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気づかなかったでは済まされない!「安全配慮義務違反」3つのケース

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こんにちは。しのはら労働コンサルタントの特定社会保険労務士 篠原 宏治です。

皆さんもご存じの通り、過重労働等への対策が世の中的に進みつつありますが、その一方「安全配慮義務違反」で訴訟されるケースなども後を絶ちません。

そんな昨今ではありますが、皆さんの会社では「安全配慮義務」を意識した労務管理が行われておりますでしょうか?

今回は「安全配慮義務」とは何か、どのような場合に「安全配慮義務違反」となるのか、などについて解説いたします。

「安全配慮義務」とは?

そもそも「安全配慮義務」とは、社員が安全で健康に働くことが出来るように配慮しなければならない、会社の義務のことです。

雇用契約書や就業規則などに明示されていなくても、雇用契約の締結に伴って会社が当然に負うべき義務であり、判例によって確立され、平成20年3月に施行された労働契約法で明文化されました。

労働契約法

第5条(労働者の安全への配慮)
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

当初は、労働災害によるケガや死亡などが主体でした。

しかし最近は、過重労働やパワハラによる、脳・心臓疾患や精神疾患の発症で「安全配慮義務違反」が問われるケースが増加しています。

過労死や過労自殺などの最悪の結果が生じた場合には、数千万以上の損害賠償の支払いを命じられることも稀ではありません。

企業が陥りやすい「安全配慮義務違反」3つのケース

次に、企業が陥りやすい「安全配慮義務違反」となる3つのケースを紹介します。

(1)「過労死ライン」を超える時間外労働を行わせた場合

月100時間超や2~6ヶ月のいずれかの平均で80時間超のいわゆる「過労死ライン」を超える時間外労働を社員に行わせて過労死や過労自殺を引き起こした場合、安全配慮義務違反のそしりを免れることはほとんどありません。

安全配慮義務違反となるポイントには、大きく分けると、下記の2点があります。

・社員が健康を害することを予測できたかどうか(予見可能性)
・会社として健康を害することを回避することができたかどうか(結果回避性)

過労死ラインを超える残業を行わせている場合には、会社が「過労死(過労自殺)を予見することが出来なかった」「回避は困難だった」と主張しても、当然に予見でき、また回避可能であったと判断されることがほとんどです。

過労死ラインを超えなければ安全配慮義務違反に問われないわけではなく、業務の質や量など様々な事情を総合的に考慮して判断されることになりますが、月100時間や月平均80時間という時間は、絶対に超えてはならない一つの基準として必ず考慮しておきましょう。

(2)「管理監督者」であっても会社の安全配慮義務は免れない

労働基準法第41条の管理監督者に該当する場合、時間外労働や休日労働の規定は適用されません。

しかし、長時間労働に対する会社の安全配慮義務まで免れるわけではなく、過労死や過労自殺を引き起こした場合には、会社が安全配慮義務違反に問われることになる点に注意しなければなりません。

管理監督者は、その役割や責任から業務に伴う負担やストレスが大きく、過重労働による健康障害が生じやすい一方、労働時間に関する規定が適用されないため、労働時間管理が疎かになりがちです。

管理監督者であっても、日頃の労働時間管理を適切に行うことを心掛けてください。

(3)「社員間のパワハラ問題」も会社の安全配慮義務の範囲

企業が主導していない「社員間で生じたパワハラやセクハラ」などであっても、個人間の問題だからと言って予防や解決のための対応を何を講じないまま漫然と放置し、その結果、社員がうつ病などを発症した場合には、会社が安全配慮義務違反に問われることになります

パワハラやセクハラに関する社員の理解を深めるように努めることは、企業のリスクマネジメントとして重要な課題と認識しなければなりません

「安全配慮義務」は見落としやすい点に注意

このように、「安全配慮義務」には、すべからく注意すべき時間外労働問題のほか、管理監督者や社員間のパワハラ問題など、一見気づきにくい観点での注意事項があります。

今一度、会社の人事労務状況を振り返り、改善が必要な事項があれば、それに対処するだけでなく、課題の根本原因を取り除くべく対策を講じましょう。

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