【令和2年】年末調整「給与所得者の基礎控除申告書」の書き方・計算方法を税理士が解説

2020.10.15 ライター: 税理士 高橋 創

こんにちは。税理士の高橋 創です。

今年も早いもので、年末調整について考えなければならない時期がやってきました。

従業員サイドから見ると、年末調整は何枚かの書類に毎年同じような内容を記載して会社に提出すればいつの間にか勝手に完了しているようなものなのかもしれません。

ところが、令和2年より所得税のルールが大幅に変わり、皆さんが記載する書類も大きく変わることとなりました。

今回から登場するのが「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」です

長すぎてまったく名前を覚えられる気がしない新キャラですが、この書類はその名のとおり3つの申告書が一体となっており、4種類の控除が計算されるという盛りだくさんなものとなっています。

これから3回にわたり、それぞれの控除の内容や3つの申告書の記載方法を具体的に解説しますが、今回はまず「給与所得者の基礎控除申告書」の書き方について解説します。

【令和2年】年末調整 給与所得者の配偶者控除等申告書の書き方・計算方法を税理士が解説

【令和2年版】年末調整「所得金額調整控除申告書」の書き方・計算方法を税理士が解説

控除の基準となる「合計所得金額」

早速本題に、と言いたいところではありますが、まずは「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」全体に関する基礎知識のご紹介です。

出典:国税庁「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」

「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に含まれる3種類の申告書には、すべて、「合計所得金額」を記載する欄があります。

すなわち、この用紙に必要事項を記入する際にはまずこの「合計所得金額」とはなにかを知る必要があります。

「合計所得金額」は、その名の通り「その年に稼いだ利益(所得金額)の合計額」です。そこだけ聞くと簡単なようにも思えますが、この計算は一筋縄ではいきません。

所得税では稼いだ収入を10種類の区分に分け、それぞれの方法により利益を計算するため、収入の種類に応じて計算の仕方を変えなければならないためです。

本題からは離れてしまいますのでここでは深く触れませんが、計算方法を簡単にご紹介いたします。これを見るだけで、なかなか大変な作業が発生するのが伝わるのではないでしょうか。

  • 利子所得:収入金額
  • 配当所得:収入金額-元本取得に要した負債の利子
  • 不動産所得:総収入金額-必要経費
  • 事業所得:総収入金額-必要経費
  • 給与所得:収入金額-給与所得控除額
  • 退職所得:(収入金額-退職所得控除額)×1/2
  • 山林所得:総収入金額-必要経費-特別控除額(50万円)
  • 譲渡所得:総収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額(50万円)
  • 一時所得:総収入金額-その収入を得るために支出した金額-特別控除額(50万円)
  • 雑所得 公的年金等:収入金額-公的年金等控除額
  • 雑所得 公的年金等以外:総収入金額-必要経費

そしてややこしい分類によって計算した所得金額を以下の方法で合算したものが合計所得金額です。

  1. 事業所得、不動産所得、給与所得、総合課税の利子所得・配当所得・短期譲渡所得及び雑所得の合計額(損益通算後の金額)
  2. 総合課税の長期譲渡所得と一時所得の合計額(損益通算後の金額)の2分の1の金額
  3. 退職所得金額、山林所得金額

合計所得金額は、上記の1〜3を合算することで算出できます。

※申告分離課税の所得がある場合には、それらの所得金額の合計額を加算した金額です。この際、長(短)期譲渡所得については特別控除前の金額で合計する必要があります。

この金額を算出するためには収入や経費を集計する必要がありますので、「プチ確定申告」とでもいうべきかなり大変な作業です。

この計算を間違えて控除の金額が異なるような場合、のちのち税務署から突然修正の連絡が入ることもありますが、裏を返せば「間違えていたら修正すれば良い」というものでもあります(もちろん、ミスなくできるのがベストです)。

