労務担当者必見! 「改正労働基準法に関するQ&A」実務上注意すべき項目を解説


こんにちは。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタントの篠原 宏治です。

昨年6月に働き方改革関連法が成立したことを受けて改正された労働基準法が、本日2019年4月1日をもってついに施行されます。

この施行に先立ち、厚生労働省労働基準局は3月上旬に、6項目94個のQ&Aを掲載した「改正労働基準法に関するQ&A」を同省HPで公開しました。内訳は下表のとおりです。

今回は、労務担当者が実務上知っておくべきQ&Aをいくつかピックアップして抜粋し、解説します。

「フレックスタイム制」に関するQ&A

質問内容【Q 1-3】【Q 1-4】

【Q 1-3】

大企業(2023 年 4 月 1 日以降は、中小事業主も含む。)では、月 60 時間を超える時間外労働に対しては5割以上の率で計算した割増賃金を支払う必要がありますが、清算期間が 1 か月を超えるフレックスタイム制に対してはどのように適用しますか。

【Q 1-4】

フレックスタイム制の清算期間の延長とともに、時間外労働の上限規制も施行されますが、時間外労働の上限規制のうち、時間外労働と休日労働の合計で、単月 100 時間未満(法第 36 条第 6 項第 2 号)、複数月平均 80 時間以内(法第 36 条第 6 項第 3 号)の要件は、清算期間が 1 か月を超えるフレックスタイム制に対してはどのように適用されますか。

解説【Q 1-3】【Q 1-4】

3ヶ月の清算期間を定めた場合、1ヶ月目と2ヶ月目は「週平均50時間を超えた時間」のみが当月の時間外労働として取り扱われますが、最終月(3ヵ月目)は「週平均50時間を超えた時間と清算期間を通じて週平均40時間を超えた時間の合計時間」が時間外労働として取り扱われます。

つまり、1~2ヶ月目に時間外労働とされなかった時間(週平均40時間を超え50時間以下の時間)は最終月の時間外労働に算入されることになります。その結果、最終月の時間外労働が月60時間を超えた場合には5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならず、さらに月100時間以上の場合は法違反として罰則に処せられます。

例えば、毎月30時間の時間外労働を行っていた場合、従来の1ヶ月の清算期間であれば月ごとに30時間の時間外労働として取り扱われます。

しかし、同じ毎月30時間の時間外労働であっても、3ヶ月の清算期間を定めたときは、1〜2ヶ月目は時間外労働を行っていない(週平均50時間を超えていない)ものとして取り扱われる一方、最終月は90時間(清算期間を通じて週平均40時間を超えた時間)の時間外労働を行ったものとして取り扱われます。その結果、60時間を超える30時間について5割の率で割増賃金を支払う義務が生じます。

月をまたいだ繁閑の調整によって、清算期間中の総労働時間を短くすることができる場合は3ヶ月のフレックスタイム制を導入メリットが大きいですが、総労働時間が変わらないのであれば時間外労働の計上を最終月に繰り延べるだけで、場合によっては賃金負担が増加することに注意が必要です。

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「時間外労働の上限規制」に関するQ&A解説

質問内容【Q 2-24】

時間外労働と休日労働の合計が、2~6か月間のいずれの平均でも月80 時間以内とされていますが、この2~6か月は、36 協定の対象期間となる1年間についてのみ計算すればよいのでしょうか。

解説【Q 2-24】

時間外労働と休日労働の合計は2~6ヶ月のいずれの平均で月 80 時間以内とされましたが、この「2~6ヶ月平均」は36協定の対象期間にかかかわらず計算が必要です。

従来から定められている1年間の限度時間(年360時間)は、36協定で対象期間として定めた1年間について適用されます。1/1~12/31の1年間を対象期間として定めたのであれば、当該期間で限度時間を超えていないかを確認すればよく、それ以外の1年間(2/1~1/31など)については問題となりません。次の36協定を締結したときは一旦リセットされて新たに計算を開始します。

一方、月平均80時間以内は、36協定に関係なく超えることができない上限時間であり、どの2~6ヶ月を平均しても80時間を超えることがないよう確認が求められます。

36協定の対象期間が終了してもリセットされることはないため、前後の36協定の対象期間をまたぐ2~6ヶ月についても計算する必要があります。

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質問内容【Q 2-40】

労働者派遣事業における 36 協定について、派遣元が中小企業で、2019年4月1日以降に大企業にも中小企業にも労働者を派遣する場合、いずれの様式を用いればよいでしょうか。

解説【Q 2-40】

派遣業以外の会社においても、一部労働者を他の企業に派遣しているケースは少なくありません。

派遣労働者に関する36協定は「派遣元」の会社で締結・届出を行いますが、36協定の内容は「派遣先」の会社の規模や業種に基づいて決定します。

中小企業は時間外労働の上限規制について1年間の適用猶予期間が設けられましたが、派遣元会社が中小企業であっても、大企業に労働者を派遣する場合には、当該派遣労働者に適用する36協定は適用猶予が受けられず、法改正後の規定に従った36協定を締結して届け出なければなりません。

