アルバイトを戦力化するための「研修・トレーニング」【飲食・小売業、人事カイカク #13】


(前回の「飲食・小売業、人事カイカク #12」はこちら


こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。

新年度がスタートする4月前後はアルバイトの入れ替わりの時期ですが、6月以降新しい環境に慣れ、スケジュールや生活のパターンがおおむね決まると、アルバイトの応募は活発になり、飲食・小売業では採用、トレーニングにと忙しい日々になります。

前回の連載【飲食・小売業、人事カイカク】「人手不足、採用難時代の飲食業・小売業における採用活動」を踏まえ、13回目となる今回は、採用の次の段階である「アルバイトを戦力化するための研修・トレーニング」について解説します。

アルバイトの戦力化までに必要な時間

会社としては、採用したアルバイトに1日でも早く、一人前に仕事をしてもらいたいと考えます。

そのためには、募集から面接、採用、トレーニング、一人で作業できるまでどれくらいの期間がかかるのか、標準となる目安を認識しておくことが大切です。

応募状況や業態により期間は前後しますが、このような目安を考慮して年間の採用・育成計画を立て、人手不足の状態をできる限り避けたいものです。

「オリエンテーション」は店長の役目

最初のオリエンテーションは、必ず店長が行います。何か困ったことがあったときには、いつでも店長に相談するように伝えておきましょう。

労働条件や就業規則、仕事をする上での基本的なルールを新人アルバイトと確認します。

防止したい「バイトテロ」は誓約書も効果的

アルバイトに守ってほしいこと、会社側、店側が約束することを明確にしておくと、無用なトラブルを回避できます。

たとえば最近も話題になっているSNS等の不適切投稿などの「バイトテロ」は、信用毀損罪・業務妨害罪や食品衛生法違反などが成立する可能性があり、場合によっては賠償責任を問われることを明確に伝えます

必要に応じて、誓約書(未成年者は保護者連名)などを提出してもらうと、「バイトテロ」の抑止に効果的です。

「OFF-JT」と「OJT」による研修・トレーニング

トレーニングは大きく分けてOFF-JTとOJTがあります。

OFF-JT

OFF-JT(Off the Job Training)とは、製造ラインや接客スペースから離れたところで行われるトレーニング(座学)のことです。外部の研修機関で受講する研修なども含まれます。

基礎的な知識の習得は、まず、雑音に邪魔されない、落ち着いた場所(会議室など)で行いましょう。

新人アルバイトがビデオ視聴や教材やマニュアルなどを使って行う自主学習であれば、トレーナー不在で構いません。

自主学習で知識をインプットした後はトレーナーが確認する時間を設けて、新人アルバイトにアウトプット(実行)してもらいます。この繰り返しで、知識が定着していきます。

OJT

OJT(On the Job Training)とは、製造ラインや接客スペースでトレーニングを受けながら実際に作業を習得することです。

特にお客様から見える位置でのトレーニングでは、トレーナーは新人アルバイトの側について、お客様にご迷惑をおかけしないように十分に配慮しながら進める必要があります。

新人アルバイトはすべてが初めてのことばかりで不安です。トレーナーは、同じアルバイトという立場で身近で頼れる存在である、先輩アルバイトに担当してもらうと、新人アルバイトもわからないことを気兼ねなく質問できます。

また、アルバイト同士が親しくなれる機会であり、早期退職の防止にも繋がるでしょう。

研修・トレーニング実施で準備すべきこと、把握しておくべきこと

研修やトレーニングの実施にあたり、準備すべきことや把握しておくべきこととして、以下の点をおさえておきましょう。

教材、マニュアルの整備と育成レベルの明確化

基本的な作業の方法、手順については、教材やマニュアルを作成し、活用できるように準備しておきましょう。これにより、トレーナーのスキルに頼ることなく、作業の方法や手順を統一できます。

教材やマニュアルは決して分厚く分量のあるようなものでなくても構いません。必要かつ最低限で大丈夫です。量よりも重視したいのは、教材・マニュアルにおける求める育成レベルの明確化です。これをひとつの目標や基準として達成度を測ることで、アルバイトのモチベーションアップに繋がります。

その上で、アルバイトの創意工夫やホスピタリティを発揮してもらえるような意識づけができれば、成長する余地が拡大します。

トレーニング時間の目安

作業を細分化し、1つの作業を一通りできるまでの目安の時間を設定します。

例えば、飲食業で言えば、接客・レジ打ち2時間、ドリンク作り1時間、テーブル片付け1時間、清掃1時間などです。

一つの作業ができるようになると、新人アルバイトは「この仕事を続けられそうだ」と自信を持てるようになります。

1日のトレーニング終わりには、「今日は○○ができるようになった」という達成感を覚えて帰ってもらうことが大切です。習得度に応じて、新人アルバイトが「8割できた、2割は次への課題」と感じられるくらいのペースでトレーニングするのがちょうどよいでしょう。

新しい仕事へのチャレンジ

アルバイトを戦力化するためには、ひとりで幅広い業務をこなせるようなトレーニングが必要です。

例えば、飲食店において、キッチンだけ、あるいはホールだけできるアルバイトよりも、キッチンもホールも両方できるアルバイトが多いほうが仕事を割り振りやすくなります。急な欠勤があっても他のアルバイトがカバーしやすくなるでしょう。さらに、客数や売上の増減などの状況に応じてニーズの高い業務への柔軟なリソース配分も可能です。

経験豊富なアルバイトには、さらに資材等の発注業務、新人アルバイトのトレーニング、シフト管理などよりレベルの高い業務を任せてはどうでしょうか。

結果的にアルバイトがスキルアップしたら、これに対する評価として時給アップなどで待遇改善していきましょう。

まとめ

飲食・小売業では、全従業員の5〜9割をパート・アルバイトが占めるのが一般的です。

人手不足の状況下において、この業界の「働き方改革」は正社員だけではなく、パート・アルバイトとも向き合う必要があります。

働きやすい職場環境の整備、待遇改善などとともに、人材育成は退職を防ぐ一番のリテンション活動(人材の維持、確保)です。OFF-JT・OJTの効果的なトレーニングや教材・マニュアルの活用で、効率的にアルバイトを育成していただきたいと思います。

【編集部より】飲食業におけるSmartHR導入事例

飲食業でSmartHR導入後に起きた変化とは?
飲食業におけるSmartHR導入事例

アルバイト人材をはじめ、多くの入退社手続きが発生する飲食業界は、その管理も煩雑。特に多くの業態や店舗を持ちチェーン展開する会社では、管理が分散してしまうなど、より大きな課題を抱えます。この飲食業を営む企業において、SmartHRを導入した結果、どのような変化が訪れたのかに迫ります。

【こんなことがわかります】

    • ・月間40時間の労務工数削減に成功したワケ
    • ・なぜ約2,000名の労務管理をたった数名でできるようになったのか?
    ・労務兼任スタッフが店舗勤務に注力できるようになった話
特定社会保険労務士 羽田未希

17年間の飲食業現場経験を持つ、異色の女性社会保険労務士として飲食業・小売業などサービス業を得意とする。パート・アルバイト活用、人材育成のコンサルティング、労使トラブルを未然に防ぐ就業規則作成、助成金申請など、中小企業の人材活用のサポートを行う。著書に『店長のための「稼ぐスタッフ」の育て方』(同文舘出版)がある。
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