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労災発生・・・! 残業時間が「36協定の範囲内」でも労災認定はおりる?

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こんにちは。しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。

労働者が長時間労働によって脳・心臓疾患やうつ病などの精神障害を発症し、過労死や過労自殺に至ったとして労災認定される事案が毎日のようにニュースで報じられています。

使用者は、36協定届(時間外労働・休日労働に関する協定届)の範囲内でしか労働者に残業(時間外労働)を行わせることができず、その限度時間は原則として「月45時間、年360時間」までとなります。

しかし、限度時間を超えてさらに残業を行わせることができる「特別条項」や、一部の業種や職種については限度時間の適用対象外とされていることなどにより、いわゆる「過労死ライン」と認識されている月100時間を超えるような長時間の残業を36協定届の範囲内で法律上問題なく行わせることも可能です。

では、36協定届の範囲内で法律上問題のない残業しか命じられていない労働者であっても、過労死や過労自殺に至った場合には労災認定を受けることはできるのでしょうか。

36協定届の範囲内の残業でも「労災認定」は受けられる

結論から言うと、長時間労働によってうつ病の発症や過労死などが生じた場合には、労働者や遺族は、それが36協定届の範囲で行われた残業であるかどうかにかかわらず、労災認定を受けることが可能です。

労働災害は、「業務に起因して生じた負傷や疾病」であり、36協定届の範囲内で残業が行われていたとしても、それが「業務」であることに変わりはありません。

長時間の残業によって労働者に身体的又は精神的な健康障害が生じたのであれば、36協定届とは関係なく労働災害として認められるというのは当然のことと言えるでしょう。

36協定届には労働基準法の「免罰効果」がある

そもそも36協定届にはどのような効力があるのでしょうか。

労働基準法第32条は、法定労働時間(1日8時間及び週40時間)を超えて労働させることを禁止しており、これに違反した場合には罰則(6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります。

しかし、同法第36条に基づいて、36協定届を締結し、所轄労働基準監督署長に届け出た場合には、36協定で定めた限度時間までは時間外労働を行わせても法律違反(刑事罰)に問われません。

これを36協定届の「免罰効果」と言います。

「損害賠償請求」も36協定届に関係なく行うことができる

免罰効果は36協定届によって生じる唯一の効力であり、それ以外の効力は何も発生しません。

そのため、使用者は、36協定届の範囲内の残業であれば、長時間労働を行わせたことを理由に国(労働基準監督署)から罰せられること(刑事上の責任)は免れられますが、長時間労働によって生じた健康障害について労働者や遺族に対して損害賠償を行う責任(民事上の責任)までは免れることはできません

したがって、過労死や過労自殺として労災認定された場合に、労働者の遺族から会社に対して行われる損害賠償請求についても、36協定届の範囲内で行われた残業であるかどうかに関わらず行うことが可能です。

ただ、やはり大切なのは、労災保険が受けられるかどうかや損害賠償請求を出来るかどうかよりも、長時間労働による健康障害を発生させないことです。

「36協定届の範囲内の残業だから長時間労働でも仕方ない」ということはありません

36協定届の意味を正しく理解し、体調管理には十分気をつけながら働くことを心掛けましょう。

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