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労災保険とは?基礎知識や仕組み、種類と特徴を解説

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「労災保険」とは、労働者が安心して働けるようにするため、必要に応じて保険給付を行う制度です。

労働者を雇用している事業主は、必ず労災保険に加入しなければなりません。事業所の労務担当者は、労災保険料を正しく計算する重要な責務を担います。ところが、労災保険の保険料率は3年に一度見直しが行われるために、手続きが煩雑化しやすく労務担当者の負担になりがちです。手続きを適切に進めるためには、労災保険を正しく理解しておくことが非常に大切です。

そこで、ここでは労災保険の仕組みや概要について、基本から詳しく紹介していきます。

労災保険加入は「義務」

日本の社会保険には、「健康保険」と「年金保険」および「介護保険」、「雇用保険」と「労災保険」の5種類があります。このうち、「雇用保険」と「労災保険」の2種類を「労働保険」と呼んでいます。

「労働保険」のうち、「労災保険」の正式名称は「労働者災害補償保険」です。これは、労働者が通勤時や業務上の理由によって、ケガを負ったり病気にかかったりした場合に、その生活を補償するための制度です。

加入は任意ではなく義務です。1人でも労働者を雇用したら、事業主は「労災保険」に加入して、保険料を納付しなくてはなりません。労働者が加入するのではなく、事業主が加入する点に特徴があります。

労災保険は、雇用形態にかかわらずすべての労働者が適用対象

また、「労災保険」には労働者の加入要件がありません。すなわち、雇用形態にかかわらず、すべての労働者が保険の適用になります

社員はもちろんのこと、パートやアルバイト、日雇いの従業員であっても、労災を申請することができるのです。

労災保険の仕組み

それでは、「労災保険」の概要について詳しくみていきましょう。

「労働保険」のうち、「雇用保険」の保険料は労働者も一部負担していますが、「労災保険」の保険料は事業主の全額負担です。事業主は、この両方の保険料を年度ごとに算出してとりまとめ、管轄の労働基準監督署に納付しなければなりません。

労働者が通勤時や仕事中にケガをしたり、仕事が原因で病気になったりした場合に、労災と認定されると国から給付金が支払われる仕組みです。「労災保険」の保険料率は、3年に一度見直しが行われます。

このとき、労災が多く発生している業種はリスクが高いとみなされて、次回の見直しで保険料率が上がる確率が高まります。逆に、リスク管理を徹底するなどして労災を防ぐことができれば、保険料の上昇を抑える、あるいは減額につながります。

「労災保険」給付金が適用されるケース

「労災保険」が適用になるケースは、「業務災害」と「通勤災害」の2つに分けられます。

「業務災害」とは、業務が原因になって起こった負傷や疾病、障害や死亡を意味し、発生場所は問われません。一方、通勤時に被った負傷や疾病、障害や死亡が「通勤災害」です。

これらの「労災保険」で支給される給付金には複数の種類があり、それが「業務災害」なのか「通勤災害」なのかによって、内容が違います。そのため、「業務災害」による給付を「〇〇補償給付」といい、「通勤災害」による給付を「〇〇給付」と呼んで区別しています。

労災保険の給付金は7種類です。具体例を使ってみていきましょう。たとえば、労働者が事業所内や通勤時に、ケガをしたとします。

まずは、治療が必要となりますが、その治療代について支給されるのが「療養補償給付」や「療養給付」です。

ケガが原因で仕事を休んだときには「休業補償給付」や「休業給付」が支給されます。

療養しても、ケガが治らなかった場合に支給されるのが「傷病補償年金」や「傷病年金」です。

もしも、障害が残ってしまったら「障害補償給付」や「障害給付」が、介護が必要になったら「介護補償給付」や「介護給付」が受けられます。特に、重症になりやすい脳や心臓に異常が生じた場合は「二次健康診断等給付」が支給されることになっています。

そして、万が一死亡に至った場合に支給されるのが「遺族補償給付」や「遺族給付」、「遺族補償年金」や「葬祭料」といったものです。

業務災害については、所轄の労働基準監督署に報告する義務が事業主に課せられています。一方、通勤災害については、報告の義務はありません。

また、業務災害では、休業の最初の3日間については、平均賃金の60%を休業補償として支払う義務を負います。しかし、通勤災害では、このような義務はなく、解雇制限もないのです。

いずれにしても、労災申請時には、申請の工数だけでなく、従業員へのケアなど多くの工数が必要となります。

万が一の場合に備えて、適切な管理工数を確保するためにも、このタイミングで人事・労務領域で効率化するべき業務を整理してみてはいかがでしょうか。

効率するべき業務の洗い出しのヒントは、以下の資料を参考にしてください。

人事・労務領域 効率化すべき業務チェックリスト

労災保険の加入手続き方法

労災保険に加入するには、保険関係が成立してから一定期間内に、所轄の労働基準監督署に必要書類を提出しなくてはなりません。

労災保険の提出

その書類は3種類あり、「保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」、および「履歴事項全部証明書」が該当します。

このうち、「労働保険概算保険料申告書」の提出は50日以内となっていますが、残り2つの提出期限は、保険関係成立の翌日から10日以内です。一般的には、これら3つの書類をまとめて提出して、50日以内に保険料を納付するという流れになります。

保険料の算出

労働保険料は、年度初めに概算額を算出して納付し、年度末に清算するというシステムを採用しています。保険料率の改定が行われると、切り替えのタイミングで、どの保険料率を適用して算出すればよいのか戸惑うケースも出てくるでしょう。

保険料を求めるときは、給与の支払日ではなく、賃金を締めた日がいつなのかによって判断することが大切です。

たとえば、2018年の4月から保険料率が改定になった場合を考えてみます。労災保険料は、労働者の賃金総額×保険料率で求めます。賃金の締め日が2018年3月末で、給与の支払日が4月だったとしたら、3月分の給与については改定前の保険料率で算出しなくてはなりません。

まとめ

事業主が労働者を雇用したら、必ず労災保険に加入しなければならず、保険料を納付する義務を負います。もし、義務違反があると、罰金が科せられるだけでなく、社会的な信用を失うリスクも高まります。そうならないためには、労災保険の仕組みを理解して、適切に手続きを進めることが大切です。

しかし、保険料率の改定が頻繁に起こることもあり、労災保険料関連の手続きは煩雑になりがちです。頭を痛めている事業主も多いことでしょう。そんなときにはクラウドサービスが便利です。

クラウドサービスのメリットとしては、たとえ保険料率が変わっても、サービス事業者側でツールをバージョンアップするため、ユーザー側には面倒な手続きが発生しないことが挙げられます。手続きの効率化の一手として検討してみてはいかがでしょうか。

お役立ち資料

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