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大きな目標達成を目指すには?OKRの導入事例と設定の具体例

公開日

この記事でわかること

組織の目標を共有するとともに、さらなる成長や発展に効果が期待できるOKR。

  • OKRの導入手順
  • 導入企業の実例
  • 具体的な設定例

をご紹介します。

目次

OKRとは?

OKRは「Objectives & Key Results」の略称で、目標とその達成に必要な成果指標を設定する管理手法です。

OKRは「Objectives & Key Results」の略称で、目標とその達成に必要な成果指標を設定する管理手法です。

OKRのうち、O(Objective)が目標を、KR(Key Results)が各目標達成に向けた成果指標を指します。目標共有により組織にまとまりが生まれるほか、個人のとるべき行動が明確になるメリットもあり、Googleやメルカリをはじめ多くの企業で導入されています。

OKRの効果やKPIとの違いなどについてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

OKRの設定・導入方法

OKRの決め方は大きく2パターンあります。

1つはO(Objective)から決めるパターンです。OKR全体の方向性が一致しやすく、上位の役職からトップダウン方式で設定する場合に適しています。

もう1つはKR(Key Results)を先に決めるパターン。組織が現在取り組んでいる業務、あるいは今後やりたいプロジェクトを起点にKRを設定し、そのうえで目標となるOを導きます。現場レベルの課題や視点から、ボトムアップ方式でOKRを決める際に適した方法です。

ただし、後者はKRに合わせようとするあまり、組織の実態とかけ離れたOを設定してしまうリスクも考えられます。OKRの初導入時はOから決めるトップダウン方式が推奨されます。

以降ではO(Objective)から決める、トップダウンでの設定手順を詳しく解説します。

OKRのトップダウンでの設定手順

ステップ1:導入範囲を決める

まずはOKR導入範囲の決定です。

OKRは企業全体での運用が基本ですが、規模が大きい企業では一部の部署やチームなど、限定的な範囲から試験運用するのも一つの手です。実際に運用してみると、全社での適用に向けた課題も見つかるはずです。

ステップ2:O(Objective)を定める

次に、O(Objective)を定めます。ポイントは以下のとおりです。

  • 定性的な内容
  • 魅力的で達成したいと思う目標
  • 達成度が60〜70%になる難易度
  • 1か月〜四半期ほどの期限設定

Oは従業員が自主的に達成を目指し、困難を通じて成長や生産性向上も望める内容が求められます。

ObjectivesとKey Resultsの違い

安易にこなせる課題は向上心の低下を招き、企業のさらなる発展につながりません。実力以上の力を発揮してようやく達成可能な難易度を意識しましょう。また、必要に応じて軌道修正できるよう、目標達成期限は1か月から四半期に設定します。

企業全体のOKRは、部署や個人のOKR検討時の指針となります。なるべく壮大で、かつ従業員の理解も得られる目標に設定します。設定時には役員だけでなく、現場の声を取り入れるのも効果的です。

ステップ3:KR(Key Results)を設定

次のステップでは、KR(Key Results)を設定します。

KRはO(Objective)に関連づけるのはもちろん、定量的な要素を入れ込むのもポイント

「1年以内に新企画5つを立ち上げる」「成約件数を2倍に増やす」など、達成度合いを数値で判別できる内容が適しています。数値化は必須ではありませんが、行動指針やプロセスが明確になり、集中して業務に取り組めるメリットもあるため、可能であれば盛り込みます。また、O同様、簡単に達成できない難易度設定も大切です。

KRの数は1つのOに対して3〜5つ程度が理想とされています。過剰なKR数では管理や業務の負担も大きくなるため、必要な項目に絞ります。どうしても多くなる場合は、別のOKRに切りわける方法もあります。

ステップ4:OKRをトップダウンで落とし込んでいく

上位(企業全体)のOKRが設定できたら、部署や個人単位に落とし込んでいきます。

OKRをトップダウンで落とし込んでいく

なお、OやKRの考え方は全社での運用でも、限定的な運用でも共通です。各部署・個人のOは、より上位層のKRに沿っている必要があり、KRは当該フェーズのOに紐づいていなくてはなりません。OとKRが上から交互に関連している状態が理想です。

企業全体の目標は部署の目標よりも壮大に設定し、各部署やチーム、個人は目標達成に向けて組織にどのような貢献ができるか考えます。一貫性のあるOKRこそが、組織の協力関係やまとまりをつくるのです。

そして、実際の落とし込みではOKRの認識共有も欠かせません。運用開始前にマネジメント層による周知の機会も設けましょう。

十分に理解せず設定してしまうと、ステップ2や3の基準を逸脱したOKRとなり、運用の妨げとなる恐れも。まずはマネジメント層が理解を深め、そのうえで考え方や設定方法を従業員に示したほうが成功率も高まります。

