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意見の相違は組織を壊す?対立を「組織の宝」にする7つの方法

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皆さん、こんにちは。一般社団法人日本心理的安全教育機構 代表理事の小野みかです。今回のコラムでは「意見の対立を組織の宝にする方法」を取り上げます。

多くの組織では、メンバー同士の対立を問題と捉え、できるだけ避けようとする傾向があります。しかし、実はそれが組織の成長に繋がる貴重な機会であると知っていましたか? 対立と聞くとネガティブなイメージをもつ方もいるかもしれませんが、対立からは新しい視点やアイデアが生まれるケースも少なくありません。これは組織の進化を促す原動力になり、結果的にパフォーマンスやモチベーションの向上にもつながります。

そこで、本コラムでは意見の対立を組織の「強み」や「宝」に変えていくための方法を詳しくご紹介します。対立を「宝」と思うことができれば、一人ひとりのメンバーが対立をポジティブに捉えるようになり、建設的な意見交換が促進されること間違いなしです。ぜひ最後までチェックしてみてください。

意見が対立する理由

ここで述べる「組織における意見の対立」とは、互いに自分の主張・スタンスをもっていることが前提となり、単なる感情の対立ではありません。対立の原因は、個人の価値観や仕事に対するアプローチの違い、個々の役割や目標への認識の相違などが挙げられます。とくに、多様なバックグラウンドをもつメンバーが集まる組織・職場では、意見の対立が生じやすくなるといわれています。

なかには「余計な対立を避けたい」「意見を主張して言い合いになるのは嫌だ」との思いから、本当は意見したいことがあっても、あえて発言をしない方もいることでしょう。しかし、意見の対立は必ずしもネガティブなものではなく、むしろポジティブな側面もたくさんあります。

対立が生む3つのメリット

では、対立が組織にもたらすメリットにはどのようなものがあるのか、具体的に3つご紹介します。

対立が組織にもたらすメリットには「(1)組織全体の活力源になる」「(2)革新的なアイディアが生まれる」「(3)組織の多様性が育まれる」という3つがあります

(1)組織全体の活力源になる

メンバー同士が意見をぶつけ合い、より良い結果を求めて深く考えることは、その後のアクションを考えるうえで重要なプロセスです。

対立が起きた際に「現状のやり方に本当に問題がないか?」「何のためにやるのか?」といった根本的な疑問に向き合えば、新たな視点や解決方法が発見でき、組織全体に新たなエネルギーを注ぎ込むきっかけにもなります。

(2)革新的なアイディアが生まれる

異なる視点やアプローチがぶつかると、従来の枠組みや慣習にとらわれない新しい発想が生まれやすくなったり、シナジーが起きたりします。

たとえば、あるメンバーがリスク回避型の意見をもっている一方で、別のメンバーが積極的な挑戦を提案する場合、両者の意見を掛け合わせることで、リスクを最小限に抑えつつも革新的な解決策が出てきやすくなります。

こうした既存概念にとらわれない発想は、意見の対立があってこそ生まれるものです。従来のやり方にばかり固執しすぎると、新しいアイデアや発展の機会が失われてしまう可能性があるため、他者の意見を受け入れる「柔軟な視点」をもつことが大切です。

(3)組織の多様性が育まれる

意見の対立は、組織内の多様性を強化する重要な要素です。異なるバックグラウンドや価値観をもつメンバー同士が互いに異なる視点を提供することで、組織全体がより広い視野をもてるようになります。

これにより、課題に対して多角的なアプローチができ、柔軟で効果的に問題解決できるようになります。組織における多様性が高まれば、従業員の創造性や発想力が引き出され、結果として組織全体のパフォーマンス向上にもつながるでしょう。

対立を宝に変える7つの具体的方法

組織における「意見の対立」が重要なことは理解していても、「具体的に何をすればよいのかわからない」と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで、ここからは意見の対立を宝に変える具体的な方法についてご紹介していきます。

