人事労務管理を後回しにするとどうなる・・・? 想定される最悪のケースとは
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こんにちは。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。
「働き方改革元年」とも言われた2017年、多くの企業で人事労務管理の見直しを迫られているのではないでしょうか。
とはいえ、中々手がつけられていないという方はもちろん、何故見直していかなければならないのかと疑問をお持ちの方も、中にはいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、労務管理を後回しにすることで企業経営に与えかねない影響について解説いたします。
書類送検が企業経営に与える影響は罰金だけではない
残業代不払いや違法残業が繰り返されたり是正されない場合には、「労働基準法違反」として書類送検されます。
労働基準法違反に対する罰則の多くは「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」となっていて、「罰則が軽すぎる」と指摘されることも少なくありません。
人事労務管理の後回しには、罰金以外の多くのデメリットがある
しかし、書類送検が企業に与える影響は罰金だけではありません。その他にも多くのデメリットがあります。
会社事務所や代表者自宅などの家宅捜索や、金融機関や取引先に対して行われる捜査照会などによって周囲の信用を失い、金融機関や重要な取引先から融資や取引を停止されてしまうケースは珍しくありません。
刑の確定によって国や地方自治体から入札停止処分を受けることもあります。
また、2017年5月からは、厚生労働省が、書類送検した実名入り企業リストの、1年間の定期掲載をしました。このリストは通称「ブラック企業リスト」と呼ばれていて、ブラック企業のイメージにも直結することになります。
書類送検は、罰金支払いにとどまらず、企業経営に多大な支障を及ぼし得るものと捉えておかなければなりません。
人事労務管理の後回しによる、「損害賠償請求」事業存続を危ぶませかねない
過重労働やパワハラによって過労死、過労自殺、心身の健康障害などが生じた場合には、労働者やその遺族から「損害賠償」を請求されます。
過労死や過労自殺の場合、損害賠償額が数千万円から1億円に達することも少なくなく、多くの企業にとって、経営基盤を揺るがし、事業存続そのものを危ぶませかねないリスクになり得ます。
人事労務管理の後回しが原因の、イメージ悪化による影響
ブラック企業のイメージが持たれるのは、「ブラック企業リスト」に掲載された場合に限りません。
是正勧告、労災の申請や認定、損害賠償請求訴訟などのタイミングで、労働者や遺族や代理人弁護士などが記者会見を開き、ニュースで大きく取り上げられることでブラック企業のイメージにつながるケースも少なくありません。
内容の真偽はともかく、インターネットでの情報交換も盛んに行われています。
ブラック企業のイメージが定着することによる弊害は様々ありますが、一番懸念されるのが「人材確保への影響」です。
インターネットで「●●会社 ブラック」「●●会社 評判」等と検索して応募先を検討している求職者は少なくなく、募集をかけたとしても、申し込みを取り付けるまでのハードルは一気に高くなります。
また、ブラック企業のイメージは、現社員の離職率の増加にもつながります。
一度ブラック企業のイメージがついてしまうと、払拭することは困難です。仕事があるのにやってくれる労働者がおらず経営が立ち行かなく「人手不足倒産」に陥ることも、現実問題として捉えておかなければなりません。
人事労務管理(ヒト)を後回しにして企業の正常な成長はない
かねてから、「ヒト・モノ・カネ」は企業の3大経営資源(近年は「情報」を加えた4大経営資源)と呼ばれています。
日本の労働慣習や長年の不況による就職難により、これまでは労務管理(ヒト)を後回しにしても企業経営が成り立っていましたが、本来ならば、労務管理(ヒト)を後回しにして企業の正常な成長はあり得ません。
法律違反になるかどうかだけではなく、企業における人事労務の必要性や重要性を今一度見直していただければと思います。
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