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人事評価制度の運用方法【ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ人事が語る、人事評価制度 #2】

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Great Place to Work Institute(GPTW)が主催する2022年「働きがいのある会社」ランキングベスト100に選出された(中規模部門:従業員100~999名部門で第8位)、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ。

プロジェクトファシリテーションとITを軸に、経営戦略検討からIT導入までを支援するコンサルティングファームとして、企業の変革プロジェクトの成功に貢献しています。

今回はHRの渡辺歩さんに同社の人事評価制度について伺いました。全4回となるインタビュー企画、第2回のテーマは「人事評価制度の運用方法」です。

目標設定(ノーミング・セッション)

プロジェクト開始時の「ノーミング・セッション」

ケンブリッジでは、目標管理制度を採用していません。私たちはクライアントサービスであり、ゴールはクライアントと議論してその都度決めるという特徴があります。

また、数か月前に立てた目標がプロジェクト環境変化で、すぐに陳腐化してしまうという背景もあります。ですから、年次で目標を設定するのではなく、プロジェクトごとにノーミング・セッションという場を設け、上長と本人の間で期待値をすり合わせています。

ノーミング・セッションとは、短時間でチームの一体感を高めるための打ち合わせです。メンバーの決意表明、役割の決定、期待値の交換、プロジェクト推進上のルールを決めます。新しい人がプロジェクトに入るときや、みんなで新しいチームを組成してこれから始まりますというときも、ノーミング・セッションをやっています。

ノーミングというのは、「ノーム」つまりプロジェクト内の「規範」を作るという意味が込められています。メンバーの誰がどの職位で、これからどんな仕事をお願いしようとしていて、そこに対してどのような活躍を期待しているか、みっちり話します。

本人からも、得意なこと、苦手なこと、次の昇格のために成長したいポイントなどを話してもらいすり合わせていきます。そのとき、先述した職位ごとの期待値やコンピテンシーを引き合いに出すことが結構あります。

プロジェクト節目に行う「サンセット・ミーティング」

プロジェクトに終わりには、サンセット・ミーティングを実施します。これはプロジェクトの節目(3か月目安)に行うミーティングです。お客さまと行ったり、他プロジェクトのメンバーに観察者として入ってもらったりして、良かった点や改善点、課題などを整理し、次のプロジェクトに生かします。

ノーミング・セッションとサンセット・ミーティングは対になっています。このサンセット・ミーティングで、ノーミング・セッションでの発言を振り返り、実際どうだったかをみんなで話し合います。そして、PM(プロジェクト・マネージャー)は、サンセット・ミーティングで議論した内容もインプットしながら、評価内容を検討していきます。

ただ、ノーミング・セッションで表明したことがそのまま人事評価に反映されるかというとそうではなく、一般的な目標管理制度よりはゆるく紐付いているくらいです。そこまで厳密に、ノーミング・セッションでの発言をもとに「できた/できていない」を判断するわけではありません。

評価スケジュール

四半期と通期

評価スケジュールは、プロジェクト期間と年次の組み合わせで行っています。まず、従事したプロジェクトごとに本人に評価が渡されます。1年間のプロジェクト評価を集約し、年次評価を行います。

同一プロジェクトに長く従事する場合であっても、3か月ごとにプロジェクト評価を行います。プロジェクトのお客さまとの契約期間が、標準的に3か月で区切るようにしているためです。3か月ごとにお客さまと「次の3か月で支援すること」「支援の対象外とすること」といった期待値のすり合わせをしてからから契約を締結します。

次の3か月の契約内容に沿って、メンバーの役割分担も変わるため、3か月サイクルで評価を行うのが合理的ということです。

評価制度の見直し

毎年1回、評価制度を見直す

評価制度は、大小さまざまなものを含めると毎年1回、何かしら変更しています。最近でいえば、評価の時期を変えました。今までは春に1回やる人と秋に1回やる人に分けていましたが、評価基準の揃え方が難しくなってきたので、今後は全員年度末に行う形に変更しました。

現在の評価制度がきっちり固まったのだとは誰も思っていなくて、必要に応じて制度を見直すようにしています。

ベストな働き方は、状況・人によって異なります。メンバーも「こうすればもうちょっと制度が良くなるのでは?」と意見をたくさんくれますし、私もそれに食らいつきながら改善を重ねています。

