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テレワークでも組織エンゲージメントを高めるポイント

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今年に入って長く続いたコロナウィルス感染症との戦いは、第五波が収束しつつあります。しかし、第六波への準備が必要ともいわれております。

この後にどのくらいの影響がでるかわかりませんが、いざというときに対応できるようしっかり準備をしていく必要があると思います。今回は、第六波への対応の1つでもあるテレワークを活用して、組織のエンゲージメントを強くすることについて考えていきましょう。

テレワーク継続希望率は約8割、“まだらテレワーク”は続く

前回の記事で、テレワークにより従業員やその上司にさまざまな不安が生じているということについてお話ししました。

2021年に入ってからはさらに先の見えない状況が長く続いていたため、第五波の収束にともない「やっと職場にいける」とホッとしている方も多いのではないでしょうか。久しぶりに同僚と対面でコミュニケーションでき、楽しんでおられるでしょう。

しかし私たちは、なかば強制的に始まったテレワークによって通勤時間を減らし、生まれた時間で自分のプライベートを楽しむことなどを覚えてしまいました。コロナが収束しつつあるからといって、すぐに以前の状態に戻ることも難しい状況です。

テレワーク継続希望意向
コロナ収束後のテレワーク希望頻度

パーソル総合研究所の調査でも、テレワーク継続希望率は78.6%になっています。また、「1週間に1日以上のテレワークを希望している人」が、テレワーク実施者で78.8%、テレワーク非実施者で33%となっており、今後急にテレワークが廃止するということはなく、テレワークが働き方の1つとして定着していくでしょう。さらに、テレワークの日とそうでない日、テレワークの人とそうでない人が混在する“まだらテレワーク”状態になっていくと考えられます。

企業は、第六波への準備と、テレワークが働き方として定着し“まだらテレワーク”状態が通常になるこれからの働き方のなかで、より効果的な組織強化の方法や組織での働き方を検討しなければなりません。

テレワークで起こりうるエンゲージメントの低下

まずは、テレワークが続くことで従業員の心の中に生まれる感情の変化について考察しましょう。

テレワークで起こりうるエンゲージメントの低下

2020年4月、5月、11月にパーソル総合研究所が実施した調査から、テレワークの不安は、全体的に時間とともに徐々に減少していくことがわかっています。

しかし、「非対面のやり取りは相手の気持ちがわかりにくく不安」の項目は5月から11月にかけて増加しており、昇進・昇格への影響懸念や、社内異動希望への影響懸念など、キャリア関連の不安は横ばいでした。

コミュニケーションの課題により、「自分が部署・会社に貢献できていない」「自分は会社に必要とされていない」「チーム内で同僚と相互に良い影響を与えられていない」といった感情をもっている方が多くなっているのでしょう。

また、不安傾向を年代別にみると、若い世代ほど不安を抱えておりケアが必要でした。上司から年齢が離れると不安が増大するということを考えると、上司・部下、先輩・後輩のコミュニケーションは大きな課題です。

コミュニケーションが悪化すると従業員の感情に大きな不安が芽生え、どんどん不安が大きくなり、最終的に仕事の成果に悪影響が出てしまいます。仕事の成果が出ない状況が続くと、企業や組織への不信感が発生しエンゲージメントが低下していきます。

やはり、従業員のエンゲージメントを維持しながらテレワークを継続していくためには、コミュニケーションに注意を払う必要があると考えられます。

エンゲージメント低下で起こる退職リスク

テレワークによりコミュニケーションに課題が生じると、

  • 業務における創意工夫がしにくくなる
  • アウトプットの質や量の低下
  • お客様や同僚へのネガティブな影響
  • 業績へのネガティブな影響
  • 自身の人事評価が下がる
  • 組織へのコミットメントが低下
  • 退職の意向が高まる

このような流れでエンゲージメントが低下し、退職リスクが高まります。

人材不足を採用で補おうとするケースもありますが、上記のような状態に陥っている組織では、テレワークによるオンボーディングがうまくいかない可能性が高く、人材不足を抜け出せずに悪循環に陥りかねません