「年次有給休暇」に関するQ&A解説

質問内容【Q 3-3】【Q 3-11】

【Q 3-3】

使用者による時季指定(法第 39 条第7項)を半日単位や時間単位で行うことはできますか。

【Q 3-11】

労働者自らが半日単位又は時間単位で取得した年次有給休暇の日数分については、使用者が時季指定すべき年5日の年次有給休暇から控除することができますか。

解説【Q 3-3】【Q 3-11】

使用者の時季指定は、労働者の希望があった場合には、1日単位だけでなく半日単位で行うことが可能です。ただし、労働者から希望があった場合でも時間単位で時季指定を行うことはできません。

また、労働者本人からの請求によって付与した年次有給休暇は、半日単位で付与したものについては「0.5日」として年5日の日数から控除されますが、時間単位で付与したものは控除されません。

質問内容【Q 3-20】【Q 3-21】

【Q 3-20】

使用者が年次有給休暇の時季指定をするだけでは足りず、実際に取得させることまで必要なのでしょうか。

【Q 3-21】

年次有給休暇の取得を労働者本人が希望せず、使用者が時季指定を行っても休むことを拒否した場合には、使用者側の責任はどこまで問われるのでしょうか。

解説【Q 3-20】【Q 3-21】

使用者は、労働者に対して5日分の年次有給休暇の時季指定をしただけでは足りず、実際に5日取得させていなければ法違反として取り扱われます。

労働者が使用者の時季指定に従わずに出勤してきた場合であっても、その結果、年5日の年次有給休暇を取得させることができなかった場合に法違反に問われるのは使用者であるため、年5日の年次有給休暇を確実に取得させるための対策を講じることが求められます。

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「その他」に関するQ&A解説

質問内容【Q 4-2】

今回の改正により、電子メール等の送信により労働条件を明示することが可能となりますが、「電子メール等」には具体的にどのような方法が含まれますか。

解説【Q 4-2】

労働条件の明示は、従来、書面(労働条件通知書)の交付によって行わなければならないとされていましたが、今回の法改正により、FAXや電子メール等によって明示できるようになりました。

「電子メール等」には、

  1.  パソコン・携帯電話端末による E メール、Yahoo!メールや Gmail と いったウェブメールサービス
  2. +メッセージ等の RCS(リッチ・コミュニケーション・サービス)や、 SMS(ショート・メール・サービス)
  3.  LINE や Facebook 等の SNS メッセージ機能

が含まれ、現在一般的に使用されているコミュニケーションツールであればほとんど問題ないと考えられます。

ただし、ブログやホームページ等への書き込みなど、労働者本人以外の第3者が閲覧することができるものは「電子メール等」には含まれません。これらの方法による限りは、暗号付きファイルによって労働者本人のみが内容を確認できる場合であっても適法な通知方法とは認められないと解されます。

質問内容【Q 4-3】

電子メール等の送信によって労働条件を明示する場合、労働者が電子メールの受信を拒否しているケースも想定されますが、「送信」の具体的な考え方を教えてください。また、電子メール等の中には Gmail や LINE など、受信した内容が労働者本人の利用する通信端末機器自体には到達せず、メールサーバー等においてデータが管理される場合がありますが、その場合は、メールサーバー等に到達した時点で送信されたことになるのでしょうか。

解説【Q 4-3】

電子メール等の内容を労働者が確認しなかったとしても、労働者側のサーバーに到達していて内容を確認できる状態となった時点で労働条件の明示は行われたものと認められ、使用者は法違反の指摘を免れます。

ただ、労使トラブル防止の観点からは、労働者が通知を受け取ったことを使用者において確認することが望まれます。

受領確認の返信を労働者に求めるほか、オンライン上で雇用契約を締結できる、SmartHRのオンライン雇用契約機能等も有効な対策となるでしょう。

【関連記事】
入社時に必要な「労働条件通知書」と「雇用契約書」の違いとは?

おわりに

今回の労基法改正は法制定以来の70年ぶりの大改正とも言われており、特に時間外労働の上限規制と年次有給休暇については従来からの考え方が大きく変わる法改正となっています。

それに伴いQ&Aも過去に例を見ない大ボリュームとなっていますが、労務担当者の方には是非一通り目を通していただければと思います。
(了)

【編集部より】働き方改革関連法 必見コラム特集

働き方改革関連法 必見コラム特集
働き方改革関連法

【こんなことがわかります】ついに施行された「働き方改革関連法」。“70年ぶりの大改革”とも言われるこの改正法について、人事労務担当者が知るべき、必見コラム集をお届けします。

  • 働き方改革関連法の優先対応事項
  • 「時間外労働の罰則付き上限規制」の注意事項
  • 36協定や特別条項は見直すべきか
  • 「年次有給休暇管理簿」の作成・保存義務とは?
特定社会保険労務士 篠原 宏治

社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント代表。元労働基準監督官。特定社会保険労務士。労働基準監督官として残業代不払いや長時間労働などの労働問題に関する数多くの相談対応、監督指導(臨検)、強制捜査などを行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い社会保険労務士」として、労使双方からのご相談に対して実務的な助言やコンサルティングを行っています。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント
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