人事データ分析の方法とは?必要なデータ項目と手順、活用事例をわかりやすくご紹介
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目次
近年、人事領域においてデータにもとづく意思決定の精度向上に取り組む企業が増えています。人事データの適切な分析によって、離職率の改善や最適な人材配置、効果的な育成プログラムの設計など、さまざまな課題解決につながります。
本記事では人事データ分析の基本から実践的な活用方法まで、具体例を交えながら解説します。
人事データ分析とは?意思決定の精度向上の手段
人事データ分析とは、企業内の人事や人材に関するさまざまなデータを収集・分析し、経営判断や人材マネジメントの改善に活用することを指します。
従来、人事領域では経験や勘に頼った意思決定が為される場面も少なくありませんでした。ですが近年のDXの進展にも伴い、人事領域でもデータドリブンな意思決定による精度向上に取り組む事例が増えています。
人事データの分類や人事データベースの構築方法などは、下記の記事で紹介しています。
人事データ分析の目的
人事データ分析の主な目的は大きく3つ挙げられます。
(1)組織や従業員の現状把握と課題特定
定量・定性データを組み合わせた、組織の状況や課題の発見です。たとえば、部署別の残業時間と生産性の相関分析により、業務効率化が必要な領域を特定できます。
(2)起こり得るリスクの予防
過去のデータ分析から将来起こり得るリスクの予測です。たとえば従業員の行動データや評価データから、離職リスクの早期発見やメンタルヘルス関連の予防などが可能です。
(3)人事施策の効果測定と最適化
採用や育成、評価など、施策による成果の定量的な把握です。たとえば研修プログラムであれば受講者の前後の業績変化などを、投資対効果の判断に活かせます。
人事データ分析を行なうメリット
人事データ分析を適切に実施できれば、以下のようなメリットが期待できます。
(1)人材配置の最適化
従業員の過去評価や業績、スキル、従業員満足度など、さまざまなデータを分析し、適材適所の配置に活かせます。とくに配置後の生産性や組織パフォーマンスを定量的に測定することで、継続的な改善が可能になります。
(参照)山崎 憲 - 「人事労務管理と人的資源管理におけるinternalとexternal」
(2) 離職リスクの低減
勤怠データや1on1の記録、エンゲージメントスコアなどの複合的な分析により、離職リスクの高い従業員を早期に特定できます。適切なタイミングでの介入が可能となり、優秀人材の維持につながります。さらに、キャリア意向データを活用した戦略的な異動・配置により、従業員満足度の向上も期待できます。
(3) 効果的な人材育成
従業員の現在のスキルや評価などの分析により、従業員の現状とあるべき姿とのギャップを正確に把握できます。スキルギャップの特定により、個々の従業員に最適化された育成プランを策定できます。また、研修効果の定量的な測定により、育成施策の継続的な改善も実現できます。
(4) 公平な人事評価
業績やスキル・能力、360度評価など、データを包括的に活用することで、より客観的な評価基準の策定に役立てられます。またリアルタイムでのデータ収集により、タイムリーなフィードバックが可能となり、従業員の継続的な成長を支援できます。
(5) 採用精度の向上
社内ハイパフォーマーの特性を詳細に分析し、採用要件をより明確化できます。分析結果にもとづく選考プロセスの最適化により、採用精度の向上が期待できます。採用後のパフォーマンスを追跡・分析することで、採用基準の継続的な改善も可能です。
人事データ分析で扱うデータ項目
人事データ分析では、さまざまな種類のデータを活用します。
項目 | 具体例 |
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基本データ |
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勤怠・給与データ |
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採用についてのデータ |
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キャリア希望やエンゲージメントについてのデータ |
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資格・スキルについてのデータ |
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人事評価についてのデータ |
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人事データ分析を行なう手順
人事データ分析は、基本的に以下4つのステップで実施されます。
(1)目的や仮説を設定する
まず、目的や仮説を経営課題と紐づけて明確化します。たとえば「離職率の改善」という課題に対して「若手社員の残業時間と離職率に相関がある」など検証できる仮説を立てます。仮説についてステークホルダーとの合意形成を図り、具体的な成果指標を設定しましょう。
(2)人事データを収集する
目的や仮説に沿って必要なデータ項目を洗い出し、データを収集します。収集したデータは必要に応じて集約・整備し、分析可能な状態にします。
既存のデータがない場合は従業員からの収集が必要です。また複数のシステムからデータを収集する場合は、形式の統一やデータの抜け漏れの確認、修正なども必要です。