とくに、OKRの前提である

  • 成果を管理するフレームワークではない
  • 会社として、チームとして、何を目指すか明確にする役割をもつ
  • 達成率は60〜70%を目指す

といった事項は必ず説明します。

ステップ5:運用・改善

OKRは従業員がいつでも見直せるよう、アクセスしやすい状態で管理します。共有のオンラインフォルダへの格納や部署ごとの定例会議における議事録への記載、チャットツールでの固定表示、社内掲示といった手段が考えられます。

運用中は週次・月次など定期的なチェックインミーティングの実施も欠かせません。達成度の進捗確認や、必要に応じて目標の修正もします。

導入初期は課題も生じがちですが、まずは従業員へのOKR普及を優先的に実施しましょう。仕組みや考え方を体感してもらったうえで、目標設定や運用の課題を徐々に解消していきます。

OKRの設定事例:株式会社テクノスジャパン

株式会社テクノスジャパン

企業向け経営・業務システムのDX推進事業を展開する株式会社テクノスジャパンも、OKRを導入した企業の一つです。

OKRに加え、上司と部下が1対1でミーティングする「1on1」や、1人の従業員をさまざまな立場の人が評価する「360度フィードバック」も併用。3つの制度を組み合わせながら、社員の自律性醸成とエンゲージメント強化を図っています。「自分自身でゴールを掲げ、仕事を楽しみながら目標達成を目指す」姿勢が生産性やモチベーションの向上につながると考えているそうです。

OKRをはじめとした人事制度改革を実現するために、同社が取り組んだ生産性の向上については、SmartHRの各種機能でもサポートしています。

同社では従業員400人以上の年末調整や人事関連業務をすべて紙ベースで処理していました。そのため記入漏れなどの人的ミスも多く、年末調整業務だけで10日以上かかる年も。書類管理の負担も無視できませんでした。

労務関連業務や人事データをネットワーク上で管理できるSmartHRの導入後は、作業時間が大幅に減少し、年末調整の準備は1日で完結。業務効率化で生まれた時間を活用して、人事制度改革に取り組みました。

(参考)第28期定時株主総会 - 株式会社テクノスジャパン 

OKRを設定してみる

OKRの設定は、試行錯誤を繰り返すほどに精度が増します。

そこで、ここからは以下の企業を例にケーススタディをしてみましょう。

企業例:全国に多数のスーパーマーケットを展開しているA社

企業例:全国に多数のスーパーマーケットを展開しているA社

特徴:品揃えと安さが売り。店舗数を急激に増やしており、全国的な定着を図っている。

ここまでの解説を参考に、自分ならそれぞれどのように設定するか、考えながら読み進めてみてください。

企業単位でのOKR設定

おさらいとはなりますが、OKRにおけるO(Objective)は「何を目指すか」「何を成したいか」を示す目標で、定性的な内容や達成したいと思わせる魅力が大切です。一方、KR(Key Results)はOの達成に必要な成果指標で、成果を計れる客観的な項目にするのがポイント。また、どちらも達成率が60〜70%になるような難易度設定が重要となります。

とくに企業では、各部署やチームがOKRを決める際の指針です。壮大で夢があり、達成までのストーリーをワクワクしながら描ける内容と、120%の力を発揮すれば到達できる難易度を意識します。

具体的には以下のようなOKRが考えられます。

【企業のO(Objective)】

「スーパーマーケットといえばA社」と
第一想起される企業になる

【企業のKR(Key Results)】

市場シェア40%を達成する
人口10万人あたり店舗数ランキング業界1位になる
顧客の生活に貢献する新サービスを3つ立ちあげる

部署、チーム単位でのOKR設定例

店舗営業部

A社の店舗営業部の担当業務は「実店舗の運営や展開」「販売促進に関わるプロジェクト」などです。では、企業のOKRをどのように業務内容へ反映させていけばよいのでしょうか?

企業のKRを現場レベルで達成するには、顧客満足度の向上が欠かせないと考えられます。店舗営業部のOKRは以下のようになるでしょう。

【店舗営業チームのO(Objective)】​

顧客満足度を上げ、より来店しやすい店舗運営を目指す

【店舗営業チームのKR(Key Results)】

平均来店者数5万人/月を目指す​

店舗数を全国で300店舗増やす

スマホアプリ、宅配サービス、ネット販売を展開

管理部

組織の経営に携わる管理部では、どのような目標設定が効果的でしょうか?