エンゲージメント低下に対処する3つの方法

テレワークにおけるエンゲージメント低下にどのように対処していくか、3つの方向性についてお話しします。

(1)経営層による理念の伝達、双方向コミュニケーション

ここで、パーソル総合研究所の調査(2020年7月「テレワークによる組織の求心力への影響に関する定量調査」)から対策を考えていきたいと思います。

経営理念浸透が業務上のコンディションに及ぼす影響

調査結果から、従業員のパフォーマンスには、

  • 業務における創意工夫の発揮
  • ワークエンゲージメント
  • 組織へのコミットメント

が影響を与えており、その3つの要素に影響を与えるのが個人の経営理念の浸透ということがわかりました。

特に、今回の調査から、

  • 非経済的な面を重視した経営理念(「従業員の健康配慮重視」「社会貢献活動重視」)がテレワーカーの組織コミットメントを向上につながっている
  • 「経営層の言行一致=理念を体現している経営層の行動・コミュニケーション」がテレワーカーの経営層への共感、理念浸透、コンディション向上につながっている

とわかりました。

この2つを実施している組織では、テレワーク環境下でも従業員の組織コミットメントは低下していません。

このような組織で特徴的なのは、経営層が「メールや社内イントラなどのテキスト」「オンラインで配信した動画」でメッセージを熱心に伝えていることでした。さらに定期的なイベントを開催して社員との双方向コミュニケーションを仕掛けている企業もありました。

私は、この「双方向性」こそが成功の鍵だと考えています。経営層の発する言葉に対して、社員が質問や感想を伝え、経営層がそれに回答する形で実施するのです。

それにより、「理念への情緒的共感」「理念内容の認知的理解」「理念を反映する行動的関与」という3つのレベルで経営理念の浸透につながっています。経営層自らの言葉で理念を伝えていくことがエンゲージメント低下を防いでいるのです。

(2)経営層が埋められない溝を上司が埋めていく

経営者の力だけでは埋められない溝を、上司である管理職が埋めていく必要があります。当然ここでも双方向コミュニケーションが求められることは間違いありません。

部署単位では、管理職が1on1やミーティングなどの従業員とのコミュニケーション機会をうまく設定し、仕事の受け渡しや報告・連絡・相談、結果へのフィードバックなどをテーマに、双方向コミュニケーションをとることが必要です。

お気づきだと思いますが、本来ならば、テレワークでなくてもコミュニケーションは一方通行では問題があるのです。しかし職場にいるとフォローできることが、テレワークだと難易度が上がるため、より双方向性を意識してコミュニケーションをとる必要があります。

(3)従業員本人も上司と積極的にコミュニケーションを取る

最後に、従業員個人の努力も必要となります。対面で働いている場合は上司側が気を配ることもできましたが、テレワークだとなかなか管理職側が声をかけるタイミングをつかみづらい傾向にあります。

従業員側も、上司に対して定期的に報告をし、話したい相談内容などを整理しておきましょう。また、今まで以上に上司にわかりやすく説明する気持ちを持っておくことが大切です。

経営者や上司に頼るだけではなく、従業員自身も話す内容を明確化し、双方向コミュニケーションになるよう努力し、コミュニケーションの活性化を図っていくことが必要です。

結果として、自らの努力でエンゲージメント低下の予防につながります。

働く環境に関わらず、コミュニケーションは大切に

今回はテレワーク下でのエンゲージメント低下に関してお話ししました。

ここまで読むと、テレワークでは必ずエンゲージメントやパフォーマンスが低くなるという思い込みがあるかもしれません。しかしその思い込みは正しくありません。

組織コミットメント

パーソル総合研究所の調査(2020年7月「テレワークによる組織の求心力への影響に関する定量調査」)では、「会社に愛着を感じている」と回答したテレワーカーは出社者の約1.3倍「上司からの期待を超えるパフォーマンスを発揮している」と回答したテレワーカーは出社者の約1.4倍という結果が出ています。テレワーカーのほうが組織コミットメントは上がりやすい傾向にあるのです。

つまり、テレワークだからエンゲージメントやパフォーマンスが低下するのではなく、先ほど解説した双方向コミュニケーションを実施する努力をしないことが、それらの低下につながるのです。

第五波が収束して職場に戻っても、第六波でテレワークが再開しても、その先に“まだらテレワーク”が一般化しても、どのような状況になっても、すべての関係者が双方向コミュニケーションを実現するための努力をすることで、組織のエンゲージメントは高く維持しうるのです。

本記事で、組織におけるコミュニケーションの課題と重要性をご理解いただたら幸いです。どのような環境下においても、日頃から双方向のコミュニケーションを心がけてみてください。

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