ロクイチ報告「高年齢者・障害者雇用状況報告書」の書き方・注意点を解説
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こんにちは。アクシス社会保険労務士事務所の大山敏和です。
今回は、毎年6月1日現在の高齢者及び障害者の常用労働者数を報告するために用いられる「高年齢者雇用状況報告書」と「障害者雇用状況報告書」の書き方について解説します。
それぞれの報告書について概略を説明した後、ポイント別に書き方の詳細を解説します。
なお、例年これらの報告書は、7月15日を報告期限としていますが令和2年は8月31日(月)まで延長されることが決まっています。
高年齢者・障害者雇用状況報告書とは
まずは、それぞれの概要を解説します。高年齢者雇用状況報告および障害者雇用状況報告は、6月1日時点での状況を報告するため、通称「ロクイチ報告」または「6/1報告」とも呼ばれています。
高年齢者雇用状況報告書とは
「高年齢者雇用状況報告書」は、高齢者雇用についての企業の姿勢と雇用状況を定期的に報告させることにより、高年齢者の安定した雇用確保の促進、定年退職者その他の高年齢退職者に対する就業機会の確保等に資するためのものです。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律第52条第1項」によって提出が義務付けられており、企業の就業規則等における「定年」や「継続雇用制度」の現状と今後の予定に関して報告する内容になっています。
常用労働者(※1)が31人以上(※2)の企業に報告義務があり、毎年6月頃になるとハローワークから用紙が郵送されてきます。
(※1)常用労働者:雇用契約の如何を問わず、1週間の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、1年を超えて雇用される者(雇用される見込みの者)
(※2)常用労働者が31人:法的根拠はないので、次回以降変更される可能性があります。
障害者雇用状況報告書とは
「障害者雇用状況報告書」は、障害者の雇用状況などを厚生労働大臣に報告することで、障害者の雇用促進等に係るハローワーク等による助言・指導等に用いるものです。
「障害者の雇用の促進等に関する法律第43条第7項」で提出が義務付けられており、常用労働者数が45.5人以上の事業者が対象です。
常用労働者が45.5人未満の企業(独立行政法人、公団、公庫等の 一定の特殊法人については常用労働者が 40.0 人未満)は、障害者雇用の義務はなく、報告の義務もありません。
なお、障害者雇用状況報告書については、短時間労働者(※3)の在籍数も報告の対象となります。
(※3)短時間労働者…常用労働者のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者
高年齢者雇用状況報告書の書き方
まずは、高年齢者雇用状況報告書の書き方を解説します。なお、両報告書共通で、記入にあたって産業分類番号の記入欄がありますが、これは、日本標準産業分類表を参照して記入します。
いずれの報告書も作成には大きな工数が必要なります。これを機に労務業務の効率化を検討してはいかがでしょうか?
ポイントを以下の資料にまとめましたので、ぜひご活用ください。
(ポイント1)定年、継続雇用
以下で引用する丸数字(①、②など)は、報告書に印刷された番号に従っています。高年齢者雇用状況報告書様式と照らし合わせて書き方をチェックしてください。
⑦定年、⑧定年の改定予定等
「⑦定年」、「⑧定年の改定予定等」については、現状を正直に回答すればよいのですが、65歳まで雇用が維持されない企業では就業規則の見直しが必要です。
⑨継続雇用制度
「⑨継続雇用制度(※4)」について、⑨のイにチェックを入れた場合、b「対象」における(イ)、(ロ)それぞれの記入方法は以下です。
(イ)は「希望者全員を対象 _歳まで雇用」の部分をまず書きます。
続いて、平成25年3月31日までに労使協定により定年後に雇用を延長するかどうかの基準(個人評価)を設けていた場合、今年度の誕生日において男性なら63歳以降、女性なら61歳以降の人で継続雇用の基準を満たした人を何歳まで雇用するかを「更に基準に該当する者を _歳まで雇用」の部分に答えます。なお、継続雇用の年齢制限(上限)がなければ、99と答えます。
(ロ)は定年後の継続雇用制度はない(または運用でカバーする)場合にチェックを入れます。
(※4)継続雇用制度…定年後も高年齢者の希望に応じて雇用を延長する(雇用機会を確保する)制度
⑩継続雇用制度についての導入・改定方針(状況)
「⑩継続雇用制度についての導入・改定方針(状況)」は現時点での状況を記入します。
⑪70歳以上まで働ける制度等の状況
「⑪70歳以上まで働ける制度等の状況」は⑨で雇用年齢の上限が70歳以上なら、答えが重複するのでここには答えなくて構いません。
