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トイレすら勝手に行けない? 社員の離席を「許可制」にするのは許されるか

2017.07.21 ライター: 弁護士 浅野 英之

こんにちは。浅野総合法律事務所 代表弁護士・浅野 英之です。

以前、SmartHR mag. で公開した「「タバコ休憩はずるい!」喫煙者と非喫煙者とで「不公平感のない職場環境」を整えるには?」が反響を呼びましたが、タバコ休憩への関心は大きいようです。

そもそも従業員には労働時間の間は、会社の仕事に専念しなくてはならない、といういわゆる「職務専念義務」があります。会社は、従業員に職務に専念してもらう代わりに従業員に対して賃金を支払うのです。

中には「離席の許可制」といって従業員が自席を離れる場合には、上司などの許可を必要とする制度をルールとしている会社が存在します。

一方トイレに行く際など、上司の許可を必要とする銀行があるなどの話も、耳にしたことがあるかもしれません。

トイレに行きたくなるのは生理現象であり致し方ない側面もあります。そのトイレを許可制にするなどの厳しい管理は果たして許されるのでしょうか?

今回は、トイレでの離席をはじめとした「離席の許可制」について、ケース別に妥当性を考察します。

「職務専念義務」には限界がある

確かに、従業員には「職務専念義務」があり、この決まりは、従業員が守らなければならない強い決まりです。

しかし、厳しすぎる「職務専念義務」は、違法となる恐れがあります。

例えば、トイレのために離席する場合などまで離席不許可、というような許可制は、違法となる可能性があります。

トイレは、生理現象であり、ごく通常の頻度のトイレ休憩である限り、「不許可」とすることは非常識だと考えられるからです。

「職務専念義務」には、法律上も事実上も、一定の限界があることを覚えておきましょう。

「離席理由別」にみる許可制の是非

次に、離席理由ごとに、「許可制」とすることが違法となるかどうかを踏まえ、「問題ないか」あるいは「やめておいたほうがよいか」について、解説していきます。

(1)「トイレに行くため」の離席許可制

前述のように、「トイレに行きたい。」という要求は、人間が生きていく上で避けては通れない生理現象です。

したがって、「トイレ休憩」のための離席を制限することは違法性が強いので、「許可制」とするルールは、やめておくのがよいでしょう。

もっとも、トイレ休憩が、常識を逸した長時間であったり、多数回の場合には、その従業員に対して注意指導をした上で、監督を徹底する、という対応を検討してみましょう。

(2)「タバコを吸うため」の離席

確かに、喫煙者にとってみれば、タバコを吸いたくなるのはトイレと同様に生理現象のように感じられますが、一方非喫煙者にとっては、嗜好品に過ぎず不公平感があります。

そのため、「タバコ休憩」はトイレと比較して管理を徹底することは、やむを得ない措置であるといえます。

なお、株式会社SmartHRのように、喫煙者・非喫煙者の双方が不公平感なく働けるよう「たばこ吸わない手当」(非喫煙手当)などの制度を設けている会社もありますので、許可制で抑制するだけでなくこのような対応も有効といえそうです。

(3)「私用電話をするため」の離席

「私用電話」は、原則として許されないものと考えてよいでしょう。

もっとも、日中に対応せざるを得ない緊急の「私用電話」も含め全ての「私用電話」を禁止とすることは、不適切です。例えば、家族の急病の連絡を受けたりや宅配便の連絡を受けるような場合です。

線引をした上で、やむを得ない場合は許可するなど、柔軟な仕組みが望ましいといえます。

(4)「飲み物を買いに行くため」の離席

水分を補給することはどうでしょう? のどが渇く、というのも、トイレと同様に生理現象です。

もっとも、飲み物の購入は、休憩中や出勤前に購入することが可能です。

したがって、飲み物購入だけを理由とする離席であれば、「許可制」とすることが許されることもあります。

(5)「ランチに行くため」の離席

ランチのための昼休憩すら自由にとることができず、「許可制」にした場合は典型的な「ブラック企業」として批判を受ける可能性が高いでしょう。

それだけではありません。形式的には休憩時間とされていても、実際には休憩がとれないとなれば、労働時間が長くなり、残業代請求を受ける恐れもあります。

必要以上に離席が多い従業員への対処

会社としては、必要以上に離席する従業員を放置しておくことも問題でしょう。

そこで、そのような従業員へ対応する場合には、離席の「許可制」ではなく、別の対応が必要となります。

まず、離席理由を確認し、仮にその理由が虚偽であった場合には、注意指導や懲戒処分を行う、それでも虚偽が改善されない場合には退職勧奨もやむなしと考えてよいでしょう。

 

以上のように、業務に集中してほしいからと、離席の許可制を敷くことも可能ではありますが、離席したい理由によっては、ブラック企業とのあらぬ悪評を招いたり、場合によっては違法となりかねないケースもあります。

そうでなくとも、規則でガチガチに縛ってしまっては、窮屈で働きにくい環境になってしまいかねません。

許可制にするとしても、目的に沿い、必要の範囲内で柔軟に対応できるよう充分に吟味すべきでしょう。

弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。企業側労働問題を得意とする石嵜・山中総合法律事務所にて、数多くの労働相談対応、顧問先企業の労務管理を行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い弁護士」として、企業側だけでなく労働者側の相談にも対応。労働問題のスペシャリストとして活動中。特に成長中のベンチャー企業、中小企業の人事労務のコンサルティングに定評がある。 【企業向けメディア】ビズベン!企業の労働問題解決ナビ
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