労働契約法でカギとなる「5原則」と「5年ルール」とは?
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特定社会保険労務士の小高東です。
「働き方改革」が盛んに報道されているように、就業形態は年々多様になっています。しかし、労働契約に関する取り決めを詳しく知っている方はあまり多くありません。
正社員で雇用されていない場合、誰しもが「雇止め」のリスクを背負っています。仮にそのような状況に陥った場合、労働者は契約に関する法律の前提をご自身で理解する必要があります。
そのため、今回はこうした問題の解決に役立つ、「労働契約法」を解説いたします。カギとなる「5原則」と「5年ルール」を確認しながら、法律の内容を紐解いていきます。
労働契約法の概要とは
労働契約法とは、就業形態の多様化により、激増している個別労働紛争に対応するために、労働契約の基本的なルールを定めた法律です。
労働契約法は平成20年3月に施行され、労働契約(無期・有期)の成立・変更・継続・終了について規定しています。
また、法改正により、有期労働契約については3つの新しいルールが規定され、平成25年以後は、無期転換ルール(5年ルール)が適用されます。
労働契約法3条にあたる「5原則」の解説
労働契約法3条では、労働契約の基本理念、共通原則について記載されています。この部分は「労働契約の5原則」と呼ばれており、以下にてそれぞれの原則を解説します。
①労使対等の原則
労働契約は、労使対等の立場における合意に基づいて締結・変更すべきものとする。
②均衡考慮の原則
労働契約は、正社員、パート、契約社員といった就業の形態ではなく、就業の実態によって締結・変更されるべきものである。
③仕事と生活の調和への配慮の原則(ワークライフバランス)
労働契約は、育児や介護などの問題を考慮して締結・変更されるべきものである。
④労働契約遵守・信義誠実の原則
労使共に労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
⑤権利濫用の禁止
労使共に労働契約に基づく権利行使の濫用は許されない。
無期転換ルール(5年ルール)を理解する上でのポイント
無期転換ルール(5年ルール)とは、平成25年4月以後の有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みにより、 無期労働契約に転換できるルールです。
有用判例については平成30年以後を待たなくてはなりませんが、以下の5つのポイントを確認しておきましょう。
Point①
有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、 労働者はその契約期間の初日から末日までの間に、無期転換の申込みをすることができます。この申込みは、労働者の権利(無期転換申込権)であり、申込みをするかどうかは労働者の自由となります。
Point②
無期転換の申込みをすると、無期労働契約がその時点で成立し、申込み時の有期労働契約が終了する翌日から無期に転換されます。
Point③
無期労働契約の労働条件は、就業規則・労働契約などで別段の定めがない限り、直前の有期労働契約と同一となります。
Point④
無期転換を申し込まないことを契約更新の条件とするなど、あらかじめ労働者に無期転換申込権を放棄させることはできません。
Point⑤
有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約がない期間が6ヶ月以上あるときは、その空白期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含めません。
労働契約法における「5」の付く項目を理解しよう
労働契約法を知るには、数字の「5」が付く項目への理解が必要となります。
対等かつ均衡・調和の求められる「5原則」と、有期契約期間が続けて5年を超えた際に適用される「5年ルール」を把握し、適切な労働契約を結べるようにしましょう。