「掛け持ちアルバイト」の残業代って誰が払うの・・・?


こんにちは、特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

学生さんやフリーターなど、普段アルバイトをされている方の中には、複数の会社・店舗を掛け持ちしながら働く人も少なからずいらっしゃると思います。

今回は、そのような人の「掛け持ちアルバイトの残業代」についてスポットライトを当ててみたいと思います。

アルバイトの掛け持ちは「労働時間を通算」する

1つの会社で働いている人であれば、裁量労働制や管理監督者等でなければ、1日8時間を超える勤務をした場合、超過した労働時間については、残業代として通常の労働時間の125%以上の割増賃金が支払われます。

この点、アルバイトを掛け持ちしている人(仮に、山田さんとします)が、ある日、たとえば次のような働き方をしたとき、残業代はどうなるのでしょうか?

■ 5:00~8:00(休憩なし) A社のコンビニでレジ打ち 時給1,000円

■ 10:00~18:00(休憩1時間) B社のコールセンターで電話対応 時給1,000円

山田さんのA社での実労働時間は3時間、B社での実労働時間は7時間なので、A社・B社を単独で見ると、それぞれ8時間を超えてはいませんので、一見、割増賃金は発生しないようにも思われます。

ところが、労働基準法においては、アルバイトを掛け持ちするような“事業場を異にする場合”であっても、その人の1日の実労働時間が8時間を超えたら、割増賃金が発生して残業代の支払が必要であると定められているのです。

上記のケースで考えますと、山田さんのA社とB社における各労働時間を通算すると、この日の実労働時間は10時間になりますから、8時間は通常の賃金(1,000円)、2時間は残業代として割増賃金(1,250円)になります。

掛け持ちアルバイトの残業代を誰が負担すべきなのかは不明確

では、この山田さんの例では、A社かB社、どちらに2時間分の残業代として、割増賃金を請求すれば良いのでしょうか?

この点、実は明確なルールが定まっておらず、実務上は大きな問題になっています。

A社は「弊社ではその日の労働時間のうち最初の3時間を勤務しているだけなので、割増賃金の支払いは必要ない。8時間を超える時間帯で働くB社が割増賃金を負担すべきだ」と主張しますし、B社は「山田さんのメインのアルバイト先は弊社なので、プラスアルファで働いているA社こそ割増賃金を負担すべきだ」と主張します。

結果として、アルバイトを掛け持ちしている人の多くが、適正な残業代の支払を受けられない状態が、実務上において発生してしまっています。

掛け持ちで働く人のための法整備が急務

この例に関する、モデルとなるような裁判例はまだ出ておらず、労働法を研究する学者先生の学説でも意見が分かれています。

厚生労働省の通達でも明確な判断を示しているものはありません。

このような状況のままでは、働く人は、A社に対しても、B社に対しても、残業代の支払を強く求めることはできません。

折しも、アルバイトに限らず、副業・兼業解禁に向けての動きが加速しています。

行政や立法による早急な対応が望まれます。

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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