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給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記入例。注意点を税理士が解説

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こんにちは、税理士の高橋 創です。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、給与所得者が毎年の年末調整時と、期中に異動事項のあった際に会社に作成・提出するものです。こちらの書類は、毎年の制度改正の影響により、微妙に記載内容や要件が変わります。

今回は令和8年の扶養控除等申告書の記入方法について、制度改正で変更された注意点にも触れながら、網羅的に解説します。

給与所得者とは(概要説明)

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以下、扶養控除申告書)は、給与の支払を受ける人(給与所得者)が、その給与について扶養控除などを受けるために行う手続きです。

扶養親族や配偶者がいない場合であっても、給与所得者である限り、原則全員が扶養控除申告書を提出する必要があります。提出していない人の給与に対する源泉徴収税額は、税額表の「乙」欄が適用されることになります(扶養控除申告書を提出した場合よりも高い税率が適用されます)。

提出時期は、その年の最初の給与支払日の「前日」まで(中途就職なら、就職後の最初の給与支払日の前日)とされ、また、提出後に記載内容に「異動」があった場合にも、その異動後の最初の給与支払日の「前日」までに、給与支払者に提出する必要があります。

令和8年版 扶養控除等(異動)申告書のポイント

簡易な扶養控除等申告書

源泉徴収手続の簡素化を図り納税者の利便性を向上させる観点から、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」および「従たる給与についての扶養控除等申告書」に記載すべき次の事項がその年の前年の申告書に記載した事項から異動がない場合には、その異動がない旨の記載をすればよいこととされました。

この前年から異動がない旨を記載した申告書を「簡易な申告書」といいます。

前年から異動がない旨を記載した申告書「簡易な申告書」の画像

出典:国税庁「〇 令和 8 年分 給与所得者の扶養控除等申告書(簡易な申告書)

書き方の解説(ステップ1~4)

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の画像

(出典)令和8年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

ステップ1:「基本情報」欄

氏名、生年月日、世帯主の氏名、続柄、給与の支払者の法人(個人)番号、個人番号(マイナンバー)、住所又は居所、配偶者の有無について記入します。

また、「従たる給与についての扶養控除等申告書の提出」欄は、この申告書(主たる給与の支払先に提出するもの)以外に、従たる給与の支払先にも別途に提出している場合に〇印を付けます。

本来、主たる給与の支払先1か所のみに提出すればよいですが、例外的にそれ以外の給与支払先(従たる給与の支払先)にも提出する場合もあることから、「基本情報」欄が存在しています。

ステップ2:「主たる給与から控除を受ける」欄

A.源泉控除対象配偶者

源泉控除対象配偶者とは、所得者(令和8年中の所得の見積額が900万円以下に限る)と生計を一にする配偶者(事業専従者などは除く)で、令和8年中の所得の見積額が95万円以下(給与所得だけの場合は、給与の収入金額が160万円以下)の人を指します。

該当する者について、氏名、個人番号(マイナンバー)、続柄、生年月日、所得の見積額などについて記入します。また、非居住者である親族である場合には、〇印を付けるとともに、関係書類の提出も必要となります。

B.源泉控除対象親族(16歳以上)

「主たる給与から控除を受ける」欄に記載する親族の範囲は、今年から大きく変わっています。用語の使い分けも難しくなっているため、一つひとつ整理しておきましょう。

まず、タイトルにある「源泉控除対象親族」は、扶養親族のうち、16歳以上の人を指します。

該当する親族については、氏名、個人番号(マイナンバー)、続柄、生年月日を所定の欄に記入します。

源泉控除対象親族が老人扶養親族(同居老親を含みます)や特定扶養親族、特定親族に該当する場合には、それぞれの欄にチェックを入れる必要があるため、要件を確認しておきましょう。

また、非居住者である親族である場合には、〇印と、「生計を一にする事実」としてその年の送金額などを追記するとともに、関係書類の提出も必要です。

【用語の解説】

(1) 扶養親族:納税者と生計を一にする親族(いわゆる里子や市町村長から養護を委託された老人を含み、配偶者や事業専従者等を除きます、)で、令和8年中の所得の見積額が58万円以下の人を指します。

(2) 控除対象扶養親族:(1)の扶養親族のうち、その年12月31日時点の年齢が16歳以上の人を指します。

 (3) 老人扶養親族:控除対象扶養親族のうち、その年12月31日時点の年齢が70歳以上の人を指します。

 (4) 同居老親等:老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者のいずれかと普段同居している人を指します。

