社労士が解説! HRニュース 2022年12月振り返りと2023年1月のポイント

2022年も残すところあとわずかです。

ロシア・ウクライナ戦争、長期化するコロナ禍、生活必需品を含む物価の上昇など、世界規模だけではなく、身の回りを振り返っても、2022年は激動の1年であったと思います。

人事・労務担当者にとっても、育児介護休業法、パワハラ防止法など、重要な法改正、雇用調整助成金の段階的縮小に対する情報収集や対応、最低賃金の過去最大級の引き上げなど、負担の大きな年だったのではないでしょうか。1年間お疲れさまでした。

2022年12月のトピックの振り返り

(1)年末調整

人事・労務担当者の皆さま、年末調整の対応お疲れさまでした。ほとんどの企業でプロセスの大半を終えていらっしゃるタイミングだと思います。よくありがちな、このタイミングだからこそ気になることをQ&A形式で紹介します。

Q:最後まで申告書を出してくれなかった従業員がいるのですが、最終的にどうすればよいのですか?

A:会社として必要な呼びかけをしても申告書が提出されなかった場合は、会社が年末調整を実施する義務はありません。従業員個人の責任で確定申告をしていただく形になります。

Q:前職の源泉徴収票を入手できない従業員がいます。当社の支払額のみで年末調整を実施してしまったのですが、問題なかったでしょうか?

A:問題があります。前職の源泉徴収票がない場合、年末調整を実施できません。当該従業員の年末調整をキャンセルしたうえ、本人には確定申告を案内してください。

Q:年末調整のあと、従業員に歳末の御礼と景気づけのため「餅代」を1人3万円支給しました。「餅代」なので年末調整には影響しませんよね?

A:「餅代」「寸志」など名目を問わず、会社から従業員に対して支給される一時金は、冠婚葬祭の慶弔金などの特別な場合を除き、税法上は「賞与」と同視されます。そのため「餅代」を加算して年末調整のやり直しが必要になります。

Q:生命保険やiDeCoの控除証明書が間に合わなかった従業員がいましたが、本人の書いた申告書を信じて年末調整を実施してしまいました。問題あるのでしょうか?

A:問題ありません。所得税法に関する通達で、年末調整までに証明書が間にあわない場合は、翌年1月31日までに事後提出をすることを条件に、年末調整を実施してよいとされています。

Q:12月31日づけの退職者へ、1月中に退職金を支払うのですが、年末調整に何か影響あるでしょうか?

A:基礎控除と配偶者控除に影響が生じる可能性があります。現在の所得税法では、基礎控除の額や配偶者控除の額は、納税者本人の「所得」に応じて控除額に段階があります。ここでいう「所得」には、給与所得だけでなく退職所得をはじめ、納税者のほかの所得も含まれるためです。

(2)賃金のデジタル払い

賃金のデジタル払いが2023年4月1日から解禁となることはすでにアナウンスされていましたが、ここにきて、ようやく具体的な情報が出はじめました。

デジタル払いは労働者の同意が必要ですが、その同意書の雛形や、どのような要件を満たせばデジタル払いが可能となるのかの厚生労働省通達などが公開されました。詳細は、下記厚生労働省のウェブサイト内のページをご参照ください。

(参照)資金移動業者の口座への賃金支払(賃金のデジタル払い)について – 厚生労働省

(3)労働政策審議会での労使委員の対立

直近の労働政策審議会では、労働者側の委員の意見と、使用者側の委員の意見の対立が目立っています。

11月29日の労働政策審議会労働条件分科会では、裁量労働制の対象職種の拡大につき、労働者側は実労働時間を把握できない労働者が増え、労働者の健康管理にも影響が出ることや、フレックスタイム制の活用によっても柔軟な働き方は可能である旨を主張し、裁量労働制の安易な拡大には反対の姿勢です。

これに対し、使用者側は、「昨今、課題解決型・提案型のビジネスなど、必ずしも時間と成果が比例しない職務が増えてきた。真に時間にとらわれない働き方を可能とする裁量労働制が広く活用されることを期待している」として、ビジネスモデルや働き方の変化を理由に裁量労働制の拡大を望んでいます。

