1. 経営・組織
  2. 組織開発

“醸成”と“活用”の計測が鍵。心理的安全性向上につながる従業員サーベイ活用

公開日
目次

こんにちは、SmartHRでプロダクトマーケティングマネージャーを務めている埜村です。

変化の激しい時代に企業が持続的に成長するには、組織のメンバーが状況に応じて素早く改善を進める必要があります。こうした組織の柔軟性とイノベーションを支える基盤となるのが「心理的安全性」です。

本記事では心理的安全性の基本や心理的安全性を高めるコツ、SmartHRの従業員サーベイ機能の活用について紹介します。

心理的安全性と企業や個人の成長の関係

心理的安全性とは何か?

皆さんは仕事において「こんな質問をしたら無知だと思われないか」あるいは「反対意見を言ったらネガティブな人だと思われてしまうかも」といった不安を感じた経験はありますか?

質問や反対意見はよりよい議論や意思決定のヒントになるかもしれません。けれど、周りの空気を気にしてためらってしまう方は多いのではないでしょうか。

ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンソン教授は、リスクのある行動を阻害する不安を以下に分類しています。

  • 無知だと思われることへの不安
  • 無能だと思われることへの不安
  • 邪魔だと思われることへの不安
  • ネガティブな人だと思われることへの不安

(出典)Building a psychologically safe workplace - Amy Edmondson

こうした不安のない状態が、心理的安全性の高い状態です。エドモンソン教授は、心理的安全性を「対人関係においてリスクのある行動をしてもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義しています

チームの生産性向上と心理的安全性

心理的安全性の理解を深めるうえでおすすめなのが、Googleによる「プロジェクト・アリストテレス」です。

これはチームの生産性について、チームワークの観点を重視して調査したプロジェクトです。成功するチームの要因を社内調査や半世紀にわたる学術研究から探りました。

その結果「誰がチームのメンバーであるか」より「チームがどのように協力しているか」が成功の鍵になること、なかでも「心理的安全性」の重要性がわかってきたそうです。

たとえばカーネギーメロン大学、MIT、ユニオンカレッジによる研究では、成功するチームはメンバーがほぼ同じ割合で発言している一方、失敗するチームは一人だけあるいは少人数のグループがずっと話しているという結果がみられました。

さらにGoogleのとあるチームでは、プロジェクト・アリストテレスの研究を参照して、チームの改善に取り組みました。

具体的には、チームリーダーがメンバーと課題を議論する場で、あえて個人的な悩みを話したところ、メンバーも次々と自らの苦悩や問題を共有したそうです。日頃の小さな摩擦や煩わしい出来事を率直に話しやすい空気が生まれ、チームの課題についての議論が進みました。

(出典)What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team

心理的安全性を高めるメリットとは?

プロジェクト・アリストテレスの結果が明らかになると、国内外で心理的安全性に注目が集まり、さまざまなメリットがわかってきました。主な3つのメリットを紹介します。

メリット(1)心理的安全性は企業の業績に寄与する

1つ目は企業の業績向上です。国内でも心理的安全性を高めると企業の業績が伸びるという調査結果があります。

株式会社カルチャリアが従業員数100名以上300名未満の企業の経営者に実施した調査。心理的安全性を高める施策を実施した企業のうち84.7%が「売上/生産性向上」を実感していました。

また、リクルートワークス研究所による分析では、意思決定・合意決定のための会議への参加や仕事にアドバイスや意見をもらう機会が心理的安全性を促進し、職場の業績を変化させたとのことです。

(出典)心理的安全性が個人の成果と組織成果に及ぼす影響

メリット(2)心理的安全性は個人の成長も後押しする

2つ目のメリットは個人の成長促進です。

以下は心理的安全性が高い人の行動の特徴です。あてはまる人を思い浮かべてみてください。

  • 仕事を実行の機会ではなく学習の機会と捉える
  • 自分が間違うということを認めている
  • 好奇心を形にして積極的に質問する

あてはまる人は恐らく成長のスピードが速いのではないでしょうか。

従業員の成長には、成長につながるチャレンジと失敗からの学習が大切です。心理的安全性の向上は、個人のチャレンジや学習を促し、従業員の成長を加速させます。

メリット(3)心理的安全性が自律的な意思決定を促進する

3つ目のメリットは組織の自律的な意思決定の促進です。

企業が持続的に成長するには、変わり続ける顧客のニーズを察知し、対応しなければいけません。そのためには現場が変化に気づいたときに、必要に応じて素早く判断・対応することが求められます。

柔軟な対応を妨げる要因のひとつが「間違ったらどうしよう」といった不安です。心理的安全性を高めて「挑戦しても大丈夫」と思える従業員が増えれば、組織の変化への対応力も高まります。

どのように心理的安全性を高められるのか?

ではどうすれば心理的安全性を高められるでしょうか?

