病欠のアルバイトに罰金で炎上・・・何が問題?
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皆様、ご無沙汰しております。弁護士の河野です。
先日、コンビニ店でアルバイトをする女子高生が仕事を病欠したとして、給料から罰金9,350円を引かれて渡されたというニュースが話題になりました。理由は、「代わりの人を探せなかったから」とのことでした。
女子高生にとっては大金の損害請求額であったこと、理不尽とも取れる罰金徴収であったことから、コンビニ店のマネジメントには非難を集まりました。新聞やテレビといったマスメディアでも連日報道がなされ、結果的にはコンビニ店の広報担当者がコメントを出す事態にまで発展しました。
今回は、このような背景を踏まえ、「アルバイトが病欠した際に罰金を科すことは、どうして非難されてしまうのか?」を解説していきます。
世論は病欠したアルバイトを擁護する声が多数
この問題、とりあえず法律的な視点は抜きにして、直感的にどう思われるでしょうか。
「シフト上、一人減って補充が出来なかったら働いている人への迷惑になることは確かだ。」
「結果、バイトが補充できたのなら結果オーライだし、そこのところはどうなんだろうか。」
「前もって分かっている欠勤ではなく突然の病欠なのに代わりの人を探させるのは酷ではないか。」
「お店に迷惑をかけたのは分かるが、罰金を払わせるのは良くないのではないか。」
「罰金はいいとしても、給料に比して金額が高額すぎる。」
「ズル休みや無断欠勤ならこれくらいは仕方ないのではないか。」
私の周りで出た意見はざっとこんなところでした。賛否両論ですが、どちらかというと報道のニュアンスもあってか、病欠したアルバイト店員を擁護する声が多かったように思います。
なお、法的にも、店側が行った今回の対応は非難されるべきです。
使用者は違約金や損害賠償額をあらかじめ決めてはいけない
労働基準法第16条では「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」と規定されています。
つまり、使用者(オーナー)は、違約金や損害賠償額をあらかじめ決めてはいけないことになっています。今回の場合、お店のルールとして罰金を取り決めていたことが問題となります。
欠勤時の補充をアルバイト店員の義務として、これが出来なかった場合に欠勤分の給与を罰金とするルールを定めたこと自体が違法であるということです。
「バイト休む時はできるだけ代わりの人は自分で見つけてきてね」という程度のお願いであれば、法に触れることはありません。しかし、このお店の場合、それが出来なかったときの罰金(違約金)を明確に定め、さらにこれを徴収したということが非難の対象となります。
減給額には「賃金総額の10分の1」という制限がある
労働基準法第91条では、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と規定されています。
つまり、就業規則において減給というケースを定めた場合は、一定の条件で認められるとしています。問題のケースでは、一か月の給料が2万円強だったとのことですので、9,350円というのはこれを超えることがいけませんでした。
これら法令の違反に対しては、罰則が設けられています。まず、労働基準法第16条違反については、「六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。」とされています。また、同法第91条違反については、「三十万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
今回のケースのコンビニ店オーナーとしては、急な欠勤を防ぎ、勤務しているほかのアルバイトの皆さんに迷惑をかけないために設けた罰金制度であったと思います。しかし、結果としては罪になる行為だったということに他なりません。気をつけて欲しいと思います。
また、コンビニ店の元締めである会社はもちろん、コンビニだけではなく他の会社でも知らない間に現場で違法行為が行われているということはあります。事件が起きてからでは遅いので法令遵守の周知や研修をしっかり行うことを強くお勧めいたします。