対立を宝に変える7つの具体的方法は「(1)対立の背景を理解する」「(2)心理的安全性を確保する」「 (3)ジャッジしないで話を聞く」「(4)目的を共有する」「(5)合意を形成する」「(6)対立解消後のフォローアップをする」「(7)対立をポジティブに受け入れる習慣を育成する」です

(1)対立の背景を理解する

まず重要なのは「対立がなぜ生まれたのか」その背景を各自が理解することです。メンバーの価値観、経験、役割の違いがどのようにして対立を引き起こしたのかを把握すれば、自ずと解決の糸口が見えてきます。

背景にある根本的な問題や目的を理解できれば、対立を単なる衝突ではなく、建設的なディスカッションに変えることが可能です。 

(2)心理的安全性を確保する

心理的安全性とは、相手が誰であっても、どんな反応をするか心配したり、恥ずかしいと感じたりすることなく、自分の心の内をオープンに伝えられる状態のことです。

もし、心のなかで感じていることと発言している内容が異なっている場合、我慢や無理をしている状態になり、いつまでたっても自分自身が満たされません。その結果、人間関係は余計にこじれてしまい、修復ができなくなる場合もあります。

一方で、意見を述べる際に恐れを感じず、自由に発言できる環境があれば、メンバーは対立を恐れず、自分の意見を率直に伝えられるようになります。

心理的安全性に関する記事は以下に詳しくまとめているので、あわせてお読みください。

(3)ジャッジしないで話を聞く

日本は世界と比べて同調圧力が強い文化を持っているように感じます。そのため、集団生活を送るなかで「これは普通じゃない」「みんなはこう言っているのに……」と自分の価値基準で相手を勝手にジャッジしてしまうケースも多いようです。

しかし、実際には人の数だけものの見方があります。みんなと違うから、自分の意見と違うから、といって相手が間違っているとは限りません。そもそも誰一人として同じ人間はおらず、みんな違う所があることを認識して、人間関係を構築していく必要があります。

お互いに「私にはこう見えているけど、あなたにはそう見えているのね。面白い!」という心の状態を保っておくと、対話がより促進され、互いの誤解や感情的な対立も軽減されるでしょう。

(4)目的を共有する

対立を建設的に解決するためには、チーム全体で共通する目的をもつことが不可欠です。一見、まったく違うような意見に見えていても「なぜそう思うのか?」「何のためにそうしたいのか?」を深堀していくと、最終的には全員が同じ目的に向かって活動しているとわかる場合も多々あります。

本来の目的やゴールを確認できれば、対立がただの争いではなく、組織全体の成長を促進するプロセスとして位置づけられます。組織全体で共有された目的や価値観をもとに、意見の衝突を乗り越えて、いかにして共通のゴールに到達するかを考えることで、対立は建設的な議論へと変わっていくのです。

また、このプロセスによってメンバーは「自分の意見がどのように組織全体の目標に寄与するのか」を再評価する機会も得られます。

(5)合意を形成する

対立を組織の宝にしていくプロセスは、どちらか一方の意見が勝ち、一方が負けるというものではありません。勝ち負けではなく、両者が共に納得できる結論に至るための合意形成が必要です。

この合意形成こそが、組織全体の強化へつながる道筋となります。合意形成の積み重ねは、組織の柔軟性を高め、不測の事態や環境変化に対する対応力の向上にも役立ちます。

異なる意見や状況に直面しても、それを迅速かつ的確に対処できるチーム力があれば、より強力で競争力のある組織へ成長できるでしょう。

(6)対立解消後のフォローアップをする

対立は一度の出来事で終わるものではなく、その後も幾度となく訪れます。そのため、対立の解消後、経験を組織全体の学びにつなげるためのフォローアップが非常に重要です。適切なフォローアップは、組織全体が改善・進化するきっかけとなります。

たとえば、対立があった際の業務手順やフローの見直しが挙げられます。対立の経験から得た教訓をもとに業務手順を再評価し、再発を防ぐための仕組みを整えることで、組織の効率が向上します。とくに、対立の原因が業務フローの不備や曖昧さに起因している場合、その改善は今後のスムーズな運営にも直結します。