まず必要なのは定量的な現状把握です。エドモンソンさんはチームの心理的安全性を知るための7つの質問を提唱しています。この7つの質問を従業員向けサーベイなどで調査してみましょう。

  1. チームの中でミスをすると大抵非難される
  2. チームのメンバーは課題や難しい問題を指摘し合える
  3. チームのメンバーは自分と異なることを理由に他者を拒絶することがある
  4. チームに対してリスクのある行動をしても安全である
  5. チームの他のメンバーに助けを求めることは難しい
  6. チームのメンバーは誰も自分の仕事を意図的に貶めるような行動をしない
  7. チームのメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され生かされていると感じる

(出典)「効果的なチームとは何か」を知る

心理的安全性の状態を把握し、高めるうえでは3つの注意点があります。

注意点(1)建設的な議論やお互いの成長を促進する目的を意識する

1つ目は、心理的安全性の向上によって建設的な議論やお互いの成長が促進されているかを意識することです。

心理的安全性を高める施策というと、従業員を褒めるコミュニケーションや飲み会、懇親会などをイメージする方も多いかもしれません。これらの取り組み自体が悪いわけではありませんが、目的を意識しておかないと「仲良くなっただけ」で終わってしまうかもしれません。

7つの質問にある「チームのメンバーは課題や難しい問題を指摘し合える」の回答をしっかりみる意識が大切です。

注意点(2)まずは心理的安全性を醸成することを目指す

2つ目は、土台として心理的安全性の醸成を目指すことです。

建設的な議論や成長のために心理的安全性が重要だからといって、いきなりお互いにフィードバックや議論を重ねても雰囲気が悪くなってしまうかもしれません。

まずはチームの心理的安全性の状態を把握し、醸成に取り組むのが効果的です。

7つの質問にある「チームの中でミスをすると大抵非難される」や「チームのメンバーは自分と異なることを理由に他者を拒絶することがある」「チームのメンバーは誰も自分の仕事を意図的に貶めるような行動をしない」の回答をみるのがよいでしょう。

注意点(3)自身の感覚だけを当てにしない

最後のポイントは自身の感覚だけを当てにしないことです。とくに役職の高い人は、チームでの発言に不安を感じる経験が少ないゆえ、メンバーの不安に鈍感になりがちです。自分の感覚だけを当てにせず、客観的なデータなども用いて現状を把握しましょう。

従業員サーベイを活用して心理的安全性を高めるコツ

心理的安全性をデータをもとに把握・改善する手段のひとつが、従業員へのサーベイの実施です。

ここではサーベイを活用して心理的安全性を高めるコツを紹介したいと思います。

(1)心理的安全性の「実践」と「醸成」を比較する

ここでいう「実践」とは、心理的安全性の高さを建設的な議論や成長の促進につなげること。「醸成」とは、前提となる心理的安全性を高めることを指します。

7つの質問なども活用しながら、実践と醸成をバランスよくみていくことが重要です。

(2)「実践」と「醸成」の両方が低い場合、まずは「醸成」に取り組む

比較した結果、実践と醸成の両方が足りない場合、まずは土台の醸成に取り組みましょう。

リクルートワークス研究所の分析では、非公式に仕事についてアドバイスを受ける機会、意思決定・合意形成のための会議に参加する機会などが心理的安全性を高めることがわかっています。

(3)「実践」と「醸成」の両方が低い場合、まずは「醸成」に取り組む

「醸成」だけが高い状態は、単なる仲良し組織に陥っている可能性があります。「実践」を高めるために、建設的な議論やお互いの成長促進のための施策を検討しましょう。

心理的安全性とエンゲージメント、キャリア安全性

企業成長のために心理的安全性を高めるうえでは、「エンゲージメント」や「キャリア安全性」との関連も意識するとよいでしょう。

リクルートワークス研究所が発表した調査では、心理的安全性が個人のワークエンゲージメントにプラスの影響を及ぼしていました。ワークエンゲージメントとは、従業員の仕事に対する活力の高さや組織への愛着の強さなどを示す指標です。心理的安全性と同様、企業の売上向上や離職率低下に寄与するというデータがあります。

また、今の職場での現在・今後のキャリアが同僚や社外と比べて満たされているかを示す「キャリア安全性」も、ワークエンゲージメントにプラスの影響を及ぼしています。

興味深いのは「キャリア安全性」と「職場の心理的安全性」が負の相関を示していることです。

ただ心理的安全性を高めるのではなく、エンゲージメントやキャリア安全性などもサーベイなどで確認し、バランスを注視していけるとよいと思います。

SmartHRで組織の心理的安全性やエンゲージメントを把握

これまでのポイントを押さえて心理的安全性を高めるために有用なのが、SmartHRの従業員サーベイ機能です。

従業員サーベイ機能では、あらかじめ目的にあわせて設計されたプリセットサーベイを利用できます。心理的安全性サーベイはもちろん、エンゲージメントサーベイやキャリアサーベイも備えています。

心理的安全性サーベイでは、リスクのある行動をとっても安心か、建設的な議論が生まれているかといった「実践」にまつわる質問と、お互いをしっかり褒め合えるかといった「醸成」にまつわる質問の両方が含まれています。

従業員サーベイ機能について詳しく知りたい方は、ぜひ以下の資料もあわせてご覧ください。

お役立ち資料

3分でわかる! SmartHRの従業員サーベイ

企業成長につながる心理的安全性向上に取り組む

心理的安全性を高めるには「実践」と「醸成」の観点で現状を把握し、改善を重ねることが重要です。サーベイを活用して、ぜひ企業成長につながる心理的安全性の向上に取り組んでいただければ幸いです。

人気の記事