「男性育児休業」取得による会社へのメリットと、取得推進のポイント5つ
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女性の育休取得率は83.2%。対して、男性の育休取得率は、わずか5.14%。
厚生労働省では、「2020年までに男性の育休取得率13%を目指す」と目標を掲げ、様々な啓発活動を行っています。
その甲斐もあって、少しずつではありますが、男性の育休取得率は上がってきています。
そうはいっても、中小企業にとっては、育児休業で社員が1人現場を離れることで、一時的に人材不足に陥ってしまうようなケースも稀ではありません。そういった企業では「できれば取らないで欲しい」という本音もあるかもしれません。
今回は、「男性育児休業」取得による会社へのメリットと、取得推進のポイントを解説します。
「男性育児休業」取得による会社へのメリット4つ
会社が「男性育休」取得に取り組むことには、以下のようなメリットがあります。
(1)モチベーション・働きやすさの向上
たとえ一時的であっても仕事を離れ、家族中心の生活を送ることで、気分がリフレッシュされ、仕事への活力に繋がると考えられます。
また、合計特殊出生率が伸び悩む現代の日本において、「育児のしやすさ」は「働きやすさ」と関わる重要な要素のひとつといっても過言ではないでしょう。
従業員は、1人の社会人であるとともに、私人として様々なライフステージの変化を経験します。
今後、働きやすい会社へと変革していく上で、ひとつのアプローチとして、男性育児休業の推進等による「育児しやすい環境づくり」が求められていくのではないでしょうか。
(2)企業イメージの向上
男性の育休取得実績は、企業イメージの向上につながります。先述のように、「働きやすい会社かどうか」は採用をはじめ、様々な企業活動に影響します。
エン・ジャパンが『エン転職』会員の求職者に対して実施したアンケート(※)によると、「転職で重視すること」の上位に「待遇・福利厚生」がどちらも4位にランクインしています(20代:56.6% / 30代:44.7%)。特に20代においてはその傾向は顕著で、「仕事内容(2位:67.0%)」「年収(3位:66.5%)」と比べても遜色ない数字になっています。
「ワーク・ライフ・バランス」を重視する人が増えている中、それと関わりの深い男性育休取得率は、会社選びの1つの重要な指標と考えられます。
※ エン・ジャパン「月刊 人事のミカタ – 2017年版 転職者心理」
【調査回答者】『エン転職』の会員
【調査手法】インターネット調査
【サンプル数】761
【実査時期】2017年9月14日~2017年9月19日
(3)タスクマネジメント力強化 / 属人化の解消
育児休業に限らずですが、休暇取得にあたっては、当該従業員が担っていたタスクを他メンバーで分担して引き継ぐケースが一般的だと思います。
タスク分担には業務の棚卸しが必要です。もちろんその都度棚卸しするのではなく、日頃からタスクを見える化しておくことで、引き継ぎはよりスムーズになります。今後の育児休業取得推進には、恒常的な仕事の可視化・標準化が重要といえるでしょう。
副次的に、無駄な業務を減らしたり、不要不急の業務の優先度を見直したりすることにも繋がります。
また、先述のように、休暇中の社員のカバーリングは、分担強力体制が一般的です。そのため必然的に情報共有が必要になるため、コミュニケーションの活性化による、チームワーク向上が求められます。
このように、「業務の見える化」や「情報共有」によって、属人化を解消することで、従業員の休暇や休職にも対応可能な体制を築けます。
(4)長期的キャリア形成への好影響
労働者の方の中には、男性育児休業の取得によるキャリアへの影響を不安に思う方も多いことと思います。
また、そのキャリア観点の懸念から、従業員に勧めにくいという事業者の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、どうやらその心配はなさそうです。
厚生労働省の推進する「イクメンプロジェクト」の調査によると、「育児休業(休業)と長期的キャリア形成との関係」については、
・育児休業(休業)による長期的キャリア形成への影響は、「変らない」が最も高く52.0%
・「良い影響があった」は36.2%。30代よりも40代の方が「良い影響があった」と回答する割合が高い
とされており、「育児休業取得は、多くの場合長期的キャリア形成に影響はなく、むしろ良い影響を及ぼすケースも多い」と考えられます。
従業員のキャリアアップは
※ 厚生労働省雇用環境・均等局 委託事業「イクメン宣言者の宣言後行動リサーチ 報告書」
【調査回答者】男性20歳以上
【サンプル数】255
【調査手法】インターネット調査(イクメン宣言者に対する)
【調査地域】全国
【実査時期】2016年8月11日~9月2日
「男性育児休業」取得推進のポイント5つ
それでは、男性育児休業取得を推進するためには、どうすれば良いのでしょうか?
具体的なポイントを以下に5つ紹介します。
(1)経営者自らの「啓蒙活動」
何よりも、経営者がトップ自ら、「男性の育児休業取得を推進していく」というメッセージを繰り返し発していくことが重要です。
同時に、自ら取得をしていく姿勢を見せるのも効果的です。最近では、フリマアプリ「メルカリ」の小泉文明社長が2ヶ月の男性育休を取得したことで話題になりました。同社の男性育児休業取得率はなんと9割を超えているそうです。
そのほか、「会社として絶対に“パタハラ(パタニティー・ハラスメント)”を許さない」というメッセージも大切です。
このように、会社や経営トップの本気度が、会社を変える一番の原動力です。
(2)「男性育児休業」を取得しやすい雰囲気づくり
会社が推進していても、従業員の間で男性育休を取得していいのかがわからないなど、取得する側にも遠慮や躊躇が見られるのが現状です。
自発的な取得を待つだけではなく、「男性育休は取得して当たり前」「男性育休取得が必須」といった、取得しやすい雰囲気づくりも大切です。
(1)に挙げた、トップ自ら活用する姿勢も効果的といえるでしょう。
(3)キャリアロスをリカバリーできる制度整備
先述の通り、男性育休の取得が「長期的キャリア形成」に悪影響を及ぼす可能性は低い一方、万が一「育休を取得したことで昇進・キャリアアップに悪影響が出る」ような実態がある会社では、育休取得は進まないでしょう。
たとえ育休による一時的なキャリアロスがあったとしても、長期的にはリカバリーできるように、評価制度を改善したり、資格制度・研修制度を充実させたりすることも重要です。
(4)それぞれの会社にあった柔軟な育休制度
現行法で用意された育休制度では、使いづらいケースも多くあります。
従業員の実態に即し、それぞれの会社にあった柔軟な育休制度へとカスタマイズしていくことも重要です。
(5)「両立支援等助成金」の活用
「両立支援等助成金」として様々な助成金コースがあり、助成金受給が可能です。
例えば、「出生時両立支援コース」では、男性育休取得に際し、事業主に下記の助成金額を支給しており、会社の基盤として男性育休取得を推進しやすい体制づくりの一助となります。
詳細は、「平成30年度 両立支援等助成金のご案内」よりご覧ください。
おわりに
「男性育休取得」への取り組みは、今回取り上げたメリットだけでなく、これからの時代に求められる「ダイバーシティの実現」をはじめとした働き方改革に大きく結びついています。
中長期的に、会社の採用力、ひいては企業競争力に繋がることでしょう。
ぜひ、積極的に、「男性育児休業の取得推進」に取り組んでください。