原則、会社は給与所得者に対して年末調整を行うことが必要です。ただし、給与所得者であっても年末調整の対象者とならない場合もあります。
そして、そのようなケースでは個々で確定申告を行ってもらう必要があります。
今回は、年末調整と確定申告の対象者の線引きについて解説します。
年末調整ではなく「確定申告」が必要になる場合
そもそも、確定申告とは所得税や復興特別所得税といった所得にかかる税金の金額を計算し、正しく納めるための手続きです。
確定申告の「時期」
毎年2~3月の限られた期間に、申告書に必要な書類を添付したうえで税務署に申告をし、納税を行います。
納めすぎた所得税があれば、確定申告の手続きによって還付を受けられます。
確定申告の「対象者」
基本的に、確定申告の対象となっているのは会社役員や自営業者などですが、年末調整の対象者として該当しなかった場合には確定申告をしなければいけません。
また、会社勤めをして給与所得を受けているサラリーマンなどであっても、確定申告の対象となるケースもあります。
- 年収が「2,000万円」を超えている場合
- 配当所得や不動産所得、株式売買など本業の収入とは別に副業として得ている収入がある場合
加えて、収入額が20万円を超えている場合にも確定申告が必要となります。ただし、申告が必要となるのは次の2つの条件に該当しない場合に限定されます。条件の1つは、給与所得の収入金額から、基礎控除や医療費控除、寄付金控除、雑損控除を除く所得控除すべてを差し引いた金額が150万円以下であることです。そして、もう1つの条件は、1つ目の条件とともに、給与所得と退職所得以外の所得合計金額が20万円以下であることとなっています。
また、上記以外にも、住宅ローン控除の対象となっている場合には確定申告が必要です。ただし、住宅ローン控除対象者で確定申告を行わなければいけないのは、住宅を購入した初年度だけとなります。2年目以降は年末調整の対象となり、確定申告は不要となるため注意しましょう。
年末調整の仕組みと対象範囲
給与所得者の所得税は、通常、会社があらかじめ給与から源泉徴収しています。しかし、源泉徴収されている所得税額は、同じく給与天引きされている住民税額とともに、概算として算出されている金額です。
地震保険料控除や生命保険料控除は考慮せずに計算されているため、実際に納めなければいけない所得税額と一致していない場合がほとんどです。また、家族構成に変化があったことで扶養者数が変われば、税額は異なってくるものです。そして、このように「本来納めるべき税金額」と「源泉徴収で納付した税金額」の間に生じた過不足分を調整するための手続きが年末調整です。
納税額に年末の段階においての個別状況を反映させ、年末調整が行われれば確定申告は不要となります。
年末調整の対象となるのは、原則、年末の時点で会社などに勤務している人です。1年を通じて勤務している人のほか、年の途中で就職した人も年末まで勤務していれば、これに該当します。一方、年の途中で行う年末調整もあります。対象となるのは、たとえば、海外支店などへの転勤で国外に住所を置くことになった非居住者や、パートタイマーの退職者でその年に支払う総給与額が103万円以下になる人などです。
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「年末調整」と「確定申告」の線引き
年末調整の対象となるか、確定申告が必要となるかの線引きは「年末調整の対象者かどうか」を目安にして判断するようにしましょう。
年末調整は年末に行う手続きで、確定申告は年末調整が行われる時期より後となる翌年の2~3月に毎年行われる手続きだからです。
年末調整の対象とならない人であれば、必然的に確定申告の対象者ということになります。また、年末調整の時期は冬の賞与や12月の給与日と重なることもあるため、繁忙期となりやすく、年末調整の担当者にとっては事務処理の負担が増えることにもなりかねません。
そのため、事務処理の負担を減らしたいなら、必要となる書類を早めに提出してもらえるように従業員に対して促しておくことが大切です。
スムーズに提出してもらえるように、書類の配布の際には記入例や事例集なども併せて配るなどの工夫をするとよいでしょう。
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