社労士が解説! HRニュース 2022年11月振り返りと2022年12月のポイント

2022.11.30 ライター: 特定社会保険労務士 榊 裕葵

あっという間に11月が過ぎ、2022年もあと1か月ほどで終わりです。年末に向け、人事・労務担当者の皆様は、忙しくしていらっしゃるのではないかと思います。

2022年11月のトピックの振り返り

(1)年末調整の準備

皆様の会社では、年末調整の準備は順調に進んでいるでしょうか?

多くの企業においては、目下、提出期限を定めて従業員に年末調整の情報提出を呼びかけ、順次回収中という段階なのではないかと思います。

社内の提出状況を確認し、提出状況が芳しくない場合は、あらためて社内に提出期限を呼びかけるなどの対策を取りましょう。

従業員数が多い会社ではとくにですが、紙ベースの年末調整では、回収状況や回収率の把握が困難です。今年、紙ベースの年末調整を行っている企業で、申告書の回収に手間と時間がかかっていると実感しているのであれば、来年はぜひSmartHRなどのクラウドソフトでの年末調整実施をおすすめしたいと思います。

クラウドソフトでの年末調整は、従業員側の申告書情報の入力が楽になるだけでなく、管理者側のUIでは提出状況が一目瞭然なので、人事・労務担当者側の管理工数も大幅に軽減されるのです。

提出された年末調整の申告書は、順次チェックを始めていきましょう。「そろってから一気に」では、負荷が集中して長時間残業や休日出勤にもつながりがちなので、提出されたものからチェックをしていき、不備があれば再提出をお願いする形が望ましいと思います。

なお、この不備のチェックの段階でも、筆者はクラウドソフトでの年末調整に一日の長があると考えます。クラウドソフトで従業員が年末調整情報を入力すれば、紙に直接記入する場合に比べ、不備は大幅に減少するからです。UIがわかりやすいことはもちろんですが、必須項目に未入力などの不備があれば先に進めないようになっているなど、システム上の自動チェックも働きます。そして、システム上のチェックのすり抜けてエラーが発生し、人事・労務担当者が従業員に修正や再提出を求める場合も、クラウドソフトであれば、システム上から修正依頼を、該当者のメールアドレスへ発信するなど、効率的な対応が可能です。

今年は税法上の目立った改正もなく、前年と比べて年末調整に大きな変化点はありません。しかし、クラウドシステムは、法改正があった場合も、自動的にシステムがアップデートしてくれるので、人事・労務担当者の法改正対応の負担も軽減されます。

(2)第2次補正予算案と助成金

11月8日、政府は令和4年度第2次補正予算案(28.9兆円)を閣議決定しました。厚生労働省予算には約4.8兆円が計上され、その大半はコロナ関連の予算が占めます(約3.7兆円)。

残りの約1.1兆円の内訳は、賃上げや人材活性化などに向けた雇用・労働総合政策パッケージ関連が中心です(7,444億円)。

まず、一番大きいところでは、コロナ関係の雇用調整助成金の支給などにより、積立金が大幅に減少している雇用保険の財源に7,276億円が投じられ、失業等給付や助成金を含め、雇用保険制度全体の安定化が図られます。

個別の助成金制度については、事業場内で最も低い賃金を一定額以上引き上げた中小企業に支給される「業務改善助成金」の拡充に100億円を割り当て、賃金の底上げが図られます。生産性向上に向けた取り組みを支援する働き方改革推進支援助成金の拡充にも28億円が割り当てられます。

その他にも、人材開発支援助成金に新コースを創設し、新規分野における知識習得のための訓練を行う事業主の支援や、賃金上昇につながるスキルアップを目的とした在籍型出向を支援する産業雇用安定助成金「スキルアップ支援コース(仮称)」の創設も予定されています。

これらの第2次補正予算にもとづく助成金制度の拡充については、順次厚生労働省から正式な情報が出される予定なので、人事労務担当者は情報の把握に努めたいものです。

(3)雇用調整助成金のコロナ特例の終了

12月以降の雇用調整助成金の取り扱いについて厚生労働省より発表がありました。

(出典)令和4年12月以降の雇用調整助成金の特例措置等について – 厚生労働省

大きなポイントとしては、下記の3点になります。

  1. 一定の経過措置はあるが、地域特例、業況特例を廃止
  2. 助成上限をコロナ特例前の原則に戻す(助成額上限8,355円、助成率3分の2※大企業は2分の1)
  3. 申請書類の簡素化は、2023年3月まで継続