人事データベースを構築し、さまざまなデータを一元管理できる環境を整えておくことで、よりスムーズに分析をはじめられます。
(3)分析結果から人事施策を立案
データ分析から得られた気づきをもとに、具体的な施策を立案します。たとえば離職率分析の結果から「若手社員向けメンター制度の導入」などの施策を立案。必要な予算やリソースの確保、実施スケジュールなど、詳細な計画を立てます。
(4)実施した施策の効果を検証
設定したKPIを測定し、効果を検証します。結果をもとに改善点を特定し、次の検証に活かします。
人事データ分析を行なう際の課題
人事データ分析を実施する際、よくある課題として以下の項目が挙げられます。
(1)組織体制の課題
1つ目はデータの管理体制の不備です。データの管理部署が未確定であったり、複数部署での分散管理により一元化できていなかったりといったケースが多くみられます。先進企業では、人事部内にデータ管理の専任チームを設置するなど、IT部門との連携体制を構築し、課題に対応しています。
(2)実務プロセスの課題
データ基盤は整備されているものの、具体的な分析方法や活用方法が確立できていない企業も少なくありません。この課題に対しては、段階的な導入や外部専門家との協業によるノウハウの蓄積などが効果的です。
(3)人材面の課題
データ分析可能な人材の不足は、多くの企業に共通する重要課題です。
リクルートマネジメントソリューションズによる「人事データ活用に関する実態調査」によると、「人事データ活用」の実態として「人事スタッフの分析・活用するスキルが足りない」との回答が多く挙げられています。
人事データ分析に必要なスキル
効果的な人事データ分析を実施するためには、以下のようなさまざまなスキルが必要です。
項目 | 詳細 |
---|---|
データ分析の基本的なスキル |
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ビジネススキル |
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人事課題、施策への転換力 |
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SmartHRによる人事データ分析の事例
【事例1:株式会社プレイド】人材領域における意思決定の質が向上
株式会社プレイドでは、SmartHRの分析レポートを活用。従業員数の推移や労働時間、人員構成の比率など、日々の人事労務の活動でSmartHRに蓄積した最新のデータをもとにレポートを作成、分析に活かしています。
担当者の大谷さんは「退職に関するデータであれば、全体の退職率と、部門別の退職傾向を掛け合わせて見ている」「全体では異変がないように見えても、細かく見ていくと問題が隠れていることも多い」と話します。
また、取締役の髙栁氏は入退社の比率など、チーム別、事業別に人事データの推移を確認。「過去の推移だけでなく、将来の傾向を予測し必要な対策を打てるようにすることも重視」しているそうです。
株式会社プレイドの事例の詳細は以下の記事をご覧ください。
【事例2:株式会社ウェルカム】ペーパーレス化から定着率算出まで。バックオフィス強化の道のり
株式会社ウェルカムでは、SmartHRを活用して人事労務業務のペーパーレス化だけでなく、人事データの分析にも幅を広げています。
SmartHRの分析レポートを活用して、とくにアルバイトの定着率を分析しています。同じアルバイトでも、学生の卒業による退職と、主婦やフリーターの退職は理由が異なるため「退職の背景を正確に把握できるよう、学生の方、主婦の方とわかるように雇用契約時にフラグを立て、属性別に分析できるようにしている」そうです。
株式会社ウェルカムの事例の詳細は以下の記事をご覧ください。
SmartHRで人事データ分析を効率的にはじめよう
SmartHRでは、日常的な人事・労務の業務を通じて、基本的な人事データを1か所に集約・蓄積。集めた人事データの を分析に簡単に活用できます。
たとえばHRアナリティクス機能では部署・役職・雇用形態などのデータだけでなく、人事評価やスキル管理機能など幅広いデータを横断して分析可能。離職分析やハイパフォーマーの特定など、組織力強化に向けた示唆を得られます。
HRアナリティクス機能について詳しく知りたい方は、以下の資料をご覧ください。
お役立ち資料
3分でわかる!SmartHRのHRアナリティクス
SmartHRの「HRアナリティクス」は、人事データをさまざまな掛け合わせで分析し、組織づくりの示唆が得られる機能です。SmartHRなら、業務を通じて自然と正確な人事データが蓄積されるため、活用したいときにすぐ人事データの分析ができます。
Q1. 人事データ分析とは何ですか?
企業内の人事関連データを収集・分析し、人材マネジメントの改善や経営判断に活用する戦略的アプローチです。AIや機械学習などの技術も活用し、客観的なデータにもとづく意思決定を可能にします。
Q2. 人事データの項目にはどのようなものがありますか?
基本的な個人情報、勤怠情報、給与データ、評価結果、研修履歴などの従業員に関するさまざまなデータが含まれます。また、組織やプロジェクトのパフォーマンスデータなども重要な分析対象となります。
Q3. 人事データ分析の目的は何ですか?
従業員と組織の生産性向上、離職率の改善、適材適所の人材配置、効果的な人材育成など、人材マネジメントの最適化を図ることが主な目的です。データにもとづく意思決定により、より効果的な人事施策の立案・実行が可能となります。