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社労士が解説!今月のHRニュース2021年4月編(年度更新の書類、イクメン促進法案、障害者雇用納付金の手続きなど)

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目次

新年度が始まり、あっという間にゴールデンウィークがやってきました。

新入社員の受入れがひと段落し、人事労務担当者の方もホッとしている時期かと思います。

しかし、6月からは年度更新や算定基礎届の提出などで再び忙しい時期となります。余裕を持って繁忙期を迎えられるように、4月後半から5月にかけて新入社員の入社手続や、4月昇給者の給与マスタの更新などの対応漏れに気をつけ、足元をしっかりと固めていただきたいと思います。

2021年4月のトピックの振り返り

(1)新入社員の入社手続の進捗確認

多くの企業で4月1日から新入社員を迎え入れたと思います。

早速ですが、社会保険や雇用保険の資格取得手続は完了していますか?雇用保険の資格取得手続は翌月10日までが法定期限なので余裕はあります。

しかし、社会保険の資格取得手続は、入社日から5日以内となっており、資格取得手続が遅れると保険証の発行も遅れて新入社員にも迷惑をかけてしまいます

いつまでたっても保険証が届かないと「この会社、大丈夫かな?」と新入社員が不安になり、会社に対する信頼も揺らいでしまうかもしれません。法定期限を守るというだけでなく、労使の信頼関係の観点からも、遅滞なく入社に必要な手続を進めるようにしたいものです。

その他にも、給与計算における源泉所得税の計算を正しく行うために扶養控除等(異動)申告書の回収や、通勤手当の支給額を決定するために通勤経路の確認も必要です。また、雇用契約書や誓約書等の取り交わしも漏れなくされているか確認をしておきましょう。

コロナ禍で新入社員も入社当初からテレワークとなり、入社情報の回収や契約書の取り交わしに手間がかかっている会社もあるようです。それだけでなく、入社情報が集まったとしても、人事労務担当者がテレワークで、社会保険や雇用保険の資格取得届の郵送や窓口持参が遅れてしまうケースもあるようです。

入社情報収集の円滑化や、行政手続の電子化に向け、SmartHRなどのクラウドソフトの導入は、MUSTに近い温度感の時代になったのではないかと筆者は受け止めています。

(2)小学校休業等対応助成金「個人申請分」等の運用が開始

3月度のHRニュースでお伝えした、小学校休業等対応助成金「個人申請分」等の運用が、3月26日より正式に開始されました。

詳細は、下記の厚生労働省が発表したプレスリリースをご覧ください。

「小学校休業等対応助成金に係る特別相談窓口」について ~小学校休業等対応助成金「個人申請分」等の運用を開始します~

小学校休業等対応助成金は、新型コロナウイルスの影響で通学先の学校が休校となり、子供の世話をしなければならない従業員のために、年次有給休暇とは別枠で、特別有給休暇を与えた場合、当該休暇に対して支払った賃金相当額が受給できる助成金です。

しかし、事業主が申請手続の手間や助成金の受給に失敗した場合のリスクを懸念し、活用が進まないという側面があったたため、雇用調整助成金と同様に従業員個人が申請できるようになりました。

ただし、個人申請をするためには、事業主の証明欄があり、申請には事業主の協力が必要となります。

当該従業員が確かに休業対象となったことや、その日に賃金が支払われていないことなど、さほど手間はかからない書類上での証明となりますので、事業主や人事労務担当者の皆様は、従業員から協力依頼があった際には、ぜひ快く応じていただきたいと思います。

(3)「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーン

4月1日より「アルバイトの労働条件を確かめよう!」キャンペーンが始まっています(終了は7月31日)。

アルバイトを始める新入学生が多い4月から7月までのタイミングに合わせ、このようなキャンペーンが毎年開催されているのです。

4月は、社員として新卒者を受け入れるだけでなく、業種によってはアルバイトを受け入れることも多いと思います。この機会に、自社のアルバイトの労働条件や勤怠管理に問題が生じていないか、今一度セルフチェックをしてみてはいかがでしょうか。

本社としてはしっかり管理をしていたつもりでも、店舗などの現場でステルス残業やハラスメントなどの問題が起きているという可能性も想定されます。現在はコロナ禍で難しい部分もありますが、報告書だけに頼るのではなく、人事労務部門や内部監査部門が、現場を定期的にチェックすることも重要です。

昨今は「ブラックバイト」という言葉が市民権を得てきており、アルバイトとの労働トラブルがニュースで報道されたり、SNSで拡散されたりすると、アルバイト募集や企業イメージに大きな影響を与えるリスクがあります。アルバイトの労務管理にも細心の注意を払いたいものです。

2021年5月のトピック

(1)年度更新の書類の受け取り

5月中旬から下旬にかけて、労働保険の年度更新に必要となる書類が労働局から会社宛に届きます。テレワークで出社の機会が限られている会社も少なくないと思いますが、届いた書類の確認漏れがないようにご注意ください。

電子申請により年度更新を行う場合であっても、電子申請の画面で「アクセスコード」を入力しなければならず、アクセスコードは労働局から送られてくる書類上に記載があるため、いずれにしても、紙の書類を確認する必要があります。

「アクセスコード」についての詳細は、厚生労働省ホームページ内の下記説明をご一読ください。

(2)「イクメン促進法案」の参院通過

4月16日に、男性の育児休業取得を促進する育児・介護休業法と雇用保険法の改正案(イクメン促進法案)が参議院本会議で可決されました。この後、衆議院でも可決され、今国会で成立する見通しです。