認識の相違を埋める

「評価制度をどのように改善してきたか」というと、認識の違いをずっと埋め続けてきた歴史だと思います。

一例を挙げると、プロジェクトの難易度の捉え方があります。先述した通り、当社は成果主義ではなく能力主義になります。難しいプロジェクトだと成果や能力は発揮しづらいですし、自社の知見を活かしやすいプロジェクトだとお客さまにすぐ認められやすいものです。

難易度の違いに応じて、プロジェクトが難しかったら少し緩めに評価して、プロジェクトが簡単なのだとしたら少し厳しめに評価する、という考え方を持っています。

ただ、プロジェクトが難しかったら全員甘く見ていいのかという点は、必ずしもそうとは限りません。過去に、難易度が高いと言われているプロジェクトで、新入社員も含めて全員評価が上ブレしたことがありました。

そこから、プロジェクトの難易度に沿って一律ではなく、プロジェクトの中で本人が割り当てられたタスクの難易度によって調整すべきだという認識を合わせ、その考え方を社内に発信しました。これは一例ですが、私の前任の頃からこういった認識のすり合わせをやり続けています。

自分の評価結果を社内に公開する仕組み

1年ほど前には、「自分の人事評価を社員全員に公開するかしないかを選べる」という仕組みを導入しました。きっかけは、PMが「新しくうちのプロジェクトにくる〇〇さんってどんな人?」と、前のプロジェクトの評価者に聞いているケースが多かったということです。

そのとき、「あの人、ここはすごく良いけど、ここはちょっと手がかかるよ」といったメンバーの特性を説明することを自発的にやっていたんですよね。

これは良い取り組みだと考え、「よく考えたら評価内容を隠す必要はないのでは?」という話が出てきたのですが、「全員が公開したいわけじゃないから、任意制にしよう」との議論を経て、人事評価を社内に公開する仕組みを導入しました。

評価システムも改修が必要だったのですが、この仕組みはおおむね良い反響だと感じています。

システム改修後の評価を集計してみると、大体半分くらいのメンバーが公開を選んでいて、実際プロジェクトに入る前に「僕の人事評価は公開しているので見ておいてください」というやりとりが生まれています。

公開する本人としても、おそらくマネージャーから扱われやすくなるのだと思います。自分の得意なことや不得意なこと、これから伸ばしてほしいことが評価に書かれているので、それを異なるプロジェクトの次のマネージャーに見てもらうというのは、良い自己開示のツールという認識なのだと思います。

負担感の軽減

ちょうど先日、評価者の負担が高すぎるのでは、という議論になりました。そこで今は、評価される本人が自分の評価を下書きする「セルフレビュー」という取り組みをトライアルで始めたところです。

評価対象期間の事実収集やコンピテンシー評価を、評価される本人が書き、それをベースに評価者が人事評価を作成するという仕組みです。評価者の負担を減らす以外にも、評価される側が評価する側の擬似体験をする効果もひそかにねらっています。

評価者も「人事評価の作成は大事なこと」と考えてくれていると思いますが、時間がなく、評価者の多くは苦しい思いをしていると思います。なかには、後回しにしてもいいことはないからと、毎日毎日フィードバックを少しずつ書きためている評価者もいますが、少数派です。

どのように評価するかは評価者が決めることですが、少なくとも「こんな役割を担った」「こういう業務を担当した」などは、評価者よりも本人の方がよく知っているはずです。そのファクト収集は本人がやっていてもいいんじゃないかというのが、このセルフレビュー導入の最初のきっかけです。

セルフレビューの効果

セルフレビューは、一部の現場では自発的に行われていた仕組みで、それを会社標準のプロセスとして格上げしたという位置付けづけです。

自己評価の内容を見て評価者が評価を書くのは、バイアスがかかって公平性が保たれない懸念も決してゼロではないです。ですが、そこは職位ごとの期待値とコンピテンシーでチェックして保ってほしいと思っています。

また、セルフレビューの裏目的として、自己評価が戻ってきたときに、評価者と自分の評価のズレに早めに気づいてくれる効果があると思っています。

「この人はちょっと厳しい評価になりそうだな」と思っていたけれど、本人から上がってきたのは自信満々の評価となると、ズレが大きいですよね。そういうメンバーの評価は優先度を上げて書いて、早めにフィードバックするといった行動にもつながりそうです。

セルフレビューは、そういうアンテナが先に立つという効果もあると考えています。

次回は人事評価におけるフィードバックについて解説していきます。

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