1人目のバックオフィス社員が語る。成長スタートアップで管理部を垂直立ち上げする方法

2020.06.25 ライター: 大久保志朗

スタートアップやベンチャー企業において、従業員数増加に伴ってバックオフィス部門を新たに立ち上げるタイミングが訪れます。

しかし、バックオフィスの立ち上げは求められる専門性が高い上に、負担も大きく、さらには公開されているナレッジもそう多くはありません。そこで今回は、2017年11月に創業し、今では累計取引社数5,000を突破した急成長スタートアップ企業「キャディ株式会社」の経営管理本部立ち上げ時の話をお届けします。

「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」を運営する同社。

急成長する組織を支えるために、果たしてどのようにバックオフィスの組織化を進めていったのか。コーポレート責任者としてキャディ経営管理本部を立ち上げ、エンジニア採用を経て、現在はCOVID-19対策医療物資支援室 副室長を務めるなど、多岐にわたって活躍する柿澤 仁さんにお話を伺いました。

後編:「労務を明るく面白く。」キャディが挑む、製造業バックオフィスのアップデート

従業員の急増に伴い、経営管理本部を1人で立ち上げる

ーー はじめに、キャディの経営管理本部が立ち上がった背景を教えてください。

柿澤さん:弊社は2017年11月創業なのですが、自分が入社した2019年の2月、アルバイトを含めて20名ほどのタイミングで経営管理本部を立ち上げました。2018年12月にシリーズAで10.2億円の資金調達をし、急速にビジネスと組織を拡大していくフェーズに移ったことがきっかけです。

それまでは、経理はCEOの加藤、労務はCTOの小橋、販売管理は創業メンバーの幸松がやっているカオスな状況でした(笑)。「CADDi」は製造業のお客様が取引先で、請求書の量もかなり多いため、必然的に対応工数も多くなります。

そこで、私が専任担当として採用され、バックオフィス立ち上げに関わる業務を1人で担当することになりました。もともと公認会計士として働いていたので、経理や法務まわりは外部の人間として関わったことはありましたが、事業会社の中で仕組みを作るのはこれが初めて。バックオフィスメンバーも3人まで増え、少しずつ形ができてきた今だから言えますが、当時はとにかくがむしゃらな日々でしたね(笑)。

ーー 未経験領域もある中、1人での立ち上げとなれば大変ですよね……。そんな中、柿澤さんはどのように仕組みを作っていったのでしょうか?

柿澤さん:最初の2ヶ月で力を入れたのは、業務を引き継いで、力技で回すこと。属人的でもいいから、まずは目の前の業務を本気でやりました。そして、並行してバックオフィス領域に詳しい人からの情報収集にも進めることで、経営管理本部の「あるべき姿」を少しずつ固めていきました。

ーー 具体的にはどのような方法で情報収集をされていたのですか?

柿澤さん:Twitterをフル活用しましたね。他社のベンチャーで管理部や税理士として働いている方に話を聞きに行き、運用体制やおすすめのシステムなどをヒアリングし、自社に落とし込んで考える。そして、業務についての気づきや困ったポイントを、Twitterでひたすら発信する。そうすることで、また別の管理部の方とつながって、ヒアリングに行く循環が生まれました。「情報は発信した人のところに集まる」と、この経験を通じて強く感じましたね。

当時の柿澤さんのツイート

ーー まさに「足で情報を稼ぐ」スタイルですね! SNSを駆使して、自ら情報を集めに行く姿勢は立ち上げ時はとても大事でしょうね。

柿澤さん:その通りだと思います。その後、少しずつ経営管理本部の理想状態が固まってきたので、社内のバックオフィス改革のための計画を立てて、実践に移りました。

短期では、社内の必要な情報や従業員からの要望をGoogleスプレッドシートやSlackのチャンネルなどで整理しました。中長期では、データ蓄積や業務効率化のためのシステム導入のための要件整理などを進めていきました。あわせて、事業サイドの理解を深めるために、社内メンバーとのランチにもよく行きましたね。

まずは「あるべき姿」を定めて、実現のためにやるべきことを洗い出し、スケジュールと優先順位を決めてPDCAを回していく。人が増えたら、チームビルディングを並行して進める。ひたすらこの繰り返しでした。

立ち上げ時の課題と解決方法とは

ーー 立ち上げ時は、おそらく様々な困難に遭遇すると思います。具体的にどのようなポイントに苦労されて、どのようにPDCAを回してきたのですか?