また、対立を経験したことで明らかになった組織内のコミュニケーションの問題点や、メンバー間の信頼関係の欠如に対処するために、チーム全体でのフィードバックセッションを設けることも効果的です。こうした取り組みによって、対立が起こってもそれを乗り越えられる文化を醸成できます。

効果的なフィードバックの方法については、以下の記事を参考にしてください。

(7)対立をポジティブに受け入れる習慣を育成する

対立を組織の「お宝発見」と捉える習慣を育てることは、組織にとって非常に価値のある文化となります。メンバー全員が対立を新しい視点を見つける機会とし、それを喜びとして感じられれば、対立を組織の成長のための重要なプロセスと位置づけられます。

具体的には、対立が起こった際には「おめでとう」「ありがとう」といった感謝の気持ちを示し、対立が新たな学びや成長のチャンスであることを全員で共有します。こうした文化が根付けば、メンバーは自分の意見を発信しやすくなり、組織全体のコミュニケーションがより活発化するでしょう。

さらに、対立が生まれるたびに、メンバーが背景や根底にある問題点を深掘りする習慣がつけば、単なる表面的な対立ではなく、より建設的な議論をとおして根本的な解決策や新しい視点を見つけられるようになります。 

自分の機嫌は、自分で取ることも大切

意見の対立が起きる背景には、しばしば承認欲求や自己主張の強さが影響しています。表面的には意見や方針の違いに見えても、その根底には「自分の意見を認めてほしい」「自分の考えが正しいと証明したい」という個人的な感情や思いが存在していることがあります。

人間は誰しも承認されたいという欲求をもっていますが、その欲求が過度に強くなり、他者の意見や感情を顧みずに自己主張を押し通すと、本来はやる必要のない対立まで起こすことになりかねません。

そのため、まずは相手へ意見する前に「なぜ自分はこの意見に固執しているのか」「本当にこの意見は組織全体にとって最良の選択なのか」を自分自身に問い、感情やエゴを超えた本質を捉えましょう。

感情を客観的に捉えることがセルフコントロールの第一歩

自分の行動や考えを冷静に見直すことで、対立の根本的な原因が感情的なものではなく、建設的な議論のなかで解消できる問題であるとわかる場合も少なくありません。

さらに、自分の感情を客観的に捉えられると、対立そのものが冷静に扱えるようになります。自分のなかで「相手に勝たなければならない」という無意識のプレッシャーや「自分の考えが絶対に正しい」という思い込みがあることに気づけば、その時点で自分の感情をうまくコントロールする第一歩を踏み出せます。

そのためには、日頃から自分の機嫌を自分で取るという姿勢を心がけましょう。感情が揺れ動いたときには、深呼吸をして心を落ち着け、自分がなぜその意見にこだわっているのかを再確認するだけでも、大きな変化が感じられるはずです。

心の状態を他人任せにせず、自分自身で上手に舵取りしながら、自己成長や組織の発展につなげられたらベストですね。

意見の対立は組織にとって「宝」を得るチャンス!恐れず受け入れよう

今回の記事では、意見の対立を組織の宝にする方法について具体的に解説しました。意見の対立は、組織やチームにとって「お宝発見」のチャンスです。健全な意見の対立の背後には、それぞれのメンバーが組織やプロジェクトに対して深い関心をもち、より良い結果を求める気持ちが必ず隠れています。

根底にある目的や想いを理解し、適切に対処していけば、さらなるパフォーマンスアップや人間関係の円滑化が期待できます。また、対立により引き出された意見を冷静に深堀りすることで、新しいアイデアや解決策が生まれるだけでなく、組織全体の創造性や多様性を育むことも可能です。

これから組織で対立が起きた際には「宝を発見できる機会」と捉えて、課題の解決に臨んでみてはいかがでしょうか。

お役立ち資料

あなたの組織は対応できている?「心理的安全性」を低下させる3つの問題

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