従業員が「痴漢で逮捕」された時、会社はどう対応すべき?
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最近話題の「痴漢」ですが、万が一社員が痴漢で逮捕された際、会社としてどのような対応ができ、あるいは対応すべきなのでしょうか。
「痴漢で逮捕された社員がいる会社として何かしらの対応をしたほうがよいのか?」「冤罪の可能性もあるが、どうしたらよいのか?」など、会社の経営者や担当責任者として注意すべきポイントについてご説明します。
「自白」か「冤罪主張」かで会社の対応は異なる
痴漢の被疑事実で従業員が逮捕されたとの情報が入った場合、「本人が自白して認めている場合」と「本人が否認し冤罪であることを主張している場合」とでは、会社がとるべき対応も若干異なります。
痴漢の被疑事実で逮捕された場合、従業員本人が警察署内からすぐに当番弁護士を呼ぶことができ、「本人が当番弁護士を依頼した当日中(遅くとも夜まで)」には、弁護士会から派遣されたその日の当番担当弁護士が、本人と留置所で接見することになっています。
弁護士を通し「従業員の本人の主張」を確認できる
本人が自白しているのか、冤罪を主張しているのかは、初期の段階では、「当番として接見した弁護士から従業員本人の主張」として伝え聞くことができます。
ただし、当番弁護士が接見しても、本人が弁護士を依頼しなかった場合や、会社には何も連絡しないでほしいと依頼した場合には、弁護士から会社には特に連絡がいかないこともあります。
本人が弁護士を選任しているにも関わらず、弁護士から会社に連絡がない場合は、本人から弁護士に対して連絡しないよう依頼した可能性も高いので、警察などを通じて担当弁護士の連絡先がわかったとしても、認否までは開示されない可能性もあります。
自白している場合、多くの会社では「懲戒事由」に該当する
本人が痴漢の被疑事実を自白し認めている場合、多くの会社では「就業規則上の刑罰法令違反として懲戒事由に該当する」と思われます。就業規則を確認して、可能な懲戒処分を選択肢として把握しておきましょう。
就業規則上の懲戒事由に該当する場合、情状により、実際にどこまで重い懲戒処分を課すかを検討することになります。
同種前科前歴の有無、勤務成績、勤務態度、示談の状況などを総合的に考慮するべきです。
ただし懲戒処分だけでなく「企業イメージ対策」も必要
従業員本人が自白している場合は、企業イメージや信用棄損とならないよう、「慎重な不祥事対応体制」を敷くなどの対応も必要です。
従業員が社会的な問題行動を起こしてしまった場合の対策を普段からある程度想定しておくとよいでしょう。
ただし、自白している場合でも、裁判で罰金を課されるなど有罪が確定するまでは「法律上の有罪」ではありませんので、懲戒処分の発動は、刑事処分が確定した後まで保留にしておくことも可能です。
「冤罪主張」の場合、懲戒処分の要否は刑事処分の確定後に
前述のように「最終的に裁判で有罪が確定するまでは無罪」として扱われますから、従業員が痴漢冤罪であることを主張している場合においても、簡単に懲戒処分を課してしまうと、後で懲戒処分の無効を争われる恐れがあります。
痴漢事件の場合、逮捕勾留中も接見禁止がつかないケースが多く、弁護士以外でも警察署で従業員本人と面会可能であることが多いです。
早期に会社の担当者が警察署で本人と直接面会し、話を聞き、刑事処分が確定後、「懲戒処分の要否」を決定すべきでしょう。
会社側の対応としては、裁判で事実関係が確定するまでは、確定的な懲戒処分を先行させにくい部分があり、会社のイメージや信用棄損とならないよう、会社の対応を予め社内で共有して確認しておくとよいと思います。