イクメン促進法案は、次の2点を柱としています。

1.子供が生まれてから8週の間に、夫が最大計4週分の休みを取れる特例措置「出生時育児休業」(男性版産休)を新設

2.男女を問わず従業員が育休を取得できるよう、企業による働き掛けを義務付け

施行がいつからになるかは現時点では明確に決まっていませんが、配偶者の出産時に休暇取得を希望する従業員が増えることは間違いないと思います。

誰かがまとまった休暇を取得しても、社内でフォローし合えたり、必要に応じてアウトソーシングを活用できるような仕組みを今のうちから検討しておくことが必要でしょう。なるべく仕事や情報を属人化させず、仕組化や標準化を行うことが重要です。

(3)障害者雇用納付金の申告・納付関係の手続き

障害者雇用促進法では、法定雇用率に基づき、障害のある方の雇用を義務付けています。民間企業において、法定雇用率は2021年2月までは2.2%、2021年3月からは法改正により2.3%に引き上げられています。

2020年4月から2021年3月までの障害者の雇用状況を独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」に報告するとともに、法定雇用率を達成していない場合は、障害者雇用納付金を納付し、法定雇用率以上の雇用を超過している場合は障害者雇用調整金を受け取ることができます。

障害者雇用納付金は、未達成1名につき1か月あたり50,000円、障害者雇用調整金は超過1名につき1か月あたり27,000円となっています。

この納付金・調整金の対象となるのは、常用労働者の総数が100人を超える事業主に限られますが、申告書自体の提出は、障害者雇用義務が発生する全ての事業主(常用労働者の総数が43.5人を超える事業主)となっていますので、申告書の提出漏れが無いようにご注意ください。

なお、申告書の提出期間は、常用労働者の総数が100人を超える事業主については4月1日から5月17日、常用労働者の総数が100人以下の事業主については4月1日から8月2日となっています。

常用労働者数や雇用する障害者の数を月毎に集計しなければなりませんので、申告書の作成には想像以上に手間がかかると思います。未着手の場合は早めに手を付け始めるようにしましょう。

(4)昇給と給与マスタの更新(とくに固定残業代は注意)

4月1日付での昇給を行う会社は多いと思います。昇給を行った際には、給与計算時に昇給が反映されるよう、給与計算ソフトのマスタ更新を忘れないようにしてください。

また、昇給の際にとくに注意をしていただきたいのは、固定残業代の扱いです。

基本給や諸手当が昇給すると、残業単価もアップします。

そのため、たとえば昇給前は「45時間分の固定残業代として50,000円を支払う」という契約になっていた場合、昇給後は、固定残業代も新しい基本給や手当額に合わせなければなりません。具体的には45時間分になるように固定残業代も追加で昇給させます。あるいは、固定残業代の金額を変更せず、時間数に不足が生じないように45時間分の残業代であったのを40時間分に減らすといった調整をする必要があります。

なお、固定残業代を基本給に含めるタイプの給与体系の会社の場合は、昇給後の(純粋な)基本給と固定残業代の内訳を再計算して、雇用契約書や昇給辞令であらためて明示するようにしてください。

近年は固定残業代を導入する会社が増えていますが、固定残業代は正しく運用されていなければ、裁判になった際は、その有効性が否定され、過去の残業代全額を精算しなければならないというようなリスクも想定されます。昇給時には、固定残業代に不足が生じないように細心の注意を払ってください。

(5)5月病のケア

GWが明けると、人事労務担当者は従業員(特に新入社員や転勤者)に5月病の傾向が出ている人がいないか注意を払ってください。

現在はコロナ禍によりテレワークを行っている会社も多いと思います。環境が変わり、かつ、孤独感が募ると、5月病をはじめ精神疾患のリスクが高まります。オフィス勤務時のように各従業員の顔が見えないので、Web会議で面談を行うなどをして新入社員を中心にケアを行うようにしてください。

もちろん、オフィスに通常出勤をしている会社においても、調子の悪そうな従業員や、休みがちな従業員がいないかを気にかけ、心身の不調の兆候が認められた場合には早めに本人と面談するなどのフォローが大切です。

人事労務ホットな小話

今回の記事内で、「新入社員との信頼関係を損なわないため、保険証が遅滞なく発行されるように手続を進めましょう」という話をさせて頂きました。

社会保険や雇用保険の手続というと、人事労務部門のタスクの中では、どうしても地味なものに見えてしまいがちです。

しかし、「保険証が速やかに届く」「病気や怪我をしたら傷病手当金の申請に速やかに協力してもらえる」「育児休業取得時や介護休業取得時の給付金が定期的にきちんと振り込まれる」といったことは従業員にとって大きな安心感につながり、会社と従業員の信頼関係の基礎となるものです。

ですから、社会保険や雇用保険の手続を、単なる事務作業と考えず、その手続の対象となる従業員さんの顔を思い浮かべてみてください。すると、事務作業だと思っていたタスクがより高い次元のタスクに見えてくるのではないでしょうか。

しかし、大きな会社や支店・支社の多い会社の場合、人事労務部門の担当者も、その手続きの対象となる従業員がどのような人なのか、顔が浮かばないということもあるかもしれません。

SmartHRのようなクラウドソフトを使えば、従業員マスタに顔写真を登録できます。写真が1枚あるだけでも、従業員と人事労務担当者の心理的距離を縮めることにつながります。そういった観点からも、エクセルでの入社情報のやり取りを卒業し、クラウドへ移行する価値を見出すことができるかもしれませんね。

まとめ

6月になると、年度更新や算定基礎届の対応で、人事労務担当者にとって忙しい時期が始まります。

今年もコロナ禍で行動範囲は制限されてしまいますが、GWは体を休めたり、家族と過ごしたり、好きなことをしたりして英気を養い、繁忙期に備えてください。

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