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災害による勤務不可時に、従業員の勤怠や給与の扱いはどうなる?

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こんにちは。社会保険労務士の吉田です。

私たちが暮らす日本は、豊かな自然に恵まれている一方、世界的に見ても自然災害が多い国です。また近年、局地的な豪雨による水害や地震、台風に伴う被害が頻発しています。

こういった自然災害はライフラインや交通機関に大きな影響を及ぼします。

今回は、このような自然災害によって勤務できなかった場合、勤怠や給与、交通費などはどのように扱うべきなのかについて解説します。

勤務先へ出社が基本の場合

テレワークが続きそうな場合、光熱費や通信費等はどうなる?

まず1つ目のケースとして、勤務先への出社が基本の方が、災害の影響で出社できず、テレワークが続きそうな場合です。

この場合、自宅勤務中の光熱費や通信費、交通費の取り扱いはどうなるでしょうか。近年、新型コロナウイルス感染症によるテレワークの長期化により、実際に同じ状況に直面した方も多いと思います。

こういったケースでは、法律などで明確に定められていませんので、原則として就業規則等の定めによります

例えば、在宅勤務に必要な費用を会社が負担する場合、実費負担もしくは、テレワーク手当といった項目で一定額を支給する方法があります。

また交通費についても、就業規則等において「通勤手当は、通勤日数や実態に応じて支給する」などと定めている場合は、テレワーク等で実際の通勤のための交通費が発生していなければ、日数分の減額が可能です。

一方、就業規則等において、そのような定めがない場合、会社は通勤手当を全額支払わなければならない可能性が高くなります

テレワークが基本の場合

テレワークはできないが出社はできる場合、交通費はどう精算する?

少々特殊な2つ目のケース。普段はテレワークを基本としているものの、

  • 災害による停電や通信障害の影響でテレワーク不可
  • ただし、出社は可能

という場合です。

この場合、交通費は会社に支払い義務がありませんので、どのように就業規則等に定めているかによります。

このような臨時的な出社に対する交通費の支給方法としては、「実際に通勤に要した実費を支給する」などと定めておくのがよいでしょう。

全社共通の取り扱い

出社もテレワークもできない場合、勤怠や給与の取り扱いはどうなる?

3つ目のケースは、従業員が災害により交通インフラが遮断され出社できず、さらに停電や通信障害の影響でテレワークもできないケースです。この場合、原則、従業員は欠勤扱いとなり、会社は賃金や休業手当を払う必要はありません。

ただし、従業員から有給休暇(以下、有給)取得の申し出があった場合は、有給で処理し、賃金を支払う必要があります。

会社が休業した場合、休業手当や有給の取り扱いはどうなる? 

4つ目のケースは、従業員は出社やテレワークが可能だが、会社が災害の影響で通常業務ができず、休業となった場合です。

この休業が不可抗力であった場合、つまり災害により会社の施設や設備が被害を受けている、取引先や交通インフラが災害の影響で被害を受け、業務に必要な物資などが届かない状況では、従業員を欠勤扱いとし、会社は賃金や休業手当を払わなくても問題はありません

一方、勤務しようと思えばできるが会社判断で休業した場合、従業員に休業手当の支払いが必要となるケースもあります。例えば接客業などで災害の影響で客足が遠のくことが予想され、会社判断で休業した場合です。

なお、このケースの有給取得については、

  • 会社から休業命令前の有給取得の申し出
    • 有給として処理する必要がある
  • 会社から休業命令後の有給取得の申し出
    • 会社は拒否することが可能

という取り扱いです。

そのほか、人事・総務として対策しておくべき備え

いつ起きてもおかしくない巨大地震や大規模災害に備え、会社は災害が発生した場合の対応ルールを明確にし、従業員に周知しておくことが重要です。

具体的には、

  •  安全な出社方法があるか
  •  テレワークは可能か
  •  職務可能な健康状態か
  •  家族の安全に重大な懸念事項はないか

などを総合的に判断して、勤務可能かどうかの基準づくり、いざという時の安否確認手段や把握すべき情報などを決めておきましょう。安否確認システムを導入している企業も増えています。

また、オフィスの防災対策として避難ルートの確認や、水・食料など備蓄物の準備、必要最低限の救命用具や医薬品の確保などもかかせません。 

さいごに

会社には、従業員に対し安全に働ける職場環境の提供と配慮を行う安全配慮義務が課されています。これは自然災害に対しても例外ではありません。

災害発生に備え、十分な対策を普段から講じておくことが大切です。

また、災害時の出社に、少しでも従業員に危険がともなうと判断した場合は、テレワークへの切り替えや、時として、休業手当を払ってでも会社都合の休業扱いとして、自宅待機といった指示を出すことも必要でしょう。

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