提供することで、体調不良を抱えながら業務に当たる生産性低下や、欠勤・離職率の予防に繋がると考えられます。

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