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人事労務の基礎知識 ~勤怠・休日・休暇編~【飲食・小売業、人事カイカク #06】

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こんにちは。特定社会保険労務士の羽田未希です。

17年間の飲食業現場経験から、【飲食・小売業、人事カイカク】というテーマの中で、「飲食業・小売業」の人事労務を改革し、バックオフィスから経営を強めていくためのヒントを探り、提供する当連載。

働き方改革を進めるための土台をしっかりと築くために必要な「人事労務の基礎知識」を、#03〜#07において5回にわけてお送りしていきます。4回目となる今回は、「勤怠・休日・休暇」について、よくある質問をQ&A形式にて解説します。

【Q.1】早朝出勤やダラダラした居残りも残業に当たる?

Q. 事業所に早く出勤したり、だらだら残っていたりする従業員がいるのですが、これらの時間は残業になるのですか?

【A.1】 「労働時間」にあたるか否かにより判断されますが、必要以上に事業所に滞在するのは長時間労働を助長することにもつながるため、ルールを作りましょう。

まず、「労働時間」とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるとされています。参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当すると例示されています。

なお、タイムカードに打刻された出退勤時刻と実際の勤務時間に差がある場合、従業員に対して指導することが必要です。

時間外勤務を行う時には、「時間外勤務申請書」等を活用して、あらかじめ上司の許可を得るなどの工夫をするとよいでしょう。

【Q.2】出退勤時刻を把握する方法に決まりは?

Q. 従業員の出勤時刻・退勤時刻を把握する方法に決まりはありますか?

【A.2】使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に管理する責務があり、その方法がガイドラインで示されています。

使用者には労働時間を適正に把握する責務があり、勤怠管理の方法について、厚生労働省が公表した、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日)に詳しく記載されています。

【始業・終業時刻の確認及び記録の原則的な方法】
使用者が始業・終業時刻を確認し、記録する方法としては、原則として次のいずれかの方法によること。
(ア) 使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
(イ) タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。

(ア)の方法は実務上、使用者が常に従業員の勤怠を確認することは難しいため、(イ)の方法によって、出退勤の管理を行っていることがほとんどです

また、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の、客観的な記録が残る方法で出退勤を管理することが、労務管理上好ましいといえます。

【Q.3】1ヶ月単位のシフト制の注意点は?

Q. 1ヶ月単位のシフト制(変形労働時間制)を採用しようと考えていますが、注意点はありますか?

【A.3】変形労働時間制を採用するには、ルールがあります。特に、残業の扱いについては要注意です。

変形労働時間制は、「1ヶ月単位」、「1年単位」、「1週間単位」があります。一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内において、特定の日又は週に法定労働時間を超えて労働させることができるものです。

変形労働時間制を採用するには、労使協定または就業規則等において定めることが必要です(1年単位の変形労働時間制については、労働基準監督署への届け出が必要)。

ここでは、多くの飲食業・小売業の店舗で採用している、1ヶ月単位の変形労働時間制について説明します。

1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月を単位とするシフト制にすることで、労働時間の原則の1日8時間、1週40時間を超える時間で労働させることが可能になります。

1ヶ月の法定労働時間の総枠の範囲内であれば、日によって所定労働時間を設定できるため、忙しい日に長く働いてもらい、比較的忙しくない日は労働時間を短くするなど、労働時間をコントロールすることができます。

運用上、注意すべき点は、残業をした時の時間外割増賃金の支払いです。厳密な計算ができる勤怠管理ソフトが導入されているのならば、それに従えばよいのですが、エクセルや手計算で残業代を計算しているのであれば、労働基準法通りの厳密な方法での計算方法はとても難しく、要注意です。

具体的な残業の考え方は割愛しますが、予定していたシフトの労働時間をオーバーして残業した時には、月給をもとに割り出した時間単価に時間外割増(1.25倍)にした時間外手当を支払うなど、給与の計算では工夫が必要になります。

【Q.4】休日の日数目安は?

Q. 休日はどれくらいの日数に設定したらよいでしょうか?

【A.4】労働基準法においては、1週1日、または4週4日の休日を与えればよいことになっています。

労働時間は「1日8時間以内、1週40時間以内」という原則がありますので、1日8時間の所定労働時間の場合、週5日勤務となり、週休2日に設定します。

1週1日の休みとする場合は、例えば週5日は7時間、週1日は5時間とし、週の労働時間の合計を40時間とすることもできます。

ただ、世の中は人手不足の状況であり、求職者が就職先を選ぶ時代です。休日数は、同じ業界の平均日数、もしくはそれ以上にしなければ、求人募集を出しても応募がないということにもなりかねません。

【Q.5】パート・アルバイトの年次有給休暇は?

Q. パート・アルバイトにも年次有給休暇を付与する必要があるのでしょうか?

パート・アルバイトといえども、労働者であることに変わりはないため、年次有給休暇はあります

採用されて6ヶ月を経過し、全労働日の8割以上勤務したパート・アルバイトに対しては、週の所定労働時間および日数により、以下の表の通り、年次有給休暇の付与日数を付与します。週以外の期間で労働日数が定められている場合、1年間の所定労働日数に換算して比例付与します。

年次有給休暇の付与日数

まとめ

「働き方改革」を進めるためには、この勤怠、休日、休暇について自社の現状を把握し、問題点を洗い出す必要があります。

そのために、労働基準法についての基本的な知識を理解していただきたいと思います。

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