社労士が解説! HRニュース 2022年3月振り返りと2022年4月のポイント(入社手続きやパワハラ防止法・育児介護休業法の法改正の対応など)


4月は新入社員を迎え入れたり、事業年度が改まったりする会社も多く、労務管理上も節目の月となります。

また、長引くコロナ禍と雇用調整助成金の動向や、ロシア・ウクライナ戦争の影響など、不安要素も多い中、新事業年度を迎えることになり、人事労務担当者の方も忙しくしていらっしゃると思います。

2022年3月のトピックの振り返り

(1)雇用調整助成金の動向

2022年3月末までとされていた雇用調整助成金のコロナ特例が、目下の感染状況等を踏まえ、6月末まで延長されることが決まりました。

その一方で、2022年4月1日以降の休業に対しては、審査の厳格化も発表されています。

具体的には、以下の3点です。

1. 業況特例における業況の確認を毎回(判定基礎期間(1ヶ月単位)ごと)に実施

雇用調整助成金の支給額は段階的に縮小されていますが、業況特例(売上高等の生産指標が対前年または対前々年比で30%以上減少)が適用されると、助成率や日額上限が優遇されます(原則は助成率9/10,日額上限9,000円のところ、助成率10/10,日額上限15,000円)。

3月31日までは、一度業況特例の要件を満たせば、次回申請以降も業況特例が継続的に適用されていました。そのため、業績が回復した場合であっても引き続き業況特例の対象になるという不合理な事象が発生しており、今回のルール変更で、申請の都度、業況特例に該当しているかの審査が行われることになったのです。

2. 最新の賃金総額(令和3年度の確定保険料)から平均賃金額を計算

雇用調整助成金の1人1日当たりの支給額の根拠となる平均賃金額は、初回申請時に算定したものを2回目以降の申請時も利用するルールに従来はなっていましたが、雇用調整助成金のコロナ特例が長期にわたって実施されていることを鑑み、最新の賃金総額(令和3年度の確定保険料の計算に用いた賃金総額等)にもとづいて再計算されることとなりました。

3. 休業対象労働者を確認できる書類および休業手当の支払いが確認できる書類の提出

判定基礎期間の初日において、雇用保険の適用が1年未満等、一定の要件に該当する事業主が雇用調整助成金を申請する場合に限られますが、休業従業員の住民票記載事項証明書や会社の通帳、所得税徴収高計算書等、従業員の実在や休業手当の支払事実を確認するための追加書類が必要となりました。

また、3月22日に公開された、厚生労働省の雇用調整助成金のリーフレットには下記のような強いトーンでの警告文が掲載され、これまでは審査のスピードを重視して支給決定をしていたところ、今後は、不正受給の取り締まり強化にも力を入れていく方針のようです。

不正受給への対応を厳格化します

不正受給を行った事業所名等の積極的な公表、予告なしの現地調査のほか、捜査機関との連携強化を行っています。不正受給は、刑法第246条の詐欺罪等に問われる可能性があります

(参考)令和4年6月までの雇用調整助成金の特例措置等について|厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク(PDF)

(2)ロシア・ウクライナ戦争の影響

ロシア・ウクライナの戦争は世界中に衝撃を与えていますが、我が国の企業活動に対しても影響を無視することはできません。

ロシアやウクライナで直接の事業活動を行っている企業は多くはないかもしれませんが、間接的な影響は日に日に大きくなっています。

1. ガソリン価格の上昇

まず、ガソリン価格の上昇です。マイカー通勤を認めている会社では、「通勤距離×ガソリン単価÷燃費」のような計算式で通勤手当を支給しているケースが多いと思います。目下のガソリン価格の急騰を受け、通勤手当の計算上のガソリン単価を見直すか否かや、戦争の動向等により、今後さらにガソリン価格が上昇した場合にどのような対応を取るかの検討をしておく必要があるでしょう。

2. 海外出張・駐在

次に、海外出張・駐在です。ロシア・ウクライナ戦争当事者国への出張を控えることは当然ですが、欧州方面への出張・駐在にはとくに注意が必要です。

現時点では欧州各国はウクライナに対する間接的な支援や、ロシアに対する経済制裁に留まり、ロシアとの開戦には発展していません。しかし、状況は予断を許しませんので、万が一、社員の出張先・駐在先の国が交戦状態になった場合、社員はどのような行動を取れば良いか、あらかじめ情報収集やシミュレーションをしておくべきでしょう。

また、日本を発着する欧州行きの航空機は、通常、最短距離であるロシア上空を飛行しますが、現在は迂回ルートを取っているため、飛行時間が伸びています。エコノミー症候群への注意喚起や、現地到着後・帰国後のスケジュールの調整等により、出張をする社員の健康管理にも通常時以上に注意を払いたいものです。

