令和2年版 年末調整に必要な書類と記入時のポイントを税理士が解説

2020.10.14 ライター: 税理士 木所 正明

こんにちは、税理士法人ビジネスナビゲーションの木所です。

年末調整で必要となる書類は、従業員から回収する各種控除申告関係が4つ、税務署に提出するものが4つ、さらに、市区町村に提出するもの1つと、大きく分けても9種類あります。いずれも税額の計算上、直接必要となる大切な書類であり、正しく理解しておかないとスムーズに年末調整ができなくなるおそれがあるため、注意が必要です。

今回は、従業員から回収、税務署に提出、市区町村に提出の大きく3つの区分に分け、それぞれシーン別に解説します

なお、本解説の前提となる法令は、令和2年7月1日現在の所得税法等の関係法令をベースとしております。

2020年は税制改正で「年末調整書類」が大きく変わる! 改正内容と新書類を解説します。

年末調整に必要な書類一覧

年末調整を行うために必要なものは、全部で9種類あります。名称が似ているものもありますが、それぞれ役割が異なるので正確に把握しておくことが大切です。具体的に挙げると、以下のとおりです。

各種控除申告関係(従業員から回収)

(1)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

(2)給与所得者の基礎控除申告書 兼給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書

(3)給与所得者の保険料控除申告書

(4)給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

税務署関係(税務署へ提出)

(5)源泉徴収票

(6)支払調書

(7)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)

(8)給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表

市区町村関係(市区町村へ提出)

(9)給与支払報告書

参考:国税庁「年末調整がよくわかるページ」

年末調整時に「従業員から回収する書類」

従業員から回収する書類には、各種控除申告関係の4つがあります。

(1)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

給与の支払いを受ける人(給与所得者)が扶養控除等を受けるために必要な書類で、毎年、最初の給与が支給される前日までに提出することになっています。控除の対象となる扶養親族等を有する人だけでなく、たとえ、独身者等で扶養親族等がいない場合でも、この申告書を提出する必要があります。

毎年の恒例の業務ではありますが、制度改正がほぼ毎年のようにあり、控除の対象となる扶養親族等の範囲や要件等に大なり小なりの変更が生じますので、毎年の制度改正の動向には注意しておく必要があります

なお、この申告書の用紙は、地方税法に規定する給与所得者の扶養親族等申告書と統合された様式となっています。

(2)給与所得者の基礎控除申告書 兼給与所得者の配偶者控除等申告書 兼所得金額調整控除申告書

制度改正により、令和2年分から「基礎控除の改正」と「子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除の創設」がなされました。まず、基礎控除の改正では、これまで所得制限がなく一律38万円であったものが、合計所得金額が2500万円以下の所得制限がかかるとともに、控除額も、合計所得の段階ごとに48万円、32万円、16万円の3段階に変更されました。

また、子ども・特別障害者等を有する者等の所得金額調整控除は、給与収入が850万円を超える者で、特別障害者等を有する場合には、その者の総所得金額の計算上、給与収入(上限、1000万円)から850万円を控除した金額の10%相当額を、給与所得から控除する制度です。

これら2つの改正に伴い、「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」が新設され、既存の「配偶者(特別)控除申告書」と兼ねる形で本申告書に1本化されました。年末調整においてこれらの控除を受けるためには、本申告書を、毎年、最後の給与が支給される前日までに提出することになっています。

従業員も要チェック! 令和2年の年末調整「所得金額調整控除」の注意ポイント

(3)給与所得者の保険料控除申告書

給与所得者が、生命保険料、地震保険料、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除といった保険料控除を受けるために必要な書類です。年末調整においてこれらの控除を受けるためには、本申告書を、毎年、最後の給与が支給される前日までに提出することになっています。

(4)給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

住宅ローン等を利用して住宅を購入した場合、以下の条件を満たして、こちらの書類を提出すれば控除を受けられます。

  1. 個人が住宅ローン等を利用して、マイホームを新築、取得又は増改築等をする
  2. 所定の時期までに自己の居住の用に供した場合
  3. 一定の要件を満たす場合

これらを満たす場合、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、住宅借入金等特別控除として、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除できます。