(ポイント2)人数
⑫常用労働者数、⑬過去1年間の離職者の状況
「⑫常用労働者数」は6月1日現在の年齢で区分します。
「⑬過去1年間の離職者の状況」は離職時点の年齢を記入し、⑬の「うち求職活動支援書を作成した対象人数」には「求職活動支援書」を作成、交付した人数を記載します。
「求職活動支援書」とは、高齢者が自主的に職務経歴書を作成するための参考となる情報(高年齢者の職務の経歴、職業能力等の再就職に資する事項)を記載した書面です。昨年度62歳以上(65歳未満)の男性及び61歳以上(65歳未満)の女性で、継続雇用の基準に該当せず離職が予定されている場合に、在職中のなるべく早い時期から該当する高年齢者が主体的に求職活動を始められるように交付します。
⑭過去1年間の定年到達者等の状況
「⑭過去1年間の定年到達者等の状況」について、各項目は以下のような人数を記入します。
- (b)…65歳未満の定年制を定めた会社で、定年以降の雇用を望まなかった人数
- (c)…継続雇用を希望したので基準に従い継続雇用した人数
- (e)…継続雇用を希望したが基準に従い継続雇用しなかった人数
なお、すでに定年年齢が65歳以上の場合、(a)と(b)が同じ人数になり(c)(d)(e)(f)は0になるはずです。
「⑮過去1年間の改正法に規定する経過措置に基づく継続雇用の対象者に係る基準の適用状況」については、定年時に継続雇用した人数のうち、それぞれ以下のように記入してください。
- (b)…継続雇用の更新時に更新を希望せず退職した人数
- (c)…更新時に更新を希望し継続雇用の基準に従い継続雇用した人数
- (d)…更新時に更新を希望したが継続雇用の基準に従い継続雇用しなかった人数
障害者雇用状況報告書
続いて、障害者雇用状況報告書を書く上でのポイントをお伝えします。 厚生労働省の障害者雇用状況報告書様式と照らし合わせてご確認ください。
(ポイント1)除外率
除外率設定業種に該当しない場合、報告書の「C 事業所別の内訳」は書く必要がありません。しかし、除外率設定業種に1事業所でも当てはまる場合は、全ての事業所を事業所の所在地別に記入し、⑦除外率の該当欄に除外率設定業種となる事業所の除外率を記入します。
したがって、除外率設定業種となる事業所においては、⑧の(ハ)常用雇用労働者の数に除外率を乗じ(小数点以下の端数が出たら切り捨て)、⑧の(ハ)常用雇用労働者数からその値を減じて、⑧の(ニ)法定雇用障害者の算定の基礎となる労働者の数の欄に記入します。
⑧(ハ)×除外率=除外数
⑧(ハ)-除外数=法定雇用障害者の算出の基礎となる労働者数(記入)
(ポイント2)障害分類別、程度別人数
「⑨常用雇用身体障害者、知的障害者及び精神障害者の数」にはそれぞれの人数を書きますが、障害者の定義、障害者の程度にはそれぞれ違いがあるので、以下にまとめます。
- 身体障害者…身体障害者手帳の等級が1級~6級の方及び7級に該当する障害が2以上重複する方
- 重度身体障害者…このうち等級が、1級、2級の方及び3級に該当する障害が2以上重複する方
- 知的障害者…知的障害者更生相談所や精神保健福祉センターなどにより知的障害者と判定された方
- 重度知的障害者…養育手帳で「A」に相当する程度と判定されている方及び障害者職業センターにより重度知的障害者と判定された方など
- 精神障害者…精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方。なお、精神障害者に「重度」という程度はありません。
(ポイント3)実雇用率の計算方法
「⑪実雇用率」と、あらかじめ決められた法定雇用率(障害者雇用率)との比較で、障害者雇用率以上の障害者雇用状況が実現できているかを判定しますが、このときの「⑩計」の人数は、障害者の実人数ではなく、評価の重みによって計算した人数を用います。評価の重みとは、重度障害者の数を実人数の2倍に、また障害者の内の短時間労働者を実人数の0.5倍にするというものです。
実雇用率は「⑩計」の数を⑧の(ニ)の数で除して100倍した数の小数点以下第3位を四捨五入して求めます。
実雇用率=⑩計÷⑧(ニ)×100
このようにして得られた障害者別の合計数を⑩計に記入し、上記の通りに「⑪実雇用率」を求めます。なお、⑨の各欄の()内には、前年の6月2日から本年6月1日までに新規に雇い入れた人数を内数として記入します。
最後に、「⑫身体障害者、知的障害者又は精神障害者の不足数」を記入します。不足数は計算結果の小数点以下第1位までです(不足していなければ0と記入)。
おわりに
以上が高年齢雇用状況報告書と障害者雇用状況報告書の書き方についての解説でした。
令和2年は、新型コロナウイルスの影響で報告期限が8月31日までに延長されていますが、自社の全ての事業所について高年齢者の雇用状況や障害者の人数をまとめ、回答するにはそれ相当の時間がかかりますので、早めの対応をしていただきたいと思います。