柿澤さん:キャディの場合は、とにかく人がどんどん増えていったので、それに伴って次々と増える相談を捌いていくのが大変でしたね。経理や労務、法務、総務……それぞれの領域に関する質問が人の数×5分ずつくらい増えるので、40〜60人の頃は情報が大洪水を起こして氾濫し、もはやナイアガラの滝状態でした(笑)。

ーー 「ナイアガラの滝状態」……。具体的にはどのような工夫で対応していったのでしょうか。

柿澤さん:まず、リソースやナレッジの補填ために、新しいバックオフィスメンバーの採用を進めるように経営層に伝えていました。

次に効率化の観点では、オペレーションを回しながら、コツコツと仕組みを作っていきましたね。従業員の対応のみをやっていると、ほぼそれだけで1日が終わるので、一向に効率化が進みません。だからこそ、時間の使い方をコントロールして、仕組み作りのための時間を無理やり確保しました。

具体的には、従業員に「問い合わせがある方は、この時間帯に、この方法でしか受け付けません! 」と伝えて、従業員対応の時間やチャネルを絞るなどですね。従業員には申し訳なかったのですが、これによって、仕組み作りに時間を使えるようになりました。ランチなどでコミュニケーションをこまめに取っていたこともあってか、幸い、従業員からのクレームも多くはありませんでした。

もう一度バックオフィスを立ち上げるなら、必要な「人」と「システム」に投資する

ーー これまでの経験や知見を持ったまま、もしも、もう一度ゼロからキャディでの経営管理本部を立ち上げるとしたら、どのように挑みますか?

柿澤さん:まず、立ち上げ段階で雇用形態に関わらず、もう1名メンバーを増やしたいですね。感覚的に、1人バックオフィス体制で対応できるのは、従業員50人までが限界。人数が1名増えるだけでオペレーションがだいぶ楽になり、仕組み化を2倍、3倍の速さで進められるようになるので、ここは先行投資した方がいいと思います。

そして、使える予算にもよりますが、必要なシステムについては、情報が散乱する前に早めに導入していきたいですね。例えば、クラウド人事労務ソフトの「SmartHR」の雇用契約機能はすごく役立ちました。他には、顧客との契約周りで便利な「クラウドサイン」や、法務の契約書のレビューやバージョンチェックに便利な「Hubble」、あとは「会計freee」なども利用したいですね。

このあたりのシステムの全体像は、事業側の事務に詳しい人と早い段階でタッグを組んで、各部署ごとにどのように情報管理をしているのかをキャッチアップした上で、組み立てていきたいです。

バックオフィスの立ち上げは業界内でプレゼンスを築くチャンスに満ちている

ーー 最後になりますが、これからベンチャーでバックオフィスを立ち上げる方へメッセージをお願いします。

柿澤さん:バックオフィスの立ち上げってすごく大変ではあるのですが、かなりチャンスがある経験だと思っています。Twitterを見ても、バックオフィス立ち上げ経験のある人ってほとんど見当たりません。すなわち、良くも悪くも発信することで目立ちやすい職種といえるでしょう。

私も、人に出会って、Twitterでコツコツ発信を続けた結果、株式会社マネーフォワードさん主催の「MF Expence Expo 2019」で登壇する機会に恵まれました。このように、仕事と向き合う中でプレゼンスを築くことで、転職時の市場価値の向上や、自社だけでなく、業界を牽引できるポジションにたどりつける可能性も生まれます。このような動きは結果的に自社のPRにも繋がります。

ぜひともキャディ経営管理本部と一緒に、日本のバックオフィスを盛り上げていきましょう!

ーー 柿澤さん、ありがとうございました!

【編集後記】キャディの経営管理本部はここがスゴい!(前編)

インタビューを終えて、キャディ経営管理本部の「ここがスゴい!」と感じたポイントをまとめてみました。

  • 未経験な職域もある中、オペレーションと仕組みづくりを同時並行で進めた柿澤さんのプロジェクトマネジメント能力
  • 「情報は発信した人のところに集まる」という考えのもと、情報を足で稼ぎ、自社に留めずに積極的に発信していく姿勢
  • 「あるべき姿」から逆算し、短期での効率化のための工夫と、中長期でのシステム導入検討を両輪で進めた点

オペレーションを進めながら仕組みを整え、人に出会ってインプットし、学びを元に自社なりの発信を継続する。このサイクルを確実に回し続けることで「0→1」でバックオフィスを見事に立ち上げつつ、自社のPRにも還元しています。

事業も組織も急成長を見せるキャディ。その躍進を支える、経営管理本部の今後の展望について後編でお届けします。以下のリンクからあわせてお楽しみください。

「労務を明るく面白く。」キャディが挑む、製造業バックオフィスのアップデート

以下の記事では、キャディのSmartHRの導入時のエピソードを掘り下げてまとめています。

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大久保志朗

SmartHR Mag. 編集長。リラクゼーションサロン運営会社、デジタルマーケティング支援会社、フリーランスの編集者・ライターを経て2019年SmartHRにジョイン。カレーとインターネットをこよなく愛する。
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