雇用保険の財政悪化や、Withコロナの定着により、必然的な流れであるとは思いますが、雇用調整助成金に頼らない経営が、いよいよ「待ったなし」になるといえるでしょう。

雇用調整助成金を頼みの綱にして、休業による雇用維持に努めてきた事業主も、配置転換や、状況によっては退職勧奨や整理解雇も視野に入ってくるかもしれません。人員の整理は、対象となる従業員一人ひとりと向き合っていかなければならないため、ある程度の時間をかけて行う必要があります。

雇用調整助成金で雇用を維持してきた事業主は、早めに方針を決め、社内に落とし込んでいかなければならないでしょう。

2022年12月のトピック

(1)冬季賞与の支給

12月は、冬季賞与を支給する予定の企業も多いのではないかと思います。

賞与を支給した際には、賞与から社会保険料を控除するとともに、日本年金機構に「賞与支払届」を提出する必要がありますので、失念をしないようご留意ください。

また、冬季賞与についても、12月中に支給する場合は、年末調整の対象となる賃金に含まれます。年末調整の還付を行う12月給与の支給日が、冬季賞与の支給日よりも先にある企業はとくに、冬季賞与の金額が2022年の年末調整上の総所得額から漏れないように気をつけてください。

なお、12月給与の支給日までに冬季賞与の額が決まらない場合は、年末調整の還付金の反映を2023年1月の給与に後ろ倒しすることも実務上は許容されます。

(2)年末調整の後処理

従業員への還付金の還付が無事に済んでも、年末調整は終わりではありません。

  1. 従業員に対して源泉徴収票を交付すること
  2. 税務署に対して源泉徴収票等の法定調書と法定調書合計表を提出すること
  3. 従業員が居住する市区町村に対して給与支払報告書と総括表を提出すること

が必要となりますので、忘れずにご対応ください。

(3)給与計算ソフトの変更

社内で利用している給与計算ソフトを変更したい場合は、12月中に初期設定を済ませ、年明け1月から新しい給与計算ソフトに移行するのがタイミング的には王道です。

年末調整は1~12月に支給された給与にもとづいて実施するため、1月のタイミングで移行できれば、過去の給与データのインポート工数などがミニマムに抑えられるからです。

給与計算ソフトを変更する際には、変更に伴う設定エラーなどを防ぐため、1~2か月は旧ソフトも並行して利用し、計算結果が一致するかを確認することが望ましいです。従業員数が多くて大変な場合は、雇用形態別のサンプル調査でもよいでしょう。

(4)全国健康保険協会の申請書式変更

2023年1月から、全国健康保険協会において、傷病手当金や出産手当金など、申請書類の書式変更があり、新書式はすでに全国健康保険協会のホームページに掲載されています。

(出典)令和5年1月以降、各種申請書等は新様式のご使用をお願いします – 全国健康保険協会

旧書式でも申請は受理されるようですが、旧書式で申請があった場合は、事務処理に時間を要してしまう可能性があると案内されていますので、新書式の利用を忘れないようにしてください。

人事・労務ホットな小話

人事・労務担当者にとって、11月から12月にかけての大きなイベントは、年末調整でしょう。昨今は、クラウドソフトを利用することによって、年末調整の効率化が進んでいることは周知の事実です。

ところで、人事・労務担当者の皆さまは、年末調整に要する時間がどのくらい短縮されたのかを定量的に把握できているでしょうか? 人事・労務部門は、一般的に営業部門などとは異なり、その業務内容から、定量的な評価がしにくい部署だと言われています。

しかしながら、意識して工数把握をすれば「年末調整を昨年は3人で延べ20時間かけて行ったが、今年は2人で10時間で済んだ」といったように、定量的に効率化を把握できます。

他にも、「新入社員1名あたりの入社手続に要する工数」、「勤怠集計の1か月あたりの工数」、「年次有給休暇の付与・取得管理の月間工数」など、定量的に評価をできる項目は少なからずあると思います。

このような工数を把握することで、人事評価の材料にするという面ももちろんありますが、「残業が減ってプライベートが充実する」、「効率化の進捗が定量的に見えることが楽しく、モチベーションが高まる」など、自分自身のプライベートの充実や、仕事に対する楽しさにもつながると思います。

ぜひ一度、工数の見える化と、効率化について考えてみてはいかがでしょうか。

まとめ

これから約1か月、2022年のラストスパートです。プライベートにおいても、クリスマスや年末年始といったビッグイベントが控えていますね。計画的、効率的にタスクをこなして、公私ともども充実した2022年の締めくくりにつなげていただければと思います。

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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