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「電子申請義務化」で対象となる手続き・届出とは?【労働保険編】

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こんにちは、社会保険労務士の飯田 弘和です。

2020年4月から、資本金が1億円を超える法人や相互会社等の特定の法人の事業所は、労働保険・社会保険に関する一部の手続きについて、電子申請で行うことが義務化されます。

労働保険関係の手続きで義務化されるのは、以下の届出になります。

  • 労働保険概算・確定保険料申告書・一般拠出金申告書
  • 労働保険増加概算保険料申告書
  • 雇用保険被保険者資格取得届
  • 雇用保険被保険者資格喪失届
  • 雇用保険被保険者転勤届
  • 高年齢雇用継続給付支給申請書
  • 育児休業給付支給申請書

前回の社会保険編に続き、これらの届出は、そもそもどのような書類なのか解説します。

「労働保険概算・確定保険料申告書・一般拠出金申告書」とは?

はじめに解説するのが、「労働保険概算・確定保険料申告書・一般拠出金申告書」です。

申告書の記入にあたって

出典:厚生労働省「平成31年度事業主の皆様へ(継続事業用)労働保険年度更新申告書の書き方」 ※画像クリックで拡大

この届出は、いわゆる「年度更新」の申告書です。

「労働保険」とは、労災保険と雇用保険のことをいい、前年度に使用したすべての労働者に支給された賃金総額をもとに労働保険料を算出し、毎年6月1日~7月10日までの間に申告します。

前年に概算保険料として前払いしている保険料と、年度更新で正しく計算した確定保険料とで差額の精算をします。

労働保険では、保険料を前払いで仮納付しておき、年度更新で保険料を確定して、仮納付保険料との精算を行います。また、ここで計算された確定保険料が、そのまま今年度分の保険料の仮納付額となります。この仮納付額を「概算保険料」といいます。

年度更新では、確定保険料の精算と、概算保険料の納付を行います。この時に、アスベスト健康被害の救済費用に充てるための「一般拠出金」も申告・納付します。

この年度更新の申告に使用するのが、「労働保険概算・確定保険料申告書・一般拠出金申告書」となります。

「労働保険増加概算保険料申告書」とは?

次に、「労働保険増加概算保険料申告書」です。

この申告の際には、前述の年度更新で用いた申告書と同一のものを用います

事業拡大等によって従業員数が大幅に増加した場合など、年度の途中において当年度の賃金総額の見込み額が当初申告の2倍を超えて増加し、且つ、その賃金総額によって概算保険料が13万円以上増加する場合に必要な届出です。

この届出書で申告し、増加した概算保険料を追加納付します。

雇用保険被保険者の「資格取得届」「資格喪失届」「転勤届」とは?

次に「雇用保険被保険者資格取得届」、「雇用保険被保険者資格喪失届」、「雇用保険被保険者転勤届」です。

農林水産業の一部事業を除き、労働者を一人でも雇用すれば、雇用保険の適用事業になります。

適用事業所に雇用される労働者は、1週間の所定労働時間が20時間未満である等の適用除外に該当しない限り、雇用保険の被保険者になります。

雇用保険の被保険者となる者を雇入れた際には、「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

雇用保険被保険者資格取得届

出典:e-Gov ※画像クリックで拡大

被保険者が退職した場合には、「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出が必要です。この場合、「離職証明書」も提出します。(本人が離職票不要の申出をしている場合には不要です。ただし、59歳以上の離職者には、必ず離職票の交付が必要です。)

雇用保険被保険者

出典:e-Gov ※画像クリックで拡大

なお転勤した場合には、「雇用保険被保険者転勤届」の提出が必要です。

雇用保険被保険者転勤届

出典:e-Gov ※画像クリックで拡大

「高年齢雇用継続給付支給申請書」とは?

次に「高年齢雇用継続給付支給申請書」です。

高年齢雇用継続給付支給申請書

出典:e-Gov ※画像クリックで拡大

60歳から65歳までの雇用継続を援助・促進する目的で創設された「高年齢雇用継続給付」というものがあります。

これは、60歳以上65歳未満の被保険者が、原則として、60歳時点に比べて賃金が75%未満に低下した場合に、給付金が支給されるものです。

受給には、被保険者期間が通算で5年以上必要です。

この高年齢雇用継続給付には、60歳到達時点で雇用保険被保険者である者等に対して給付される「高年齢雇用継続基本給付金」と、失業保険(基本手当)等を受給中に再就職した人を対象にした「高年齢再就職給付金」があります。

これらの給付金の支給申請については、

【60歳到達日において被保険者であった場合】
→「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」と「高年齢雇用継続給付資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」の届出が必要です。

【60歳到達日において被保険者でない者が、失業保険(基本手当や再就職手当)等を受給せずに再就職して被保険者となった場合】
→「雇用保険被保険者離職票」または「雇用保険受給資格者証」と、「高年齢雇用継続給付資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」の届出が必要です。

【60歳以上65歳未満での再就職により被保険者になった者で、再就職前に失業保険(基本手当)等の支給を受け、支給残日数が100日以上ある場合】
→「高年齢雇用継続給付資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書」の届出が必要です。

2回目以降の支給申請については、どの場合も、「高年齢雇用継続給付支給申請書」の届出を行います。

「育児休業給付支給申請」とは?

最後に、「育児休業給付支給申請」です。

育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書

被保険者が法定の育児休業を取得し、育児休業中の賃金が休業開始時の80%未満に低下した等の一定の要件を満たした場合には、育児休業給付が支給されます。

育児休業を開始したときには、「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書(育児)」と、「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」の届出をします。

そして、支給申請時には、「育児休業給付金支給申請書」を届出ます。

おわりに

今回お話ししてきた中で、高年齢雇用継続給付支給申請や育児休業給付支給申請については、給付金として従業員が受け取るお金にかかわる申請です。

それだけに、会社の申請ミスや説明不足によって、従業員とのトラブルに発展しやすい申請でもあります。

支給要件や申請期限、支給金額などは、必ずハローワークで確認しておくようにしてください。

(了)

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