従業員も要チェック! 令和2年の年末調整「所得金額調整控除」の注意ポイント

2020.10.05 ライター: 大塚 健斗

こんにちは、SmartHR 人事労務 研究所の大塚です。

先日公開した『年末調整シーズン目前!「令和2年度 税制改正」に伴う6つの変更ポイント』にも記載した、2020年の年末調整から新設される「所得金額調整控除」はかなり複雑な内容のため、対応にあたっても困難を極めることが予想されます。

そこで今回は、従業員側と担当者側とに分けて、要注意ポイントを深掘りして解説します。

従業員向けの注意ポイント

まずは、年末調整を実施するにあたっての、従業員側の注意点について解説します。

夫婦共働きでいずれも年収850万円を超えるケースなどで影響する内容になっておりますので、該当する方は特にご注意ください!

「他の所得者が控除を受ける扶養親族」

令和2年の改正から、「扶養親族」に対する定義が追加されました。これまで「扶養親族がいる」とは扶養控除が適用される親族を扶養している人のみを指していましたが、扶養控除が適用されていない人でも「扶養親族がいる」という概念が登場したんです。文章で説明するとわかりづらいので、図解してみました。

※ 便宜上、「定義が追加された」と記載しておりますが、法的な「扶養親族」の定義は従来から変更はないようです

上記の図を例にすると、これまでは夫のみが「扶養親族がいる」とされていましたが、令和2年からは妻も「扶養親族がいる」状態となるんです。ただし、扶養控除が適用されるのはこれまでどおり夫のみとなります。

では、なぜ「妻にも扶養親族がいる」定義になったのかというと、「所得金額調整控除」の新設が影響してのものとなります。

給与収入850万円を超えている場合、妻は所得金額調整控除申告書欄の扶養親族等の欄に子供の名前等を申告することで、所得金額調整控除を受けられるんです。これまでの扶養親族の定義で考えると、妻はこの欄に子供の名前を書くという発想がなかったと思います。しかし、扶養親族の定義が加わったことで、この欄に記入できるようになったのです。

夫婦ともに給与収入が850万円を超える方は、新しい扶養親族の定義を覚えておきましょう。

▲ 妻の所得金額調整控除申告書 記載例

担当者向けの注意ポイント

つづいて、担当者側の注意点について解説します。

前職からの給与収入の扱い

所得金額調整控除の計算において、前職からの給与収入は以下のとおり扱います。

  • 前職から甲欄として受けた給与収入は対象に含めて計算する

所得金額調整控除申告書の裏面には、「主たる給与の支払者が主たる給与の収入金額を基に計算する」旨が記載されており、前職分の扱いが曖昧と感じておりました。一方、先日国税庁より公開された「令和2年分 年末調整のしかた」では「年末調整の対象となる給与の総額」と記載されているため、前職からの給与収入の扱いの範囲が明確になったと言えます。

「合計所得金額」に所得金額調整控除を反映

各申告書の「合計所得金額」によって、以下の控除が対象となるか判定されるのですが、なんとこの合計所得金額には、所得金額調整控除を反映する必要があるんです。
※ この「合計所得金額」は、以下控除などの適用判定に用います。

  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 寡婦・ひとり親控除
  • (源泉控除対象配偶者)

所得金額調整控除の申告書欄には「所得金額調整控除の額については給与の支払者が計算しますので、この申告書に所得金額調整控除の額を記載する欄はありません。」と記載があります。

誰もが「従業員は計算しなくてもよい」としか読み解けないと思うのですが、実は制度としては、各申告書に記載する合計所得金額は、計算した所得金額調整控除の額を差し引いた額を申告することになっているんです。給与収入額から給与所得控除額を計算するのも大変なのに、さらに所得金額調整控除も計算して差し引いてくださいという、不思議な内容となっています。

申告書には「計算しなくてもよい」と書いてあるのに実は計算が必要……。従業員だけでなく、人事労務担当者でもこの改正を理解している方は少ないと推測されます。そのぐらい、今年度の改正は難解です。

▼ 補足
厳密にいうと、合計所得見積額には確定申告でのみ適用可能な以下の所得控除額も含めるというルールとなっています。

  • 所得金額調整控除(年金等)
  • 特定支出控除

従業員が確定申告をするかどうかは、企業側が把握するのは少し難しいかと思います。これらは、従業員が確定申告を行うことでしっかりと精算されますので、該当者にはしっかりと確定申告してもらうように周知すると良いでしょう。

おわりに

色々と難しい今回の税制改正のなかでも、特に所得金額調整控除は複雑なので要注意。

今後、年末調整機能をもつクラウドソフト等を選ぶ際には、所得金額調整控除をはじめとした税制改正に対応しているかが大きなポイントになりそうです。

いよいよ、2020年の年末調整が始まります。税制改正内容をおさらいして、乗り越えていきましょう!

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大塚 健斗

株式会社SmartHR 人事労務 研究所所属。ユーザ系SI企業にて人事給与システムおよび給与業務のアウトソーシングを担当する事業に従事。主にシステムの導入コンサルティングを担当し、従業員数3万人を超える大企業や給与業務フルBPOを受託する企業など、20社以上を担当。2020年4月より、SmartHRに参画。
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