求められているものはあくまで「合計所得金額の見積額」ですので、あまり思い詰めずに「今現在はこれが正しいと思う!」くらいの気持ちで取り組んでみてください。

国税庁のページも、参考にしながら進めていきましょう。

給与所得者の基礎控除申告書とは

基礎控除は、納税者の本人の最低限度の生活を維持するため、生活に必要な部分には税金を課さないようにするために設けられたものです。

令和元年分以前の基礎控除の金額は一律38万円だったため、控除を受けるための書類は必要ありませんでした。しかし、令和2年からは納税者本人の合計所得金額に応じて控除額が異なることとなりました。

出典:国税庁「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」

年末調整においてその基礎控除の有無を判断するためには、会社側で合計所得金額を認識する必要があります。そのために設けられたのが「給与所得者の基礎控除申告書」です。

なお、合計所得金額が2,500万円を超える方は基礎控除を受けられないため、「給与所得者の基礎控除申告書」を記載する必要はありません。

給与所得者の基礎控除申告書の書き方

さて、それでは本題となる給与所得者の基礎控除申告書の書き方をご紹介します。

出典:国税庁「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」

「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」欄

こちらには先ほどご紹介した合計所得金額の見積額を「(1)給与所得」と「(2)給与所得以外の所得の合計額」に分けて記載します。

給与所得だけが特別扱いされているのは、そもそも年末調整自体が給与所得者を対象としたものであるためです。

(1)給与所得

まずは上段(1)の給与所得。

こちらに関しては給与の額面金額である「収入金額」と給与に関する利益である「所得金額」を記載します。

「額面は会社が把握しているんだから勝手に計算してくれないものか……。」と思われる従業員の方もいらっしゃるかもしれませんが、この申告書はあくまでも自ら申告するもの。がんばって集計しましょう。

「収入金額」が集計できたら次は所得金額の計算ですが、こちらは用紙の裏面に「早見表」のようなものが記載されています。

出典:国税庁「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」

例えば、年間の給与収入が350万円である場合、該当する行の右側の算式に金額を当てはめると、

(1)350万円÷4(千円未満切捨て)=875,000円

(2)875,000円×2.8-80,000円=2,370,000円

となります。

この金額が給与所得の「所得金額」です。なお、複数の会社などから給与をもらっている方についてはその給与の合計額をもとに計算をする点には注意が必要です。

(2)給与所得以外の所得の合計

給与所得が終わったら次は「(2)給与所得以外の所得の合計額」です。

こちらには給与所得以外の所得を合計所得金額の項目でご紹介したとおり集計し、所得金額の合計額のみを記載します。

そして、(1)(2)の「所得金額」に記載された金額の合計額が「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」となります。

「○控除額の計算」欄

「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の計算に応じた区分の□にチェックをつけ、その右側にある控除額を「基礎控除の額」欄に転記しましょう。

基礎控除の計算はこれで終わりです。

「給与所得者の配偶者控除」で使用するため、合計所得金額の見積額が1,000万円以下の場合には(A)(B)(C)のいずれかを「区分Ⅰ」に記載するのをお忘れなく。

出典:厚生労働省「令和2年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」

おわりに

令和元年までの「全員一律」ではなくなったものの、基礎控除自体は難しいものではありません。

しかし、給与所得以外の収入がある方にとっては実質的に確定申告と同様の作業である「合計所得金額の見積額の計算」は難関です。この申告書の提出期限が「その年最後に給与の支払を受ける日の前日まで」ということを考えると、なかなか完璧な計算をするのは難しいかもしれません。

もちろんベストを尽くす必要はあるかと思いますが、完璧を期するあまり思い詰めてしまうとイヤになってしまいますので、個人的にはある程度気楽に計算してもいいように思います。

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税理士 高橋 創

専門学校講師、会計事務所勤務を経て、2007年に「高橋創 税理士事務所」を開業。また、新宿ゴールデン街にBar「無銘喫茶」を構える。著書に「図解 いちばん親切な税金の本 20-21年版」(ナツメ社)、「フリーランスの節税と申告 経費キャラ図鑑」(中央経済社)、「桃太郎のきびだんごは経費で落ちるのか? 日本の昔話で身につく税の基本」(ダイヤモンド社・2020年12月発売予定)など。
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