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元労働基準監督官が解説!「臨検監督」6つのNGパターン

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こんにちは。アヴァンテ社会保険労務士事務所の小菅です。労働基準監督官は、行政職員と特別司法警察職員という性格をあわせ持つ職業です。

今回は、行政職員としての職務の1つである「臨検監督」にスポットを当て、「労働基準監督官による臨検監督」について、昨今のトレンドも踏まえながら、元労働基準監督官が「日ごろから準備すべきことや注意すべきポイント」を解説します。

労働基準監督官による「臨検監督」とは?

臨検監督は、労働環境の整備などを目的として、事業場の現状を的確に把握し、法令違反などの有無をチェックするために実施されます。

臨検監督は、原則予告なしでの実施が基本です。事前に連絡をすると、会社は監督に備え、あれこれ準備することとなり、事業場の実態を正確に確認できなくなってしまう可能性がありますし、書類の改ざんなどを防ぐ目的もあります。ただし、職務執行に支障がない場合は、事前に予告をして監督指導を実施することもあります

臨検監督で監督官が主に確認する内容は、以下のとおりです。

臨検監督で監督官が主に確認する内容

  • 会社概要
  • 労務管理の状況(労働時間の管理状況、賃金支払い状況など)
  • 36協定、就業規則など
  • 安全関係の書類
  • 安全衛生管理体制
  • 必要な資格関係の確認
  • 局所排気装置や重機、クレーンなどの点検状況や作業環境測定の実施、結果など
  • 健康診断の実施状況など

臨検監督の対象事業場選定の流れ

臨検監督の対象事業場は、下記のステップで決定します。

(1)各労働局が行政運営方針を策定

厚生労働省が策定した労働行政運営方針により、労働情勢の現状、厚生労働省が抱えている課題をもとに、担当部署が取り組むべき事項について明らかにされます。そして、この内容が全国労働局長会議で示され、各労働局がこの方針に沿った労働局ごとの行政運営方針および業務の運営にあたっての留意通達を策定します。

(2)労働基準監督署が監督指導対象事業場を選定

労働基準監督署では、各労働局が策定した留意通達により、

  • 各監督署管内の産業構造
  • 業種分布
  • 労災発生状況
  • 労働環境

を鑑みて、重点的に臨検監督を実施すべき事業場などについて、管内の現状と厚生労働本省が示した行政課題をリンクさせ、監督実施対象業種、規模および対象事業場数を決定します。

(3)「36協定で特別条項を締結」などの事業場は優先順位が高くなる

監督指導対象事業場の選定は、業種、規模、地域、個別事業場における申告相談や労災発生状況、過去の監督指導履歴、監督指導実施に係る記録など、監督署が保有している情報を総合的に勘案して決定します。

労働者の健康確保対策状況を確認する必要性の高い36協定で特別条項を結んでいる事業場や、労働基準関係法令違反の可能性のある情報が寄せられた事業場などは、臨検監督の優先順位を高くしています

臨検監督で求められる書類など

臨検監督時に提示が求められる主な情報や書類などは以下のとおりです。

臨検監督時に提示が求められる主な情報や見るところ

  • 会社概要がわかる書類(会社案内など)
  • 労務管理の状況がわかる書類
    • 労働時間の管理状況がわかる書類(必要に応じてパソコンの記録など)
    • 賃金台帳
    • 36協定
    • 労使協定
    • 就業規則など
  • 安全関係の書類
    • 衛生管理者選任報告など(該当する場合)
    • 安全衛生委員会の議事録(該当する場合)など
  • 安全衛生管理体制を把握できる書類(該当する場合)
  • 資格関係の確認(該当する場合)
  • 局排や重機、クレーンなどの点検状況や作業環境測定の実施、結果など(該当する場合)
  • 健康診断結果(定期健診や特殊健診など、臨検した事業場で義務になっている健診)
  • 建設現場や製造現場など、安全衛生に重点を置いた臨検監督では、臨検現場での作業に適用される法令の遵守状況など

状況に応じて上記以外の書類やデータなどの提示を求められることがあります。

臨検時の代表的なNGパターン・労務管理上の留意点など

臨検監督時に、会社が行ってはいけないことや、行政指導になるパターンとして日々の労務管理で留意しておきたいことをお伝えします。

  1. 虚偽の帳簿などを提示すること、虚偽の内容を回答する
  2. 振り替えられた休日に出勤させているにもかかわらず、振替休日に対する割増賃金を支払っていない
  3. 年俸に割増賃金が含まれているとして支払わない場合や、制度上割増賃金を年俸に含んでいるが、金額に相当する時間数を超えて働いているにもかかわらず、差額を支払っていない
  4. 法定の要件、手続きを満たすことなく変形労働時間制などを導入している
  5. 割増賃金を算出するに当たり除外できない各種手当を算定基礎から除外している
  6. 1時間未満(または30分未満など)の端数を日々切り捨てている

これからの時代、労務担当者が注意すべきこと

年功序列・終身雇用が崩壊し、会社が求める職務に合う人材を採用し、成果を出したことに対して対価を支払う仕組みが増えつつあります。これは、優秀な人材を確保するために有効な方法の1つであり、社員のモチベーション向上にもつながる側面もあると感じています。このような仕組みでは、社員に一定の裁量を社員に与え、時間外手当を含んだ金額で賃金を支払い、高額の基本給としている場合もあります。

みなしのように厳密な労働時間管理を行わない場合、社員が自立して働く環境に沿うというメリットはあります。その反面、健康管理が個人任せになりがちになり、長時間労働やメンタル不調に陥る危険性があるので、健康管理をしっかり行うことが大切です。

隠蔽は絶対にダメ! 適正な労務管理を当たり前に

また、36協定で結んだ時間を超えてしまう可能性がある場合、一度結んだ36協定の内容を途中で変更することは基本的にはできません。36協定の時間を超えてしまったとしても、労働時間の記録を改ざんすることは絶対に避けるべきです。ある事業場では、有給休暇を取得したことにして、特別条項の時間ちょうどになるように、勤務記録を書き換えていたケースもありました。この事実は、社員からの匿名による投書により発覚し、臨検監督の結果、投書の内容が事実と判明したのちに、責任者の謝罪により厳罰は免れました。

どうしても労使協定で定める時間を超えてしまった場合は、まず対象者への健康確保をしっかりと行い、繰り返さないよう適正な労務管理が行える措置を講じることが必要です。

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