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有能な社員の経歴詐称・・・「解雇」か「継続勤務」どう対処すべきか?

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入社時の経歴詐称が問題となり、会社が当該社員を懲戒解雇したが、社員が解雇無効を求めて裁判を起こしたという事例は少なからず存在します。

そして、どのような場合に懲戒解雇が有効で、どのような場合に無効になるのかということについても、裁判所の判例は概ね固まっています。

今回はこれとは逆に、経歴詐称が発覚したものの、入社後の勤務態度も真面目で能力があり、「引き続き勤務を続けてほしい」と経営者が考えた場合、何か問題になるようなことは無いのか? ということを考察してみます。

経歴詐称でも「経営者が許せば」継続勤務は可能

まず、大前提としては、会社の最終的な意思決定権を持っているのは経営者なので、経営者が「経歴詐称は水に流す」という判断をすれば、当該社員は勤務を続けることができます

むしろ、許された社員は「この恩に報いるために頑張らなければ」と、これまで以上に熱心に職務に取り組んでくれるかもしれません。

経営者としては、今現在、実績をしっかり出してくれている人ならば、よほど大きな経歴詐称で無い限り解雇をしたいとは考えないでしょう。

過去に裁判になった事例でも、学歴や職歴を偽ったことそれ自体よりも、「経験があります」とか「できます」とか言ったにもかかわらず、実は未経験であったり、非常低いスキルしか持っておらず、会社が採用時に当然できると期待していたことが、実際はほとんどできなかったということが引き金で、懲戒解雇に踏み切っているケースが多いです。

「企業秩序の維持」という問題

それでは、経営者が許せば全く問題が無いかというと、「企業秩序の維持」の観点からも慎重に検討しなければなりません。

より具体的には、以下3つの検討事項によって判断は分かれることでしょう。

(1)経歴詐称を誰が知ったのか

第1の検討事項は、当該社員の「経歴詐称」を誰が知ったのかということです。

もともと社員の学歴や職歴は秘密情報であるため、経歴詐称を知ったのが経営者だけであったり、人事責任者や直属の上司など、一部の社員だけであれば、それを公にせず、これまで通り勤務を続けてもらうという経営判断もできるでしょう。

しかし、全社員に知れ渡るような形で経歴詐称が発覚してしまった場合は、企業秩序を維持する観点から懲戒解雇を含む何らかの懲戒処分をせざるを得ないでしょう。

(2)社風や企業規模

第2の検討事項は、「社風」や「企業規模」です。

少人数で和気あいあいとした雰囲気の会社であれば、経歴詐称を全社員が知ることになってしまったような場合でも、社員集会などで経営者が「○○君に経歴詐称があったのは皆も知ってしまったと思うけど、○○君は今までも良くやってくれていたから、僕は解雇するつもりはない。君たちも理解してくれるよね。」と方針を説明をすることで、乗り切ることができる余地があるかもしれません。

しかし、大企業の場合は、様々な価値観を持った多数の人が働いているので、就業規則に基づいて公平・公正に管理していかなければ企業秩序の維持は図れません。

したがって、経営者が個人的には経歴詐称をした社員を残したいと思っても、経歴詐称の内容が重大なものであれば、就業規則に基づいて懲戒解雇という判断をせざるを得ないでしょう。

(3)コンプライアンス

第3の検討事項は、「コンプライアンス」です。

しばしば「教員免許を持っていなかったのに教員免許を偽造して教職に就いていた」というニュースが報じられることがありますが、このような場合は、どんなに評判の良い「先生」であったとしても懲戒免職にする他ありません。

他の例を挙げるならば、大型免許を偽造してバスやトラックの運転手をしていたとか、弁護士や税理士の資格を持っていないのに持っているフリをして専門家として雇用されていたということになると、社内秩序の維持のみならず、「違法行為」を行っていたという重大性を踏まえる必要があります。

いかに本人に同情すべき事情があったとしても、顧客や取引先に対する信用維持という観点も踏まえ、経営者は懲戒解雇という判断をしなければならないでしょう。

関係各位への影響も鑑みた慎重な判断を

経歴詐称が発覚しても、経営者の判断としては、直ちに懲戒解雇をする必要はありません。

しかしながら、経営者は当該社員に残ってもらうことのメリットと、他の社員や客先・取引先へのデメリットの影響を比較考量して、経歴詐称をした社員を許すか、懲戒解雇をするかの判断をしなければなりません。

あるいは、訓戒や出勤停止、降格といった懲戒解雇よりも軽い懲戒処分に留め、罰を与えることで社内秩序を保ちつつ、雇用を維持するという選択肢も、中間的な落としどころとして考えられるでしょう。

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