労働者の4割強が知らない「36協定」しかし働く上では超重要!
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こんにちは、社会保険労務士の吉田 崇です。
言うまでもありませんが、このところ長時間に渡る残業、またそれに伴う過労が大きな社会問題となっています。その中で「36(さぶろく)協定」という言葉をメディアなどで目にする機会が増えたのではないでしょうか?
とはいえ、中には「サブロクキョーテー……?」とチンプンカンプンな方もいらっしゃることでしょう。
『ぼっけえ、きょうてえ』という岡山弁で淡々と語られる岩井志麻子さんのホラー小説がありましたが、もちろんそんな怖いものではなく、正式名称を「時間外・休日労働に関する協定届」といい、労働基準法36条に基づく労使協定であるため、一般的に「36協定」と呼ばれます。
「ふーん、まあ俺には関係ないわ(鼻ホジー)」なんて思っていると、知らない間に違法残業をさせられ、体調を崩して病院へ……。
なんていうある意味本当に怖いことにもなりかねません。「36協定」は経営者や人事労務担当者だけが知っておくべき内容ではなく、働く以上誰もが皆知っておくべき内容です。
そこで今回は従業員の方向けに「36協定」についておおまかに概要を解説しますので、サクッと「36協定」について理解しましょう!
労働者の4割強が「36協定」を知らない
まず、「36協定」は会社の規模に関わらず、従業員にほんの少し、それこそ、たった1人に月に1時間程度でも残業させる可能性がある場合や、法定休日に出勤させる可能性がある事業所は、必ず労働基準監督署に提出する必要があります。
もし、これを提出しないで残業や休日出勤をさせた場合労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科される可能性があります。
ところが実際には、平成25年の厚生労働省の調査では、中小企業の約6割が36協定を締結していないという結果となっています(*1)。
また今年、日本労働組合連合会(連合)が実施した調査では、労働者の4割強が「36協定を結んでおく必要があること」について知らないという結果も出ています(*2)。
恥ずかしながら、私も社労士の勉強を始めるまでは「36協定」という言葉すら知りませんでした。
しかし、昨今の長時間残業、過重労働が社会問題になっている潮流を受け、このような状況を是正するため、労基署による取り締まりが厳しくなってきているようです。
「36協定」の具体的記載事項
36協定では、具体的に以下のような事項を記載します。
- 残業および休日出勤をさせる必要のある具体的な理由
- 残業および休日出勤させる従業員の職種および人数
- 1日あたりの残業時間
- 1ヶ月あたりの残業時間(通常は最大45時間まで)
- 1年あたりの残業時間(通常は最大360時間まで)
- 休日出勤させる日数(月4日など)
- 36協定の有効期間(通常は起算日より1年)
これらを記載した上で、従業員代表者(事業場において、過半数で組織されている労働組合があれば、その労働組合。労働組合がない場合は、当該事業場の労働者の過半数を代表する者)と会社が協定を結び、それを労基署に届け出る形になります。
「特別条項付き36協定」の抜け穴的な活用が問題に
さて、ここで「ちょっと、待って! 1ヶ月の残業時間は最大45時間までって言ってるけど、うちの会社なんてもっと残業してるよ! 違法じゃん!!」という方もおられると思います。
実は、36協定には「特別条項」がありまして、36協定届の所定欄にその理由と延長時間を付記することで、年間6回(6ヶ月)までであれば、月45時間を超えて残業させることが可能となります。
その場合、時間の上限なく青天井で残業させることも現実的には可能です。
しかし、それをいいことに、この「特別条項」を抜け穴として活用することに対して、当然問題視もされており、ここに月100時間を超えるような残業時間を記載している事業所には、労基署による監査が入りやすくなります。
「36協定」特別条項には上限が設けられる見込み
とはいえ政府としてもこの特別条項に上限を設けるなど、「働き方改革実行計画」に沿う改正法の施行を2019年4月以降(見込み)に目指していることは、ニュースなどでも大きく取り扱われておりましたので、ご存じの方も多いでしょう(*3)。
先に挙げた調査データのように、内容を詳しく知らないという人が多いにも関わらず、会社にとっても従業員にとっても、非常に重要な意味を持つ「36協定」。
「そんな協定なんて結んでなくても特に問題ないでしょ!」といった軽い書類ではなく、何も理解していない状態だと『ぼっけえ、きょうてい(とても、こわい)』協定なんです。
【参照】
*1:平成25年度労働時間等総合実態調査(主な結果) – 厚生労働省
*2:36協定に関する調査2017 – 連合
*3:働き方改革実行計画 – 首相官邸