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「自爆営業」は違法?会社は従業員にどこまで成果を追求できるのか

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皆さんは「自爆営業」という言葉を耳にしたことはありますでしょうか?

以前から、従業員に対しキツい販売ノルマや売上ノルマを課し、達成できない場合には、自社商品を自腹で買い取ることを事実上強制するという問題がありましたが、終身雇用で会社への帰属意識が強く、その一方権利意識が低かったような時代は、それでも大きな問題となることは多くありませんでした。

しかし、ブラック企業や違法残業などの劣悪な労働環境が、ようやく社会的に問題視されるようになった昨今、「自爆営業」も無視できない問題のひとつとして挙げられます。

今回は「ノルマと自爆営業」について考えてみたいと思います。

「自爆営業」とは?

近年は、従業員に対する自社商品の買取強制のことを、俗に「自爆営業」と呼ばれたりしています。

従業員が自腹で営業ノルマ達成のために身銭を切る行為を、自爆になぞらえた比喩表現のようです。

郵便やアパレル業界、保険業界、コンビニ業界などで度々問題視され、過去にも、年賀状や「コンビニ恵方巻き」などの自腹買い取りや、自ら生命保険に加入する保険セールスなど、自爆営業の例を耳にしたことがある方も多いことでしょう。

売上・販売ノルマ設定自体は問題ない

それでは、「営業ノルマ」を課すことは可能なのでしょうか?

まず結論から述べると、営業の業務に携わる従業員に、一定の営業ノルマを課すこと自体は問題ありません。

従業員による買取も、基本的には従業員がお店の商品・サービスを購入するという労働契約とは別個独立の売買契約ですから、本人による最終的な購入の意思さえがあれば、基本的には有効です。

ただし、ノルマ不達成でも従業員に買取義務はない

しかし、当然、従業員は、業務上の営業ノルマ不達成があっても買取義務はなく、本来、拒否が可能です。

社員割引などの適用で、一般より有利に購入できるケースもありますので、明確な買取拒否の意思表示がないと、有効な売買契約と評価され、違法性が立証できないことにもなります。

一方、従業員が買取拒否の意思表示をしたのに、強制的に給与から代金相当額を差し引き、給与を減額することは、「賃金全額払いの原則」を定めた労働基準法24条1項に反し、違法となります。

「買取の強制性」が問題の争点となる

社員割引が適用されていても、明らかに一般的に不必要な過量または多額の購入がある場合は、「実質的には給与からの減額」であり、違法であると判断されることもあります。

一方、ノルマ達成による給与減額はなく、逆にノルマ達成者には昇進や昇給があるケースにおいて、営業成績を上げるために従業員の判断で、自主的に保険に加入したり、商品を買ったりすることもありますが、その場合は違法とみるのは難しいでしょう。

従業員が自らの判断で、成績向上のために自腹で自社の商品・サービスを購入することは問題ありませんが、会社側から意に反して買取を強制することは、労働基準法24条1項違反となりますので、注意が必要です。

いずれにせよ、直接的な買取強制のあるなしに関わらず、何かしらの「暗黙の了解」や「慣習」があるとしたら、遅かれ早かれ不満を招きかねません。

会社として、抜け道を探して上手くやり過ごすことより、ひとりひとりがより良い成果を出すために自発的に取り組めるよう、働きやすい環境や仕組みを整備することのほうが建設的といえるでしょう。

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