本控除の適用を受ける場合、初年分は確定申告により控除を受ける必要がありますが、翌年分以降は、年末調整でこの特別控除が適用を受けられるようになります。

この場合、本申告書の添付書類として、給与所得者の住所地の税務署長が発行した「住宅借入金等特別控除証明書」と、借入先の金融機関が発行した「借入金の年末残高等証明書」の2つが必要となりますので、申告書の提出に先立ってこれらの証明書を入手しておきましょう。

年末調整時に「税務署に提出する書類」

次の4つの書類は所轄税務署に提出するものです。

(5)給与所得の源泉徴収票

現在、合計60ある法定調書(所得税法等の規定により税務署に提出すべき書類)のひとつで、年末調整時に合計2通作成し、1通は税務署へ、1通は給与所得者へ交付されるものです。給与所得者に支払った1年分の給与の詳細とともに、所得税や社会保険料なども記載されています。

令和2年分については、所得金額調整控除の創設、基礎控除の見直し、寡婦控除・ひとり親控除の見直し等により、項目名や記載内容に一部変更がなされていますので、ご注意ください。

(6)支払調書

「源泉徴収票」は、給与所得者に対し会社(給与支払者)が発行するものですが、「支払調書」は、給与以外の報酬・手数料・使用料等の支払者がその額やそれに対する源泉徴収税額を証明する書類です。

源泉徴収票とよく似ていますが、給与かそれ以外か、つまり、支払側と受領側に雇用関係があれば源泉徴収票、雇用関係がなければ支払調書となるのが一般的です。よって、源泉徴収票は給与所得を証するのに対し、支払調書は事業所得や雑所得を証することになります。

(7)給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(納付書)

会社が給与所得者(従業員)に支払った給与・退職手当のほか、税理士・弁護士などへの報酬について源泉徴収した所得税等を申告・納付する際に使用します。主な記載内容は、俸給・給料、賞与、日雇労務者の賃金、退職手当、税理士等報酬、役員賞与の各事項について、それぞれ、支給年月、人員、支給額、税額といった項目が挙げられています。

なお、納付する税額がない場合であっても、本計算書を所轄の税務署に提出する必要があります。原則、給与や報酬を支払った翌月10日が提出期限となります。

(8)給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表

会社が支払った給与、退職手当、報酬・料金・契約金・賞金、不動産の使用料等、不動産等の譲受けの対価、不動産の売買・貸付あっせん手数料などの各事項について、合計人員、確定した支払金額及び源泉徴収税額をそれぞれ合計して記載した書類です。毎年、翌1月31日が提出期限となります。

年末調整時に「市区町村に提出する書類」

会社と所轄税務署以外に、市区町村にも提出しなければならない書類があり、これは1種類のみで、「給与支払報告書」が該当します。

(9)給与支払報告書

基本的な内容は前述した源泉徴収票と同じで、源泉徴収票の用紙の中には複写式で給与支払報告書も同時に作成できるものもありますが、各々の制度的な根拠が異なります。

源泉徴収票は、国税である所得税に関する書類であり、所轄の税務署に提出しますが、給与支払報告書は、地方税である住民税のための書類であり、給与所得者の住む市区町村に提出することになります。

給与所得者の個々の年間金額を記載する「個人別明細書」と、区分ごとの合計人数等をまとめた「総括表」があります。

おわりに

年末調整の事務や関係書類の作成は、毎年のルーティンワークではありますが、ほぼ例外なく毎年の制度改正の影響を受け、控除の要件や記載方法が大なり小なり常に変更が加えられています。

小さなミスや誤解も、対象となる人数が多くなるとそれを訂正するのにも手間がかかってしまいます。段取り良く進めるために、日頃から法改正の情報等をキャッチしたり、年間スケジュールを立てたりして、事務の効率化に取り組んでいただければと思います。

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税理士 木所 正明

税理士、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。東京都及び茨城県つくば市に拠点をもつBuisiness Navigation Groupの税務セクションである「税理士法人ビジネスナビゲーション」の社員税理士として、法人・個人をあわせ約500社のクライアントに対して、税務申告、資金調達支援、事業計画書作成、事業承継対策、相続対策のアドバイスやサポートなどを行っている。
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