3. サイバー攻撃への備え

加えて、心配しすぎかもしれませんが、サイバー攻撃にもできる限り備えておきたいものです。日本もロシアへ経済制裁を課していることや、ウクライナへ物資の支援を行っていること、ウクライナのゼレンスキー大統領の国会演説を受け入れたことなどを踏まえると、ロシアからは「敵国」に見えているはずです。直接の軍事攻撃を受ける可能性は、現時点で極めて低いにしても、サイバー攻撃を受ける可能性は想定をしておきたいものです。

セキュリティソフト導入、二段階認証、大文字小文字記号を混ぜたパスワード設定等、可能な限りハード面での対策をとること、および、不審なメールを開いたり、業務に関係のないサイトにアクセスしないよう、従業員に改めて注意喚起を徹底するといった人的側面での対策が2本柱となるのではないかと思います。

サイバー攻撃はロシアに限らず、いつどこから攻撃されるかわかりませんから、人事労務部門と情報システム部門が連携して、この機会に、自社にセキュリティ環境を再チェックし、必要に応じて強化しておきたいものです。

2022年4月のトピック

(1)新入社員の入社手続き

新卒者をはじめ、4月1日付で新入社員を迎え入れた会社さまは多いのではないかと思います。

新入社員との信頼関係を強固にするため、入社に伴う人事労務手続きは早めに行いましょう。

とくに社会保険の資格取得手続きは保険証の発行に直結しますので、最優先で進めたいものです。

確かに、教科書的には保険証の発行前に病院にかかっても、いったん10割自己負担し、後日、7割分の還付を受けることはできますので、本人が損をすることはありません。

しかし、いつまでも保険証が届かないと本人は不安になりますし、新卒者の場合は経済的余力がないことも多く、一時的とはいえ10割負担を立て替えるのはきついと思います。一刻も早く手続きを済ませ、本人の手に保険証が渡るようにしたいものです。

なお、こういった人事労務手続きを迅速に進めるためには、手作業では限界がありますので、SmartHRなどを用いてクラウド上で届出書類を自動作成し、そのままシームレスに電子申請できる体制を整えておくことが望ましいでしょう。

(2)パワハラ防止法の法改正を踏まえた実務運用

4月1日付でパワハラ防止法が中小企業にも適用開始となります。就業規則への反映はすでにお済みでしょうか?

こちら、まだ未反映の場合は早急に対応を進めてください。そして、就業規則への反映が済んでも、それで安心してはなりません。

一例として、パワハラ防止法では、ハラスメントに対する相談窓口の設置が義務付けられていますが、就業規則に定めるだけでなく、実際に窓口担当者を選任し、当該担当者に研修を行ったり、担当者名を社内周知したりするなどの実務対応が必要となります。

(3)育児介護休業法の法改正を踏まえた実務運用

育児介護休業法の4月1日付の改正に関しても、育児介護休業規程の改定だけでは不十分です。

今回の育児介護休業法の改定では、育児休業を取得しやすくするための社内環境の整備として、1. 育休等に関する社内研修の実施、2. 育休等の関する相談窓口の設置、3. 自社の育休等の取得事例の社内共有、4. 自社の育休等に対する取得促進方針の周知、の中から1つ以上の施策の実施が義務付けられています。改定された就業規則に自社が選択した施策が織り込まれているはずですので、実際に、これを実行する必要があります。

また、社員本人や配偶者が妊娠・出産したことを会社が把握した際、当該社員に育休等の取得意向を個別確認することも義務化されました。こちらも、どのような手法やフローで個別確認を行うかを具体的に社内マニュアル等に定め、対象者が発生した場合には、実施していく必要があります。

(4)有料職業紹介の事業報告書

有料職業紹介の免許を得ている会社さまのみの対応項目になりますが、毎年4月1日~4月30日の間に、「職業紹介事業報告書」を所轄の都道府県労働局へ提出する必要があります。

有料職業紹介の実績がなかった場合を含め、提出が必要となります。

提出をしなかった場合は、状況によっては、免許取消や事業停止等の重い処分を受けるリスクもありますので、失念をしないようにご注意ください。

人事・労務ホットな小話

不安要素・不確定要素の多い現在はとくにですが、人事労務部門は、アンテナを高く張り、社内の他の部門に先駆けて世の中の変化に気付き、リスクに敏感になり、自社にとって必要な対応を素早く展開することが必要だと思います。

たとえば、上述したガソリン代の高騰にしても、社員から「ガソリンが高くて、通勤手当ではまかないきれず苦しい」と指摘がある前に、会社側から先に「昨今のガソリン価格の急騰を踏まえ、マイカー通勤者のリッター単価を見直します」とアナウンスができれば、社員も「会社は私たちのことを考えてくれていて嬉しい。この会社なら安心して働ける」と感じ、会社に対する信頼感も高まるでしょう。

このような1つひとつの対応の積み重ねが、労使の信頼関係や従業員満足度につながっていくと思います。

まとめ

コロナ禍、ロシア・ウクライナ戦争、そして、21日には東北で震度6強の地震もあり、足元では明るいニュースが少ない状況が続いています。しかし、このような時だからこそ、会社の労務管理や福利厚生でできることはしっかりと行って、社員が安心して働ける会社作りを目指していきたいですね。

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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