なお、同居老親等の「同居」については、病気の治療のため入院していることにより納税者などと別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、同居に該当するものとできます。ただし、老人ホームなどへ入所している場合には、老人ホームが居所となり、同居しているとはいえません

 (5) 特定扶養親族:控除対象扶養親族のうち、その年12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満の人を指します。

(6) 特定親族:その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満で納税者と生計を一にする親族のうち、令和8年中の所得の見積額が58万円超123万円以下(給与所得だけの場合は、給与の収入金額が123万円超188万円以下)の人を指します。

C.障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生

以下の各項目に該当する場合には、該当欄にチェックを入れます。

(1) 障害者

給与所得者本人、同一生計配偶者又は扶養親族が、所得税法上の障害者に当てはまる場合には、障害者控除を受けることができますので、各欄の該当箇所にチェックを入れ、扶養親族の場合には障害者に該当する扶養親族の人数も記入します。

※1 同一生計配偶者とは、納税者本人と生計を一にする配偶者(事業専従者等を除く)で、所得の見積額が58万円以下である者をいいます。

※2 障害者控除は、扶養控除の適用がない16歳未満の扶養親族が障害者である場合においても適用されますので、注意してください。

(2)寡婦、ひとり親

納税者本人が寡婦又はひとり親に該当する場合には、それぞれの欄にチェックを入れてください。

(3)勤労学生

納税者本人が勤労学生に該当する場合には、該当する箇所にチェックを入れてください。

(4)「障害者又は勤労学生の内容」欄

障害者であれば「氏名、身体障害〇級、交付年月日」、勤労学生であれば「学校名、入学年月日」などを記載をします。

ステップ3:「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」欄

共働きなどで同居している家族内に二人以上の所得者がいる場合、扶養親族はどちらか一方の所得者でしか控除は受けられません。

本人が「扶養しない」場合には、この欄に、対象となる「扶養しない」子供などの氏名、続柄、生年月日、住所又は居所、「控除を受ける他の所得者」の氏名、続柄、住所又は居所などを記入します。

ステップ4:住民税関係

1.「16歳未満の扶養親族」欄

上記ステップ2のB欄のとおり、所得税(国税)上の扶養控除の対象となるのは16歳「以上」の扶養親族ですが、住民税(地方税)の計算上は、16歳「未満」の扶養親族の情報も必要となります。したがって、該当する者の氏名、個人番号(マイナンバー)、続柄、生年月日、住所又は居所、「控除対象外国外扶養親族」の該当の有無、所得の見積額などを当該欄に記載します。

2.「退職手当等を有する配偶者・扶養親族・特定親族」欄

「合計所得金額」に退職所得金額を含むかどうかの判断については、所得税と住民税との間で取り扱いが異なります。そこで、退職手当などを受け取った配偶者や扶養親族がいる場合には、該当する者の氏名、個人番号(マイナンバー)、続柄、生年月日、住所又は居所、所得の見積額などを当該欄に記載します。

3.「寡婦又はひとり親」欄

寡婦とひとり親のいずれに該当するかを記載します。

記入時に特に注意したいポイント

マイナンバー

従業員本人、控除対象となる配偶者および控除対象扶養親族などのマイナンバーの記載は、原則として、毎回必要です。ただし、平成29年1月1日以後に支払を受けるべき給与等に係る扶養控除等申告書については、給与支払者(会社など)が従業員などのマイナンバー等を記載した一定の帳簿を備えている場合には、その帳簿に記載されている者のマイナンバーの記載は不要となっています。

提出先の会社などがこの要件に該当しているかどうかは、給与担当者などにご確認をいただければと思います。

おわりに

年末調整の事務や関係書類の作成は、毎年のルーティンワークではありますが、ほぼ例外なく毎年の制度改正の影響を受け、控除の要件や記載方法が大なり小なり常に変更がなされています。

小さなミスや誤解も、人数が多くなるとそれを訂正するのに手間がかかってしまいます。日頃から法改正の情報等をキャッチしながら、事務の効率化にも取り組んでいただければと思います。

年末調整に関する主なQ&A

Q. 扶養控除申告書の提出義務は?

「扶養控除等申告書」を会社に提出しないと、年末調整を受けられません。独身者や配偶者などの扶養となっている場合でも提出する必要があります。

Q. 扶養控除申告書を提出しないとどうなる?

控除を受けられないため、翌年の源泉徴収税額が大幅に高くなり、給与の手取り額が大幅に減る可能性があります。

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