企業のKRでは、店舗数や事業の拡大にも焦点が当てられています。事業投資の拡大には、生産性や利益率の改善によるリソースの確保も重要。そこから、管理部のOKRを設定してみましょう。

【管理チームのO(Objective)】
生産性や利益率を改善し、事業投資へのリソースを増やす
【管理チームのKR(Key Results)】
営業利益10%アップを目指す
新規従業員200人採用
事業投資額15%アップ

個人単位でのOKR設定例

販売スタッフ

組織全体のOKR設定後は、個人単位のOKRヘ落とし込んでいきます。

販売スタッフは実店舗の運営や顧客対応などを担当します。上位部署である店舗営業部のKRのうち「平均来店者数5万人/月を目指す」がより関連性の高い項目といえます。

では、平均来店者数を増やすにはどうすればよいでしょうか? 手段の一つとしてはリピート率の増加があげられます。お客さまに何回も来店してもらうためには、来店ごとの顧客体験向上が重要です。

【販売スタッフのO(Objective)】
リピート率を増やし、来店者数を増加させる
【販売スタッフのKR(Key Results)】
お客さまアンケートの回収率を5倍に
売れ筋商品のリストを作成
3か月に1回の接客研修に参加

企画開発スタッフ

A社では企画開発スタッフも店舗営業チームに属します。実店舗の運営などに関わるプロジェクト立案に携わる企画開発スタッフでは、どのようなOKRが適切でしょうか?

今回の場合は店舗営業部のKRのうち「スマホアプリ、宅配サービス、ネット販売を展開」に着目するのがよさそうです。

【企画開発スタッフのO(Objective)】
スマホアプリを開発し、顧客の店舗利用率を増やす
【企画開発スタッフのKR(Key Results)】
5つの委託先候補から見積もりをもらう
うち1社と設計段階まで進む
告知ポスターを5種作成

総務スタッフ

会社の備品管理や書類管理など、スムーズな会社運営や環境整備を担当する総務スタッフ。

OKR設定では管理チームのKR「営業利益10%アップ」に関連して、経費の削減に取り組みます。

【総務スタッフのO(Objective)】
経費を削減し、利益率アップを目指す
【総務スタッフのKR(Key Results)】
オフィス消耗品の仕入れ先を変え、購入費を10%削減する
データ入力作業をDX化し、残業時間を月平均15%削減する
こまめな節電を呼びかけ、光熱費を前年比10%減を目指す

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人事スタッフ

人事スタッフのOKRはどのように設定すればよいでしょうか?

ここでは管理チームのKR「新規従業員200人」を指標にOKRを設定します。

【人事スタッフのO(Objective)】
次年度新卒採用で100人採用する
【人事スタッフのKR(Key Results)】
3〜5月で企業説明会を15会場計60回以上実施する
50の大学・専門学校へ紹介する
自社HPで社員紹介の記事を20掲載する


OKR導入後の運用ポイント

OKRは

  • 設定目標の精度
  • フィードバック体制の整備

の2点に注意しないと、機能不全に陥る可能性があります。

目標設定時には「O(Objective)が野心的かどうか」「KR(Key Results)がOの達成条件になっているか」「メンバーの行動指針となるOKRか」を重点的に確認しましょう。

また、運用中は進捗や方向性の定期的な共有が重要です。大事なのは、全員がOKRを意識しながら働ける仕組みづくりです。1〜2週間ごとに1on1ミーティングを設定してフィードバック体制を整えたり、情報を発信したりして考え方の浸透を図ります。とくに「まったく達成しなくてもよいから、OKRに関連しない業務はやらなくてよい」「とにかくKRの達成を追わなければならない」などのよくある誤解は運用の支障となるため、早期の周知が大切です。

導入〜運用の具体的なスケジュールは以下の記事でも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

大きな目標達成に向け、有効な制度は積極的に採用を

OKRによって企業の目標は明確となり、組織と個人の方向性も一致しやすくなります。結束力が高まれば、企業はより高みを目指せるはずです。OKRは、多様な人材が活躍でき、企業の価値や力を最大限発揮するためのツールといえます。

国内ではまだ認知度の低いOKRですが、その効果に注目して導入を進める企業は増えはじめています。

とくに急成長を遂げたベンチャー企業では、OKRに限らず、生産性向上やリテンションに有効と思われる制度を積極的に取り入れる姿勢がみられます。SmartHRでは、新しい制度の導入事例をまとめたeBookも提供しています。企業の成長を促す仕組みや運用方法について興味のある方は、ぜひこちらも参考にしてください。

お役立ち資料

SmartHR導入事例集 急成長ベンチャー編

  1. Q1. OKRはどんな企業で導入されていますか?

    A.急成長を遂げたベンチャーや業務効率の改善を図る企業が導入を進めています。株式会社テクノスジャパンではOKRに加え、1on1ミーティングや360度フィードバックも導入し、生産性やモチベーション向上につなげています。

  2. Q2. OKRを初めて導入する場合、どう設定すればよいですか?

    A.企業全体のOKRから決め、下位の部署や個人に落とし込んでいくトップダウン方式での設定が向いています。なお、企業規模が大きい場合は、一部の部署で試験的に導入するのも一つの手です。

  3. Q3. OKRの具体的な例を教えてください。

    A.スーパーマーケットを運営するA社の場合、企業全体のOは「"スーパーマーケットといえばA社"と第一想起される企業になる」、KRは「市場シェア40%を達成する」「人口10万人あたり店舗数ランキング業界1位になる」「顧客の生活に貢献する新サービスを3つ立ち上げる」があげられます。

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