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過去の労働訴訟に学ぶ「勤怠管理」の重要性

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こんにちは。弁護士の星野 宏明です。

このところ「働き方改革」への関心が強まり、各種メディアで頻繁に目にするようになりました。

例えば、週刊東洋経済 2017年7月1日号では「残業禁止時代 働き方改革のオモテと裏」という特集が組まれるなど、経営者や人事労務担当者はもちろん、ビジネスパーソンとして知っておくべき、ホットワードになっています。

この「働き方改革」実現に向け、喫緊の課題に「過重労働撲滅対策」などがありますが、その大前提として「勤怠管理の重要性」が挙げられます。

そこで今回は、過去の判例などをもとに、この「勤怠管理の重要性」について解説したいと思います。

勤怠管理がずさんになると「事実関係の立証」が困難に

従業員の出退勤を記録することは、後日の紛争を予防する上で極めて重要です。

勤怠管理が適切になされていない状況が常態化すると、時間の経過によって、従業員側・会社側いずれも事実関係を正確に立証することが、徐々に困難になっていきます

それだけなく、勤怠管理がずさんになると、従業員側から「適切に残業代が支払われていない」との疑いを持たれるなどのリスクもあります。

今一度「勤怠管理」が人事労務において最も重要な基本事項であることを認識し、徹底すべきと言えるでしょう。

ゴムノイナキ事件の例(大阪高裁平成17年12月1日判決)

次に、企業の勤怠管理の重要性を示す裁判例の1つとして、有名なゴムノイナキ事件を紹介します。

事件の争点

この事件では、タイムカード等による勤怠管理がなされていない事業所において、連日のように夜間残業をしていた従業員から未払残業代の請求がなされました。

出退勤記録もPCによるログアウト時間の推認も難しい事案だったようで、「従業員が最終バスの後に社用車借用願を連日のように出していた」、「本来必要な残業許可がない状態での残業が常態化し、会社も認識していた」などの事情がありました。

事件の判決

高裁判決では、一審判決よりも長い残業時間を、提出された証拠からある程度概括的に証拠の総合考慮として、「時間外労働時間」を認定しました。

特に判決では、「会社がタイムカード等による適切な時間管理をしていなかった事情を、労働者側に不利に扱うべきではない」ことを理由に、他の証拠を総合評価して、ある程度概括的に残業時間を推認し、認定したことが注目されます。

すなわち、会社側が適切なタイムカード管理などをしなかったことは、労働者に不利益に扱うことはできず、他の証拠からある程度の心証を得られれば、全く残業がなかったとは認定されず、ある程度概括的に労働者側の時間外労働を認定できる、ということです。

ゴムノイナキ事件に学ぶ「勤怠管理」の重要性

本来、民事裁判では、「未払残業代がある」と主張して請求する原告従業員側に残業時間の立証責任があります。

この原則自体は変わりませんが、ゴムノイナキ事件では、会社側が適切にタイムカード等による時間管理をしなかったことをもって、労働者側に不利益に扱うことはできないと示し、タイムカード等による直接の時間外労働の立証を従業員側ができていなくても、他の証拠の総合評価により、労働者側はある程度、残業時間についての立証責任を果たすことができることが示されました。

同判決でも、結局、労働者側が主張する残業時間の一部しか概括的に認容されておらず、労働者側の記憶が正しいとすれば、恐らくそれでも実際の残業時間よりはかなり少ない残業時間しか認容されていない可能性があります。

そもそも問題を起こさぬための予防と対策を

タイムカード等による管理をしなかったことから直接的に、労働者側の時間外労働の主張が全面的に認容されるわけではありません。

しかし、そもそもこのような問題を起こさぬためにも、普段から適切かつ正確に出退勤時間を管理し、過重労働気味の場合は即座に改善を図るなど、予防と対策を徹底したいもの。

例えば、最近では勤怠管理システムが多く登場しています。「SmartHR mag.」運営元のSmartHRにおいても、アマノビジネスソリューションズ株式会社と提携し、次世代の勤怠・人事労務システムを共同開発することを目的とした業務提携を行うようです。

こういったシステムやツールを導入することで効率化を図り、抜け漏れなく勤怠管理ができれば、会社にとって心強い味方になるでしょう。

ただし、あくまで手段のひとつですので、それ自体が目的とならぬよう注意し、会社として実現すべき目的に沿って管理するよう心がけたいですね。

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