12月6日の労働政策審議会労働条件分科会でも、解雇無効時の金銭救済制度について討議がなされましたが、使用者側委員が「選択肢が増えて労働者にとってもプラスの制度である」と主張するのに対し、労働者側は「最終的に金銭解決があることで、不当解雇を行ったうえで、裁判外で示談強要をしかねない」など、制度の悪影響を懸念しています。

このように、国レベルで見ても、労働法が今後どのような方向に進んでいくのかは、まだ見通しが立たない状況です。経営者や人事・労務担当者としては、このような状況であることを知ったうえで、現行制度を最大限活用して、労使双方が幸せになれる働き方を模索していくことが望ましいでしょう。

2023年1月のトピック

(1)月平均所定労働日数のアップデート

給与計算における月給者の割増賃金の単価は、「割増基礎÷月平均所定労働時間」で計算されます。

この計算式において、月平均所定労働時間は、固定値ではなく、原則として変動値となります。

月平均所定労働時間を求めるためには、「その年の所定労働日数÷12ヶ月×1日の所定労働時間数」で計算します。そのため、「当社では年間所定労働日数は240日とする」など、所定労働日数を完全に固定しているような場合を除き、曜日の並びや祝日数などの影響を受けて所定労働日数は毎年変動します。その結果、月平均所定労働日数や月平均所定労働時間も毎年変動するのです。

給与計算ソフトによっては、前提条件を設定しておけば、自動的に毎年月平均所定労働時間がアップデートされる仕様の製品もありますし、手動で変更しなければならない仕様のものもあります。この点、給与計算ソフトの仕様を確認し、アップデート漏れのないようご注意ください。

なお、月平均所定労働日数は、実務上は1月を基準月としたアップデートが多いですが、法的に必ずしも1月である必要はないので、決算月などに合わせられます。

(2)残業削減に向けて動きはじめましょう

2023年4月から、いよいよ中小企業にも時間外労働の2段階割増が適用されます。すなわち、月60時間以内は従来同様法定割増率は25%以上ですが、月60時間超の部分の時間外労働に対しては、法定割増率は50%以上となります。

残業に頼って事業を運営している会社にとっては、大きなコストアップ要因となります。

また、厚生労働省のガイドラインでは、月45時間以上の残業が続くと過労死につながるリスクを説いています。そもそも月60時間もの残業は、コスト以上に、従業員に対する安全配慮義務の観点からも望ましいものではありません。

2023年4月から魔法のように直ちに残業を削減することはできません。今のうちから対応を進め、業務の効率化や、人手が足りないなら採用活動の強化など、早め早めに手を打っていきたいものです。

(3)年末年始の入退社などへの対応

3月・4月ほどではありませんが、12月・1月も従業員の動きが多い月です。

そのようななか、12月末~1月頭は年末年始休暇となりますので、従業員の入退社手続を限られた時間のなかで迅速に実施しなければなりません。

  1. 12月末退職者の離職票作成に必要な出勤簿や賃金データを年内にできるだけ集める
  2. 1月入社者の個人情報を年内に受け取り、SmartHRなどに登録し、年明けにはボタン1つで電子申請できるように前段取りをする
など、先読みをした対応を年内に完了できると、よいでしょう。

人事・労務ホットな小話

2023年も、本稿で触れた「賃金のデジタル払い解禁」「60時間超の時間外労働割増率を中小企業も50%に引き上げ」をはじめ、「改正育児介護休業法施行第3弾(育児休業の取得の状況の公表の義務づけ)」「障害者の法定雇用率引き上げの可能性(5年ごとの見直しで、2023年は見直しの年に該当)」「雇用調整助成金のコロナ特例が経過措置を含め完全終了の見通し」「出産一時金の50万円への増額」「最低賃金は前年に引き続き大幅に引き上げられるのか?」など、人事・労務担当者が把握しておかなければならない法改正やトレンドは少なくありません。

2023年もぜひ、アンテナを高くして、業務に取り組んでください!

まとめ

今年も1年間、本連載におつきあいをいただき、ありがとうございました。

実は、本連載は筆者の事情で大変恐縮ではありますが、今回が最終回となります。状況が変わりましたら、SmartHR mag.の執筆者として復帰し、また皆さまに記事をお届けできればと思っております。

読者の皆さまには、改めてこれまでの御礼を申し上げます。

そして最後になりますが、どうぞよい年末年始をお過ごしください!

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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