【社労士解説つき】2022年人事労務向け法改正&実務対応カレンダー
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目次
こんにちは。社会保険労務士の山口です。
ここ数年続いた「働き方改革」の施行ラッシュは一旦落ち着きましたが、2022年は育児介護休業法の大規模改正が控えています。
規程だけでなく、労使協定や人事フローの見直しも必要になりますので、改正事項とタスクをしっかり押さえましょう。本稿では、主に人事労務担当者向けに、各月の対応が必要な実務や法改正情報をまとめました。各月のポイントを解説していますので、1年間のスケジュールとやるべきことを計画する際にお役立てください。
※本稿は2021年12月28日時点での情報をもとに作成しております。
1月のトピック
法改正
雇用保険マルチジョブホルダー制度(65歳以上対象)の創設
労務
- 労働保険料(第3期分)の納付(延納申請をした場合)(~1/31)
税務
- 納期の特例による源泉徴収税額の納付(~1/20)
- 従業員への源泉徴収票の交付(~1/31)
- 給与支払報告書の提出(~1/31)
- 法定調書の提出(~1/31)
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を従業員から回収(1月給与支払日の前日まで)
ポイント解説
2022年1月から複数の事業所に勤める65歳以上の労働者について、それぞれの勤務時間を合算して雇用保険加入ができるようになります。労働者から雇用保険加入の申出があった場合、会社は対応する義務があります。また1月は税務に関する届出が集中しますので漏れのないよう注意しましょう。
2月のトピック
労務
- じん肺健康管理実施状況報告(~2/28)
税務
- 決算準備(3月決算法人)
ポイント解説
3月決算の法人にとって、2月は大事な準備期間です。書類の不足等がないよう整理し、まとめておきましょう。また、4月の法改正に対応するため、就業規則の修正作業は早めに取り組んでおきたいものです。
3月のトピック
労務
- 36協定の更新、届出
- 次年度、介護保険の該当者(非該当者)の確認(40歳/65歳)
- 有害物ばく露作業報告(~3/31)
税務
- 決算準備(3月決算法人)
- 退職金の支払いと各種控除(所得税・住民税)
- 退職所得の源泉徴収票提出(本人退職後1ヶ月以内)
ポイント解説
1年でもっとも退職者が多い季節です。雇用保険の離職票や源泉徴収票、退職金の振り込みなど手続きが多岐にわたりますが、遅延しないようしっかりスケジュールを組みましょう。また4月の新入社員の受け入れ準備も進めましょう。
4月のトピック
法改正
- 中小企業へのパワハラ防止措置義務の適用
- 在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げ
- 一般事業主行動計画の策定・届出義務が「101人以上」の事業主に拡大(女性活躍推進法改正)
- 育児介護休業法の改正(周知等に関する見直し及び有期労働者の取得要件緩和)
労務
- 法改正に伴う規程の修正確認・届出
- 新入社員の受入れ事務(入社手続き等)
- 健康保険料率、介護保険料率の変更確認
税務
- 決算業務(3月決算法人)
- 「給与支払報告に係る給与所得者異動届出書」の提出
ポイント解説
4月は法改正が集中します。育児介護休業規程とハラスメント防止規程がしっかり法改正に対応できているか、今一度確認しましょう。
5月のトピック
税務
- 障害者雇用納付金の申告納付、障害者雇用調整金の申請(~5/15)
ポイント解説
5月は障害者雇用納付金の申告がありますが、申告期限の前にゴールデンウィークを迎えるため、計算や納付のスケジュールに遅れが生じないようしっかり計画しましょう。
6月のトピック
労務
- 労働保険の年度更新手続き(6/1~7/10)
- 賞与支払届の提出
- 高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出(6/1~7/15)
税務
- 新年度・個人住民税の特別徴収の開始
ポイント解説
6月は住民税の改定時期です。また、労働保険の年度更新手続き、高年齢者、障害者雇用状況報告書は、6/1から受付が始まります。7月は社会保険料の算定基礎届作成が控えているので、こちらを早めに片づけるようにしましょう。
7月のトピック
労務
- 健康保険・厚生年金の「算定基礎届」の提出(7/1~7/10まで)
- 労働保険の年度更新手続き(6/1~7/10)
- 高年齢者雇用状況報告書・障害者雇用状況報告書の提出(6/1~7/15)
ポイント解説
7月は、社会保険・労働保険の締め切りが集中します。労働保険料の年度更新手続き、健康保険・厚生年金の「算定基礎届」の提出は7/10まで。高年齢者、障害者雇用状況報告書の提出は7/15までです。手続きの遅れや漏れのないよう気を付けましょう。
8月のトピック
ポイント解説
8月は夏休みや旧盆の影響で比較的業務量が少ない月ですが、従業員にとっては疲労がたまりやすい時期でもあります。熱中症対策を入念に行うなど、安全衛生対策をしっかりとり、業務災害を防ぎましょう。また、7月の繁忙期に漏れてしまった手続きがないか、確認しましょう。
9月のトピック
労務
- 新標準報酬月額の確認と通知
ポイント解説
9月には、新しい標準報酬月額が通知されます。賃金データなどの更新をしておきましょう。
10月のトピック
法改正
- 育児介護休業法の改正(出生時育児休業の創設など)
- 短時間労働者への社会保険の適用拡大(従業員数101人以上)
労務
- 延納を申請した場合の労働保険料第2期分の納付(10/31まで)
- 地域別最低賃金の改定
ポイント解説
4月に続き、育児介護休業法が改正されます。出生時育児休業については従来の育児休業とは別の仕組みとなっているため、規程を大幅に修正する必要があります。
また、短時間労働者への社会保険適用が「従業員数101人以上」の企業に引き下げられます。資格取得手続きをスムーズに進めるため、事前に従業員情報を整理しておきましょう。
11月のトピック
ポイント解説
厚生労働省は毎年、「勤労感謝の日」にあわせて、11月に「労働時間適正化・過重労働解消等」をテーマにしたキャンペーンを実施しています。自社の労働時間管理が適正か、過重労働が発生していないかを今一度点検しましょう。
12月のトピック
労務
- 賞与支払届の提出
税務
- 年末調整
- 退職金の支払いと各種控除(所得税・住民税)
- 退職所得の源泉徴収票提出(本人退職後1ヶ月以内)
ポイント解説
12月の最大のイベントは年末調整です。スムーズに進めるため、書類の準備や従業員への案内は早めに実施しましょう。また、社員からの問い合わせについては適切に回答できるようにしておきましょう。
おわりに
前年に引き続き新型コロナウイルスに翻弄された2021年でしたが、コロナ禍は少しずつ収束の兆しが見えてきています。その一方で新たな変異ウイルスも登場しており、まだまだ油断できません。
コロナ対策と並行して通常業務を進めるのは大変ですが、Smart HR Mag.などを活用して情報をいち早くキャッチアップし、適切な労務管理を進めていただきたいと思います。